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2009年2月 7日 (土)

〔開設1周年記念②〕教員の処遇 評価より自由を

 本社も参加するブログランキング「にほんブログ村 教育ブログ」に、「教育の窓・ある退職校長の想い」という人気ブログがある。教育関係者でない方、とりわけ公教育に不信を持っている方は、ぜひご覧いただきたい。教員がどれだけの「想い」を持って、複雑で密度の濃い授業を行っているのか、あるいは行おうとしているのかが、分かっていただけると思う。単なる「メソッド」や「技術」で語り尽くせるものでは、決してない。

 もちろん、このブログの主宰者であるtoshi先生は、相当な指導力を持った方だろう。「こんな先生はごく一部だ」と思われるかもしれない。しかし、こうした授業や指導を理想とし、多忙な中でも授業研究や研修に励んで、日々の授業に当たろうとしているのが、間違いなく日本の公教育の「強み」だ。

 ところが、現在進められている教育改革は結果的に、そうした強みに向かう士気を低下させるものばかりになっている。

 これには、必ずしも文部科学省ばかりを責められない面がある。とりわけ小泉構造改革の下で教育政策にも規制緩和・自由競争路線が迫られてきており、文科省もそれに抗することができなくなっている。そうした改革を後押ししてきたのが世間に根強い学力低下批判や公立学校不信であり、その究極の姿である安倍「教育再生」路線が破たんした後も、改革メニューだけは残されてしまった。

 もちろん学校選択制や教員評価、学力調査など、それぞれの必要性や意図があって進められてきた面があるのは確かだし、本社も個々の改革を全否定するものではない。しかし、それらが教員にもたらしたマイナス面もまた、深刻なほど学校現場を侵食しているように思えてならないのだ。

 一つの典型例が、教員給与体系の見直しである。そもそもは国にも地方にもカネがないから、公立学校教員の給与水準を下げたいという単純な話のはずである。それを、今の教員は民間や一般公務員のみならず諸外国と比べても給与が高すぎるとか、職務が大変であるということはないとか様々な難癖をつけて、引き下げを行おうとしている。それによって「あなたたちは全くダメなんだよ」という負のメッセージを現場に送っているに等しいにもかかわらず、である。

 では低下した士気が、教員評価や処遇のメリハリの導入で、果たして高揚するか。決してそんなことはあるまい。

 100万教職員すべてがそうだとは言わないが、教職を目指した人は大なり小なり、いい教育をしたい、子どもの成長にかかわりたい、という思いを持った人のはずだ。職務に見合った処遇を求めることはあっても、手厚い処遇のために教職を続けているという人は、“世間”の常識に反して少数である。

 もちろん「いい教育」をめぐって、世間とのズレはあろう。だからといって教員バッシングをすれば、教育はよくなるのか。むしろ次々と降り重なる教育改革と学校批判の中で日々の職務を淡々とこなすしかなく、判断停止に陥っているのが、多くの教員の現状だと言っていい。

 いま学校教育、とりわけ公立学校に必要なのは、教員に自由を与えることだ。それによって、日々の教育に創造性が生まれる。現場を覆っている閉そく感を何とかしなければ、日本の公教育の強みさえもがダメになってしまう。

 そのためなら教職員定数増を抑制することもやむを得ないし、給与水準を下げることさえも仕方がない、とさえ考える。「今はカネがないから、我慢してちょうだいね」と言えばいいだけの話である。

 その代わり、現場教員の精神的な負担だけは、絶対に軽くしなければならない。そうでなければ教職に対する士気も情熱も低下して、日々接している子どもに悪影響が及ぶのは必至だ。いや、昨今の教員をめぐる事件や不祥事を見ていると、既に事態は深刻なのかもしれない。

 日本の公教育の強みは戦後、教員も子どもの家庭も貧しく、劣悪な処遇と教育環境の中、十分な研修機会も与えられないままに、ストーブを囲んで、あるいは酒を飲みながら子どもや授業を語り、日々の実践を積み重ねる中でつくり上げられてきたものだろう。toshi先生の授業も、間違いなくその延長線上に位置するものだと拝察する。そうした強みを失うことこそが、日本の教育の危機である。

