高校改革調査 総合学科は「中身」で示せ
文部科学相省は10月27日、「高等学校教育の改革に関する推進状況」(高校改革調査)を公表した。1993年度より毎年、個別の高校の特色まで一覧にした同調査は2004年度を最後に冊子の発行がなくなり、それ以降は概略を明らかにするにとどまっていた。4年ぶりの公表となった今回の調査には、時の流れを示す象徴的な結果がある。中高一貫教育校が調査項目のトップに据えられるとともに、その中高一貫教育校と総合学科設置校数が同数の334校で並んだことだ。
そもそも以前の調査では、中高一貫教育校はあくまで「参考」扱いだった。実施形態の一つである中等教育学校が、制度的には「高等学校」と別種のものだからだ。しかし、実際には既存の高校から転換されたものがほとんどである。今回の発表は、各地における高校改革のメーンが名実共に中高一貫教育に移ったことを、図らずも示している。
設置校数の推移からも、それは分かる。総合学科は15年かかって達成した数値だが、中高一貫教育校は10年しか要していない。国は両者とも「通学範囲(全国で500程度)に少なくとも1校」という整備目標を掲げているが、中高一貫教育校の方が先に達成することは確実な情勢だ。
中高一貫教育校は当時の与謝野馨文相の“鶴の一声”によって創設方針が決まったものだが、「受験エリート校」(97年6月の中央教育審議会答申)にしないという大前提の下で、入試方法などに制限が加えられている。しかし現実には連携型を除けば、各都道府県の伝統校すなわち進学校が転換したケースが多い。各県にとっては、「真の」という修飾語付きでエリート校づくりに道を開いたものと言っていい。
一方の総合学科は、普通科と専門学科に大別されてきた戦後の高校に、両者を総合するような“第三の学科”を設置するよう求めた91年6月の中教審答申を基に、具体的な検討が始まった。答申文にもあるように、当時は「受験競争の緩和」や高校中退の抑制が文教行政の大きな課題だった。さらに当時、埼玉県に端を発した業者テスト問題を契機に、「脱偏差値」の中学校進路指導改善と高校改革がセットで求められるようになった。総合学科はそうした高校改革の「パイオニア」として、今から冷静に振り返れば過剰なまでの位置付けと期待さえ与えられた。
当時、文部省の担当者(職業教育課長)だった寺脇研氏には、90年度から始まった生徒減少期を見越して、高校再編を進める中で一気に総合学科を整備しようという目算があった。ただし、その後の地方財政の悪化は、実習施設の整備などに多額の費用がかかる再編にブレーキを掛けた。以降は、むしろ既存の専門学科を活用しながら高校数の削減を進める“方便”としての側面が強くなっていったことは否めまい。また、当初は文字通り寺脇氏の“腕力”によって進学校から総合学科に転換する例もあったが、今では隔世の感を抱かざるを得ない。
総合学科への転換を希望する学校側にも、いわゆる底辺校を活性化したいという切実な願いが少なくなかった。しかし、転換したはいいものの、財政、人事の両面で設置者の十分な支援を受けられなかったところも、また少なくなかったろう。
今や高校をめぐっては、生徒数がピーク時の3分の2に減る中で、いわゆる中堅以上の学校が進学指導に力を入れる一方、専門学科に昔と比べれば目的意識の明確な生徒が集まるようになったのと裏腹に、とりわけ中堅以下クラスの学校に課題が集中するようになった。残念ながら多くの総合学科高校も、そのうちの一つに位置付けられよう。転換前の学校の状況を引きずり、偏差値輪切り状態を克服できなかったためだ。
もちろん、高校側だけを責められるものではない。何より総合学科には、先に挙げた通り設置者の多大な支援措置を必要とする。99年の学習指導要領改訂や普通科高校の多様化努力などにより、総合学科であること自体の相対的なメリットが薄れたことも、情勢の変化としてあるだろう。また、そもそも普職総合というコンセプト自体、当初から「おかゆ学科」と懸念されたように普通教育としても専門教育としても中途半端にならざるを得ないという制度的な限界も、設置の広がりと実践的な積み重ねを通して、残念ながら徐々に顕在化していったように思う。
しかし、学力向上の必要性が叫ばれながら依然として学習意欲の低下が問題となっている中で、職業科目も学ばせつつ将来の夢や希望をはぐくみ、進路意識の形成とその実現につなげるという理念自体は、今でも意義を失っていないはずだ。もちろん、そのためには、かえって現行制度に固執するべきではないかもしれない。それでも、まだまだ改善の余地はあろう。
今こそ総合学科には、生徒の教育という「中身」で、その底力を示してほしい。支援策が期待できない中で教員の奮起を促すのは誠に心苦しいのだが、本当の意味で可能性を示せるのも、また教育実践でしかない。世を挙げて進学校づくりに躍起となる高校改革の風潮に対して、再びパイオニアとしての存在意義を発揮してほしいと願うのである。
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