政権公約〈3〉 免許更新制 信じていいのか「廃止」方針
それが本当なら、ぜひ実現してもらいたい。教育政策に限って言えば、それだけで政権交代の価値はある。民主党が方針を固めたとされる、教員免許更新制の廃止のことである。
同党のマニフェストや政策集では「抜本的に見直す」と抽象的な表現にとどめているが、7月に行った政府政策の「事業仕分け」では廃止すべきと判断していた。
そもそも更新制は「教育再生」を掲げた安倍晋三元首相が、前回の「郵政選挙」で圧勝した小泉純一郎元首相の禅譲と個人的人気(当時)を背景に、半ば強引に導入したものである。当初もくろんでいた「ダメ教員には辞めていただく」のではなく、定期的に最新の知識・技能を身につけさせる「リニューアル」を目的とした制度設計になったにもかかわらず、世間ではいまだに問題教員の排除策だと誤解されている面が少なくない。
それでも学校現場や、教育を受ける側にとって有益な制度ならば、改善してでも存続する価値はあろう。しかし本格実施1年目から、受講日程の調整が大変、ニーズに合った講座がないなどのほころびが出始めている。教員免許はあくまで個人の資格であるから、内容が経験者研修と重複しても避けることはできない。費用対効果を考えるならば、明らかにムダだ。
本社は過去の社説で、たとえ10数年かけてでも更新制を廃止するよう主張した。10年で1サイクルの更新が終わるわけだから、普通なら一巡を待たないと制度の根幹にかかわる見直しはできるものではない。実際、自民党は「教員免許更新制の着実な実施」(政策BANK)を掲げている。抜本的見直しができるとしたら政治の力をおいてほかになく、まさに政権交代がその役割を担う。
しかし民主党にも、不安要素がぬぐえないのも事実だ。同党は2007年4月、与党の教育関連3法案に対抗する形で提出した「学校教育力の向上3法案」の中で、更新制に関しては100時間の講習を義務付けるという、与党案(30時間)よりも厳しい条件を盛り込んでいた。日教組の支持を受けているからといって、旧自民党竹下派出身者から旧社会党左派まで一枚岩ではないことも周知の事実だろう。
昨年の話であるが、若手教育学者の武石典史氏は『月刊高校教育』2008年8月号で、そうした更新制の導入過程を例に、小選挙区制の下での政策論争が教育改革にどのような影響を与えるかを論じていた。そこでは民主党が、政府案よりも良さそうなもの、より良さそうなものを提出しようとして、逆に「熟慮を欠いた教員免許更新制導入を後押しする勢力の一つ」になってしまった、と評していた。そのような「チキンレース(度胸試し)のような『改革論合戦』」(武石氏)が、マニフェスト選挙の弊害でもある。
そこまで考慮に入れた上で、かつ、選挙結果によって現実の政治がどう動くかをも予測しながら、明日は慎重に一票を投じたいものである。それでも圧勝が予測される民主党に求められるのは、政権与党としてふさわしい、ぶれない政策決定と実現の覚悟だろう。
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