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コメント

小河先生との安曇野合宿の際にお世話になった たろ です。お久しぶりです。もう覚えていらっしゃらないかもしれませんね。あのとき中学1年だった長女が現在高校2年、小学校三年だった次女が中学1年になりました。
先日偶然こちらのブログを見つけて、あのときの合宿のことが懐かしく思い出されます。
教育関係の御仕事をされているようなのでご意見を伺いたいことがあります。娘の中学(学年)は今荒れの嵐の真っ只中です。荒荒れ子供の荒れはどこから来るのでしょうか?
先生方は一生懸命できることは全てやってくれているようです。長女の頃のように隠そうとせず、
学校全体での情報の共有、保護者への情報提供もやってくれています。しかし、悪化する一方のような気がします。
臨時保護者会での話し合いは想像を超えたものでした。
子供の荒れ、崩壊についてどのようにお考えでしょうか?もし必要であれば保護者会での記録をお送りすることもできますが・・・

投稿: たろ | 2009年2月 9日 (月) 14時34分

たろさん、ごぶさたしております。もちろん覚えていますよ(ご夫婦で参加された方ですよね?)。あの合宿は印象深く記憶に残っておりますし、皆さんとお会いできたことは私の保護者観を大きく変えた貴重な経験になりました。

さて、子どもの荒れや学級崩壊についてですが、もちろん個別のケースで考えなければいけませんが、一般的に言ってさまざまな問題が複合していることが多いようです。
どう対応したらいいかは、教員ではないので確たるアドバイスはできませんが(それこそ小河先生の専門ですね)、あくまで一般論として、“原因”を取り除けば解決する、というケースは少ないようです。そもそも“原因”自体が特定できないし、ある程度特定できたとしても仕方のない場合さえあり得ます(荒れる子の家庭崩壊など)。
一方で荒れる学級は、先生たちにも原因が分からず突然荒れ出し、それがしばらく続いた後で、何がきっかけになったかも分からないままに落ち着く、という話を、よく聞きます。ですから先生方にも教訓にしようがない、というわけです。
(隠さずに情報提供するようになったのも、そういうわけで学校にもどうしようもできず、保護者に助けを求め、いっしょに解決していってほしい、という姿勢の現われだと言っていいでしょう)

ですから保護者会で原因や責任を追及したとしても、解決するどころか問題をますます困難にするような気がしてなりません。

よく聞く例では、授業の支援やイベントなどと称して保護者が日常的に学校やクラスに入ると、比較的早く落ち着きを取り戻すといいます。学校も保護者も一丸となってクラスをよくするために協力しているんだよ、という姿勢を実際に見せることが、子どもたちには意外なほど効果があるようです。
とはいえ、保護者参加を決めるための保護者会は、相当な労力が必要ですよね。本来ならたろさんのような見識のある方がリーダーシップを取られるのが理想ではありますが、それでたろさんが潰れてしまっては何にもなりません(背負ってしまうタイプとお見受けしました)。できる人ができる範囲で協力しながら、徐々に輪を広げていくしかないように思います。
あと、「おやじの会」も結構、有効だと聞きます。ただ、「たろの夫」さんも同タイプとお見受けしましたので(重ね重ね失礼な言動お許し下さい)、ご夫婦ともに、くれぐれもご無理なさらないで下さい。

(もちろん、そんな悠長なことを言っている状況でないとしたら、緊急措置として強硬措置を取らなければいけない場合だってあると思います。もしそう合意できたなら、子どもの安全のために躊躇すべきではありません。中学校でも出席停止などの措置を取ることは可能だし、むしろ奨励されています)

何のお役にも立てず本当に申し訳ありませんが、結局はご家庭内と一緒で、教師も保護者も地域も七転八倒しながら子どもたちにかかわり、見守っていくしかないのかもしれません。
役立たずながら、荒れの収束を遠くより願うばかりです。

投稿: 本社論説 | 2009年2月 9日 (月) 17時58分

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