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2008年5月

2008年5月24日 (土)

【コラム 池上鐘音】半年分の針

▼折衝過程をいちいち論じてもせんないことだが、むなしさは募る。文部科学省が23日にまとめた教育振興基本計画案に、5年間で2万5千人の教職員増を盛り込んだことだ。もしこれが通れば学校現場にとっては結構なことに違いはないが、要するに時計の針を半年戻しただけに過ぎない。しかも現状では同省案通りに策定される見通しが立たないとあっては、繰り返すようだが旧教育基本法と引き換えに得た振興計画とはいったい何だったのか▼半年というのは、昨年末の予算編成直前のことである。2008年度概算で文科省は、2009年までの3年間で2万1千人余りを増員する強気の教職員定数改善を要求した。その時点でも財政当局から「何を考えているのか」と相手にされず、結局は主幹教諭を中心に単年度で約1200人しか認められなかったのは、周知の通りだ▼2年前にすら時計の針が戻せなかった、と言ったら酷であろうか。2006年度概算では、「第8次」と銘打った定数改善計画(2010年度までの5年間で1万5千人増)を要求していた。もちろんその前年度に第7次計画(2001~2005年度で2万6900人増)が完了していたから、当時とすれば次期計画の策定要求は当然、という雰囲気があったのも確かだ。それにしても、今後5~10年を展望する基本計画の中に改善計画が打ち出せないというのは、純減を定めた行政改革推進法があるとはいえ、いかにも不備と言わざるを得ない▼もちろん、学校現場のためには多少なりとも定数改善が勝ち取れるに越したことはない。それほど教員は疲弊している。しかし焼け石に水の増員では、学校教育の困難さを根本的に解決するものにはならない。かえって「成果」を求める財政当局サイドの批判に根拠を与えることにすらなりかねない、というのは言い過ぎだろうか。

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2008年5月22日 (木)

振興計画論議 むなしい“空中戦”からの脱却を

 教育振興基本計画の策定が迷走している。中央教育審議会答申自体は腰が引けたものだったのにもかかわらず、文部科学省が自民党文教族の後押しを受けて、教育の公財政支出を現在の国民総生産(GNP)比3.5%から5%に引き上げることを主張。これに対して財務省が詳細な反論書を公表し、文科省がまた再反論する、といった泥沼の様相を呈している。

 と言っても、勝敗は目に見えている。ただでさえ後期高齢者医療制度などをめぐって混迷している政局の中では、財政再建論議の中であえて教育に多大の投資を行う判断ができるとは、とても思えない。いくら「教育が大事だ」と叫んでも、一般財源化が見込まれる道路特定財源の分捕り合戦と目されるしまつである。政府の教育再生懇談会が5%引き上げを求める緊急提言を発表したが、これは前身の「教育再生会議」と違って文科省の応援団であることは誰の目にも明らかだから、大した影響力はあるまい。せいぜい中国・四川大地震を教訓に、学校の耐震化予算が拡充されるのが関の山であろう。

 むなしいのは、5%という数値だ。お互いがいくら根拠となる調査結果を示して口角泡を飛ばそうと、つまりは今の教育投資では不十分だから経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均値までに引き上げろ、いや現在でも十分なのに効果が上がっていないのが問題だ、という水掛け論に終わっている。しかも、ただ過去や諸外国と比べた数値で“空中戦”を演じているから、今の学校教育にどんな困難があり、どうすれば打開できるか、という地に足のついた解決策が、一向に見えないのである。それなしに教育投資の増減の是非をいくら論じたところで、「エビデンスベース(証拠に基づいた)」の論議になるわけがない。

 あえて厳しい言い方をすれば、文科省の予算要求の姿勢にも問題があろう。マイナスシーリング以降、いかに財政当局に認めてもらえる理屈をつけるかに腐心してきた。初等中等教育で言えば、堂々と35人学級を主張せずに、チームティーチングや少人数指導などの加配で何とか教員定数を増やそうとしてきたのが、その典型だ。2008年度予算でも主幹教諭1000人の配置が認められたのは学校教育法改正を受けてのことであるが、中間管理職が増えたところですぐに教員の負担が軽減されるわけではないことは、以前に既に指摘したところである。振興計画によって予算拡充に弾みをつける、という文科省の戦略も、そうした姿勢の延長線上にあるものでしかない。

 いずれにしても初の振興計画策定は、今年の「骨太の方針」決定スケジュールともからんで、近く決着をつけざるを得ない。今さら新たな調査や論議をする時間的余裕などない。10年の計画期間のうち、もう「今後5年間」は諦めて、後期5年間に向けた準備を始めるべきである。

 初中教育を例に挙げれば、学校規模やクラスサイズと教育効果、チームティーチングや少人数指導と一斉指導との違いなど、国、地方、研究者が、総力を挙げて徹底検証する必要がある。その上で、真に効果がある教育政策として、教育投資も含めた国家戦略を打ち出さなければならない。それには、あと5年あっても足りないくらいであろう。

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