文教行政 率直に「困難」を語れ
22日、文部科学省内で開かれた「教育改革セミナー」の関東ブロック会場をのぞいてきた。教育改革の広報のため昨年度から実施しているもので、今年度も「教育振興基本計画」をテーマに全国7カ所で開催。今回は、16日の岡山会場に続く2番目である。これが、思いのほか面白かった。いや、文科省の行政説明は、例によってちっとも面白くない。正確に言えば文科省ウォッチャーとして着目すべき点は多々あったのだが、普通の人にはほとんど関係あるまい。質疑応答で左右両サイドから発言があり、ヤジの応酬が若干あるといった光景も、一般参加型イベントにはご愛嬌(あいきょう)のようなものである。面白かったというのは、大学評価・学位授与機構長の木村孟氏の講演である。
木村氏は東京工業大学の工学部長時代から大学審議会(当時)にかかわるなど文教行政に通じており、中央教育審議会でも副会長まで務め、現在は臨時委員。そもそも今回のテーマである教育振興基本計画の策定を提言した教育改革国民会議(2000年)のメンバーであり、そういう点でも格好の人物であったと言える。
木村氏は講演の中で、教育投資に関する記述ぶりを、数値目標が盛り込めなかった「言い訳」だと明言。その上で、教職員定数の改善についても「勝負は今後、毎年度の概算要求で獲得していく、ということだ」「今の財政状況を見ると、客観的にお金(予算)は出ない。ただ芽があるのは、(2008年度予算編成で)非常勤であっても財務省が増やしたことだ。(増員の必要性は)彼らも理解している。もう少し辛抱して、日本の財政が良くなるまで待つしかない」と説明した。普段からあけすけに語る、木村氏ならではの物言いである。
もちろん文科省も近年、率直に語ろうとする努力はしてきた。省庁再編や学力低下批判のころからその兆しはあったが、飛躍のきっかけとなったのは、やはり義務教育費国庫負担制度の存廃論議あたりだったろう。財務省や総務省、果ては全国知事会など地方6団体と厳しく対立する中で、文教行政を守る立場から積極的なアピールを行う必要性に迫られたためだ。
今回のセミナーでも、清水潔生涯学習政策局長は行政説明の中でこう述べた。「限界は率直に認めざるを得ない。振興計画が歳出改革や人件費改革の期間と重なるという制約がある、という現状は認識しつつも、(増額の)可能性を念頭に進めていかなければならない。国の重点、国の在り方として、教育政策への理解を獲得していかなければならない」――。ウォッチャーなら十分ニヤリとできる発言であるが、これで一般国民に伝わるかどうか。もちろん説明者のキャラクターや場所にもよろうが、木村氏の説明の方が、すとんとふに落ちたろう。
必ずしも責められないことは、分かっている。文科省といえど政府の一機関であり、政府は一体であるという建前がある以上、内部対立があることを宣伝するのは得策ではない。言質を取られない言い回しは、、役人生活の中で嫌でも染み付いてしまう。しかし教育界が困難の度合いを深めている時だからこそ、困難は困難として率直に語るのが、文教行政をつかさどる役所の務めだと思うのである。
そうは言っても文科省自身が率直に語り切ることができないのは、ある意味で仕方がない。だからこそ、木村氏のように自由な立場で語れる人が必要なのである。その点のしたたかさに関しては財務省などと比べれば文科省はずっと「真面目」であり、時としてもどかしさを覚える、と言ったら厳しすぎようか。場合によっては、裏だけでなく表に関しても、文科省に批判的だと目されている立場の人間すら活用する度量を求めたい。それこそが、文教行政に対する信頼や期待を高める道だとすら言えよう。少なくとも、どこぞの政治家のように根拠薄弱な事実や昔の話を持ち出して対立をあおったところで、教育現場が良くなる保証はどこにもないのである。
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