2人の校長に期待する〈上〉 混迷する教育界の打開役に
新学期が始まった。本社は、新天地でスタートを切った2人の校長に注目している。1人目は、東京都品川区立大崎中学校校長の浅田和伸氏(47)である。
浅田氏は、前内閣参事官の文部科学省キャリア官僚。経緯などは本社配信記事に譲るが、順調だった事務次官への道を投げ打っての“覚悟の転進”だ。
浅田氏が校長を志した動機の通り、教育界には今、深い亀裂が走っている。学校現場は次々と降りかかってくる教育改革メニューに「改革疲れ」を起こし、判断停止にさえ陥っているように見える。
文科省の方針も、現場には決して一致しているとは受け止められていない。それもそのはず、「行政の継続性」に腐心していることは本社のような教育行政マニアには理解できないこともないのだが、構造改革や「教育再生」路線と整合性を取ろうとして、かえってグランドデザインが描けていないと言わざるを得ない。しかも、かろうじて一致している部分すら「脱ゆとり教育」といった皮相的な見方によって誤解されたままである。
教育再生会議に対する評価など、実際に担当者だった浅田氏と、本社の認識には自ずと違いがある。しかし、あえて困難な場に身を投じ、現場と苦労を共にしようとした浅田氏の決断には、掛け値なしにエールを送りたい。
浅田氏は赴任前、まず自分の目で学校現場の実態を把握してからだと、具体的な抱負を述べることを慎重に控えていた。しかし若手官僚時代から柔軟な考えと、相手の話を聞く耳を持っていた氏のことである。本社の取材に語っていた「教職員の能力が最大限に発揮されるような環境づくりが校長の役割」という姿勢や、きょう行われた入学式で述べていた「教育を大切に思う気持ちは人後に落ちない」という言葉に、嘘はない。
幸い赴任校は、地域的にも落ち着いた学校のようである。きっと教職員や保護者、住民にもその姿勢が理解され、安定した学校運営が行えるに違いない。そこから徐々に、地に足のついた新機軸を打ち出していくことだろう。その上で困難があれば、国に対しても現場の立場から、堂々と提言してほしい。
何より「行政と現場の心をつなぐ」役割は、まさに浅田氏が志したところである。そこから発信される実践や提言は、必ずや混迷する教育界の課題を打開する糸口になるはずだ。
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