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2009年3月

2009年3月31日 (火)

「流産させる会」 冗談では済ませられない

 愛知県内の公立中学校で、生徒が妊娠中の担任教諭に対して「流産させる会」と称して、悪質な嫌がらせを繰り返していたことが分かった。どの程度本気だったのか、また、どこまで指導すべきなのかは、日々それらの生徒に接し、担任教諭と生徒との関係も把握している学校側の判断を尊重したい。しかし一般論としてこの問題は、単なる冗談や「いたずら」で済ませてはいけないだろう。事は、教職員の生命にかかわる問題である。

 女性教員に流産の危険性が高いことは、データはともかく学校現場にとっては経験的な事実だ。ただでさえ多忙で心身共にハードな職種である上に、昔から産休代替など制度面での保障は整備されているにもかかわらず、周りの教員に迷惑は掛けられないといった伝統的な職場環境のために、ついギリギリまで無理をしてしまう。教職員組合の集会などではいつも問題にされているのに、教育現場が真正面から解消に取り組んだという例はほとんど聞かない。

 元々がそんな劣悪な環境に置かれているのが、女性教員の現状なのだ。ささいな「いたずら」であっても、重篤な結果をもたらしかねない。

 たとえ軽い気持ちの冗談であったとしても、人権の面から看過できまい。とりわけ少子化にあって、「生きる」実感の乏しい児童・生徒たちに、生命尊重を強く訴えていかなければならない時代である。

 そして何より訴えたいのは、これこそ学校教育以前に、家庭の問題だということである。家庭の「第一義的責任」を規定した改正教育基本法を持ち出すつもりは毛頭ないが、根本的な生命倫理はまさに家庭の責任で身につけさせるべきものだ。

 近年はいたずらと推測されるインターネット上の殺人予告でさえ、威力業務妨害容疑として刑事事件に発展するようになった。同様に今回のような事態が発覚した場合も、事実関係が明らかになるまで「会員」全員をいったん出席停止にしてから徹底的に調べるべき問題だろう。出席停止は懲戒ではないし、「職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為」は学校教育法上も出席停止の適用要件として明記されている。

 本社は必ずしも安直な「ゼロ・トレランス」論にくみするものではない。しかし、いじめ問題と同様、決して「よくあること」では済まされないし、済ませてもいけない。

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2009年3月25日 (水)

全国学力テスト 公立「全校参加」を惜しむ

 愛知県犬山市教育委員会は臨時会で、2009年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)への参加を決めた。2007年度の開始以来、2度にわたって唯一参加を拒んできた自治体が方針転換することで、公立小・中学校は基本的に全校がテストを受ける見通しとなった。決定については、地方教育行政の意思決定機関である合議制教委が市民の間接的な意向などを受けて判断した結果であるから、尊重しなければなるまい。しかし残念なのは、地方分権時代にあって自治体の参加率が100%になるという“異様”さである。

 全国学テ自体の問題点や解決策については本社説で再三論じているところであるが、ここで注目したいのは、テストへの参加を求める法的根拠である。データの公表が問題となった鳥取県の情報公開審議会が昨年7月の答申で明らかにしたように、全国学テの実施に関する文部科学省通知はあくまで省内の内部規定であり、法的拘束力を持つものではない。だから参加しないと判断する自治体が出てきても、一向に問題はない。事実、私立の参加は5割程度にとどまっている。

 全国学テへの全校参加を強く迫ることは本来、規制緩和・地方分権の趣旨に反するはずだ。しかし、そもそも規制緩和派の省庁が学校選択自由化のための手法として全国的な学力調査の実施を求め、それが国の権限を強めたい文科省の思惑と一致する、という奇妙な経緯で創設されたテストだけに、矛盾は避けられない。そしてその矛盾に巻き込まれたのが、地方分権に則り独自の教育改革を進めてきた犬山市だったというのも、皮肉な結果というほかはない。

 合議制教委の意思が定まった以上、市内の学校には自信を持って児童・生徒に平常心でテストを受けさせてもらいたい。教育改革の成否の一端が、説得力を持って提示できるからだ。

 それにしても、国の義務教育費国庫負担率が3分の1に引き下げられた現行制度の下での「教育の地方分権」論議が再燃されないことは、かえすがえすも残念だ。全国学テへの参加や結果公表の問題は、その表れでもある。

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