「流産させる会」 冗談では済ませられない
愛知県内の公立中学校で、生徒が妊娠中の担任教諭に対して「流産させる会」と称して、悪質な嫌がらせを繰り返していたことが分かった。どの程度本気だったのか、また、どこまで指導すべきなのかは、日々それらの生徒に接し、担任教諭と生徒との関係も把握している学校側の判断を尊重したい。しかし一般論としてこの問題は、単なる冗談や「いたずら」で済ませてはいけないだろう。事は、教職員の生命にかかわる問題である。
女性教員に流産の危険性が高いことは、データはともかく学校現場にとっては経験的な事実だ。ただでさえ多忙で心身共にハードな職種である上に、昔から産休代替など制度面での保障は整備されているにもかかわらず、周りの教員に迷惑は掛けられないといった伝統的な職場環境のために、ついギリギリまで無理をしてしまう。教職員組合の集会などではいつも問題にされているのに、教育現場が真正面から解消に取り組んだという例はほとんど聞かない。
元々がそんな劣悪な環境に置かれているのが、女性教員の現状なのだ。ささいな「いたずら」であっても、重篤な結果をもたらしかねない。
たとえ軽い気持ちの冗談であったとしても、人権の面から看過できまい。とりわけ少子化にあって、「生きる」実感の乏しい児童・生徒たちに、生命尊重を強く訴えていかなければならない時代である。
そして何より訴えたいのは、これこそ学校教育以前に、家庭の問題だということである。家庭の「第一義的責任」を規定した改正教育基本法を持ち出すつもりは毛頭ないが、根本的な生命倫理はまさに家庭の責任で身につけさせるべきものだ。
近年はいたずらと推測されるインターネット上の殺人予告でさえ、威力業務妨害容疑として刑事事件に発展するようになった。同様に今回のような事態が発覚した場合も、事実関係が明らかになるまで「会員」全員をいったん出席停止にしてから徹底的に調べるべき問題だろう。出席停止は懲戒ではないし、「職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為」は学校教育法上も出席停止の適用要件として明記されている。
本社は必ずしも安直な「ゼロ・トレランス」論にくみするものではない。しかし、いじめ問題と同様、決して「よくあること」では済まされないし、済ませてもいけない。
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