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2009年8月22日 (土)

政権公約〈1〉 信用できるのか“奇妙な一致”

 選挙戦たけなわである。今回は政権選択をめぐって激しい戦いが繰り広げられ、「幼児教育の無償化」か「高校の実質無償化」かといった教育政策も焦点の一つとなっている。しかし主要政党のマニフェストなどをよく見ると、奇妙な一致点がある。公財政教育支出の国内総生産(GDP)比の引き上げだ。

 「OECD諸国並みの公財政教育支出の確保を目指す」(自民党・政策BANK)、「先進国中、著しく低いわが国の教育への公財政支出(GDP〔国内総生産〕比3.4%)を、先進国の平均的水準以上を目標(同5.0%以上)として引き上げていきます」(民主党・政策集INDEX2009)、「GDPに対する教育の公費負担率を現在の3.5%から先進国並みへの引き上げを目指します」(公明党・マニフェスト中長期ビジョン)、「OECD加盟国で最下位の教育予算を、早期に平均にまで引き上げます」(共産党・総選挙政策)、「対GDP比3%半ばという他の先進国と比べて低い水準の教育予算を、『世界標準』といえるGDP5%水準(OECD平均)に引き上げるため着実な教育予算の拡充をはかります」(社民党・衆議院選挙公約2009)――。長々と原文を引用したが、要するに言っていることは同じである。

 GDP比をめぐっては、昨年の教育振興基本計画策定論議で文部科学省が経済協力開発機構(OECD)加盟国平均までに引き上げることを主張し、財政当局の猛反対に遭って数値目標を断念し、「OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考の一つとしつつ、必要な予算について財源を措置し、教育投資を確保していくことが必要である」との抽象的表現にとどめた経緯がある。

 主要政党の公約通りなら、たとえどのような政党の組み合わせになろうとも、新政権の下ではGDP比5%が目指されるはずである。少なくとも2013年からの第2期教育振興基本計画には、明確な数値目標として掲げられることになろう。当然その時の野党にも、異論があるはずはあるまい。

 そう指摘しておきながら、にわかに信じられない思いがぬぐえない。昨年時点のデータだが、GDP比3.5%(17.3兆円)を5.0%(24.8兆円)に引き上げるためには、消費税率3%程度分に当たる7.4兆円が必要になる(2008年6月、財政制度等審議会答申)。本当にそうであれば、幼児教育無償化7900億円や高校実質無償化9000億円の両方とも簡単に吸収できそうな話である。しかし実際にはお互いを「バラマキ」だと批判し合っている始末である。

 だいたい、ほかの政策も含めた財源論で空中戦を繰り広げている各党が、教育予算の大幅引き上げを主要政策としてアピールしている形跡もない。無償化するのは幼児教育か高校教育かという選択の“目玉”はあっても、肝心の“芯”がないのだ。それとも、いずれかを盛り込めば着実にGDP比を引き上げることになるから、それをもって「目指」したことにしようとでも言うのか。そもそも各党が無償化を打ち出したのは、私立幼稚園団体や教職員組合を支持母体としているからというだけではないか、と皮肉の一つも言いたくなる。 

 教育予算の拡充を支持する本社としては、せっかく各党が一致していることに難癖をつける必要はないかもしれない。しかし、それだけに今回の政権選択が本当に教育政策の充実に向かうものなのかどうか、まずは疑問を呈しておきたいのである。

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