新政権に望む〈5〉 新定数計画で“非常勤プア”も解消を
民主党はマニフェスト(政権公約)に「教員を増員」することを盛り込んで総選挙に勝利し、川端達夫文部科学相は就任時に鳩山由紀夫首相から「教員の資質や数を充実する」という指示を受けている。常識的に考えれば、新しい公立学校教職員定数改善計画の策定が不可欠だ。新政権の目玉政策として、ぜひ取り組んでもらいたい。その上で、近年増えている定数内非常勤講師の解消にもつなげることを、併せて主張する。
義務制第8次の改善計画は2006年度の予算折衝を経て幻に終わり、その後は行政改革推進法のくびきにより概算要求にすら盛り込めず、毎年度の改善自体も部分的なものにとどまっていた。総選挙直前に提出された来年度概算要求でも5500人のうち喫緊の特別支援教育分(1966人)を除けば、大部分は主幹教諭(2500人)である。学校マネジメントの改革にはなっても、あえて言えば直接的な指導改善につながる保証はない。
財務省などは、この間の定数改善が教育の質の向上につながらなかったことを盛んに主張し、文部科学省と「エビデンス」(証拠)をめぐって空中戦を繰り広げてきた。しかし、それも財政再建・人件費抑制という前政権下での既定路線を背景にしてのことだろう。
何よりマニフェストに予算の「全面組み換え」を掲げた鳩山政権である。当面は子ども手当や高校実質無償化の実現が最優先されるのであろうが、来年度が無理でも、せめて小学校で新学習指導要領の本格実施が始まる2011年度には新定数改善計画をスタートさせるべく、その足がかりだけでもつけてもらいたいものだ。
さて、その上での非常勤講師問題である。
文部科学省は2004年度、義務教育費国庫負担制度(義務教)に「総額裁量制」を導入した。これにより都道府県が独自にやりくりして教職員数を増やすことができるようになり、少人数指導などのニーズにもより対応しやすくなったことは確かである。
そもそも総額裁量制は義務教の廃止・都道府県への財源移管を目論む地方分権派の機先を制するものであったが、結果として給与水準の引き下げばかりでなく、定数の一部を非常勤講師で充当することを促進した面があることも否めない。「総額」が抑制される中での「きめ細かな指導」は、そうした定数内非常勤に支えられてきたと言っても過言ではなかろう。
もともと教職員の世界は産休代替をはじめ非常勤を必要とする構造にあったが、総額裁量性が更なる非常勤の需要を生み出した。しかも、正規教員数や給与水準の抑制とセットで、である。地域的な偏りがあるとはいえ、複数の学校を掛け持ちし、コマ当たりの給与も抑えられ、苦しい生活を余儀なくされている非常勤は少なくない。近年では世相に倣って「非常勤ワーキングプア」などとも呼ばれている。
曲がりなりにも念願の教職に携わることはできても、生活は豊かにならず、勉強時間もままならないため毎年の採用試験にも落ち続ける――。昔からあった構図ではあるが、それが政策から構造的に、しかも大量に生み出されていることが問題なのだ。
雇用問題も、鳩山連立内閣の大きな課題の一つである。そうであるならば“非常勤プア”の解消もまた、教育と雇用にまたがる戦略的な政策課題になり得るはずだ。
教員定数の問題は、「質」の問題にも実はストレートに跳ね返ってくる。非常勤が増えても校務は任せられないから、正規教員の多忙化はますます進むし、ベテランは非常勤どころか若手教員の面倒すら見る余裕はない。一方、数の上では非常勤を含めた教員需要が増大しているから、そもそもの適性に欠ける「問題教員」が入り込む危険性もまた高まる。非常勤は採用試験に落ち続け、将来への希望を見いだせない――。正規・非正規を問わない昨今の教員不祥事は、そうした教職をめぐる環境と無関係ではないと思うのだが、いかがであろうか。
教育の質は、安倍「教育再生」路線のように教職員の尻をたたいたところで高まるものではない。個々の問題教員への対応と、全体の質を上げる政策を混同することは、厳に慎まなければならない。いま疲弊し切った学校現場に必要なのは、主体的に教育に取り組む時間的・精神的なゆとりである。それを誘導する政策は、定数改善をおいてほかはない。
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