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2009年3月25日 (水)

全国学力テスト 公立「全校参加」を惜しむ

 愛知県犬山市教育委員会は臨時会で、2009年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)への参加を決めた。2007年度の開始以来、2度にわたって唯一参加を拒んできた自治体が方針転換することで、公立小・中学校は基本的に全校がテストを受ける見通しとなった。決定については、地方教育行政の意思決定機関である合議制教委が市民の間接的な意向などを受けて判断した結果であるから、尊重しなければなるまい。しかし残念なのは、地方分権時代にあって自治体の参加率が100%になるという“異様”さである。

 全国学テ自体の問題点や解決策については本社説で再三論じているところであるが、ここで注目したいのは、テストへの参加を求める法的根拠である。データの公表が問題となった鳥取県の情報公開審議会が昨年7月の答申で明らかにしたように、全国学テの実施に関する文部科学省通知はあくまで省内の内部規定であり、法的拘束力を持つものではない。だから参加しないと判断する自治体が出てきても、一向に問題はない。事実、私立の参加は5割程度にとどまっている。

 全国学テへの全校参加を強く迫ることは本来、規制緩和・地方分権の趣旨に反するはずだ。しかし、そもそも規制緩和派の省庁が学校選択自由化のための手法として全国的な学力調査の実施を求め、それが国の権限を強めたい文科省の思惑と一致する、という奇妙な経緯で創設されたテストだけに、矛盾は避けられない。そしてその矛盾に巻き込まれたのが、地方分権に則り独自の教育改革を進めてきた犬山市だったというのも、皮肉な結果というほかはない。

 合議制教委の意思が定まった以上、市内の学校には自信を持って児童・生徒に平常心でテストを受けさせてもらいたい。教育改革の成否の一端が、説得力を持って提示できるからだ。

 それにしても、国の義務教育費国庫負担率が3分の1に引き下げられた現行制度の下での「教育の地方分権」論議が再燃されないことは、かえすがえすも残念だ。全国学テへの参加や結果公表の問題は、その表れでもある。

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社説」カテゴリの記事

コメント

 おはようございます。
『教育の窓・ある退職校長の想い』ブログのtoshiです。
ついに、犬山市も学力調査に加わることになりましたね。
そこで、貴ブログ記事を引用させていただきながら、記事にまとめてみました。TBしましたので、よろしくお願いします。

投稿: toshi | 2009年4月 9日 (木) 09時22分

toshi先生、このたびは弊社(デッチ上げの仮想会社ですが)のような過疎ブログを取り上げていただき、大変恐縮です。
ご指摘のように「100%」の意味は、民主主義社会の危機としてとらえるべきかもしれません。しかもそれが、民主主義の最たる選挙で選ばれた首長らの意向によって強いられている、という矛盾は、まさに「不気味」と言っていいでしょう。
今後とも微力ながら、現場に寄り添った論説を心掛けていきたいと思っています。ご指導、ご教示をよろしくお願いいたします。「総集編」も期待しております。
(編注=貴ブログにも同文コメントさせていただきました)

投稿: 本社論説 | 2009年4月10日 (金) 23時11分

 “しょう”と申します。初めてコメントさせていただきます。

 toshiさん(『教育の窓・ある退職校長の想い』)の書かれたブログ記事のリンクから何度か訪問させていただきました。

>全国学テへの全校参加を強く迫ることは本来、規制緩和・地方分権の趣旨に反するはずだ。

 全くおっしゃるとおりだと思いますが、これが行政機関や「政治家」による圧力にとどまらず、「保護者や地域住民」を含む社会的な圧力となっているところに問題の難しさがありますね。

 具体的な弊害がすでに現実のものとして進みつつあることはtoshiさんも記事の中で述べておられました。が、このような「競争体制」が継続した結果生じる問題点については、「教育改革」の一つのモデルとなったイギリスの事例を検証する必要があると考え、拙ブログで記事にまとめてみました。

http://plaza.rakuten.co.jp/shchan3/diary/200811030000/

 ご一読いただければ幸いに思います。

投稿: しょう | 2009年4月12日 (日) 14時15分

しょうさん、ご訪問およびコメントを頂き、ありがとうございます。
文科省は一時期イギリス(イングランド)モデルをひた走っていたのですが、頓挫してしまった格好です。ただし施策化された部分に関しては既定路線になってしまったため、今後もさまざまなひずみが出ることでしょう。代わりとなる新方針を、果たして打ち出せるのか否か。実はそういう点でも、本社説で取り上げた浅田校長に注目しているのです。
今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: 本社論説 | 2009年4月12日 (日) 15時47分

>文科省は一時期イギリス(イングランド)モデルをひた走っていたのですが、頓挫してしまった格好です。

>ただし施策化された部分に関しては既定路線になってしまったため、今後もさまざまなひずみが出ることでしょう。

 規定路線になってしまった数々の「改革」は、「学校不信にもとづく(橋下知事のような)声」が大きくなればなるほど多くのひずみを生み出すでしょう。

 しかし、実りある「連携」を創っていくことでその弊害を縮小していくことは可能だと考えています。
http://plaza.rakuten.co.jp/shchan3/diary/200812140000/
 よろしければ・・・。

 貴社の論説、本日より積極的に応援させていただきます(笑)。

投稿: しょう | 2009年4月12日 (日) 21時22分

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 以前、『教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説』なるブログが、拙ブログを紹介してくださったことがあった。  大変感謝している。ありがとうございました。  その記事には、『教員の処遇 評価より自由を』という標題がついており、その趣旨は、かつて、拙ブログ....... [続きを読む]

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