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2009年9月19日 (土)

新政権に望む〈4〉 更新制の「6年制」一体論議を歓迎する

 川端達夫文部科学相は記者会見で、教員免許更新制の在り方を、民主党がマニフェスト(政権公約)に掲げた教員養成課程の6年制(修士)化などと一体で論議していく意向を示している。教職の基礎資格を一気に6年制にするかどうかは別として、理念、現実の両面から、これら教員免許制度の問題を一体化させて論議しようとする姿勢を歓迎したい。

 まず、理念の面である。言うまでもなく教員の資質向上は、養成・採用・研修の各段階を一体のものととらえて論議されなければならない。更新制の目的が「自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊厳と信頼を得ること」(文部科学省説明資料)であるならば、なおさらのことだ。その上で更新制そのものを廃止すべきことは、総選挙直前の社説でも主張した。

 更新講習のレベルは、規定通り受講していれば修了が認定される程度とされている。そうであるならば、内容的には現職研修の中で吸収できる性質のものだろう。無理を押して更新制を導入した安倍「教育再生」路線のくびきが無くなった今、免許制度内だけの論議に限る必要はない。

 そもそも現行更新制が導入された時、その前の更新制論議で代わりに義務化された10年経験者研修との整合性は、今後の課題とされて未解決のままだ。養成と研修という制度の違いに固執していてはいけない。教員のライフステージ一貫で資質向上を目指すべきものならば、各段階の役割分担によって効率化を図ることもまた「戦略」であろう。

 そして、現実の面である。更新制自体は、既に始まってしまった。今年4月から授与される免許状には10年間の有効期限が付いてしまうし、既に前年度の予備講習で1万2千人以上の現職教員が必修講習を受講し、本講習でも5月段階で5万1千人以上が必修の申し込みをしている。途中で制度を単に廃止するだけなら受講が無駄になってしまうし、有料で受講した者からすれば「受講料を返せ」と言いたくなるのも道理だ。

 だからこそ、「6年制」との一体論議が必要になる。

 そもそも現職教員の専修免許状(修士レベル)取得を奨励することは、1988年の同免許状創設以来の課題だった。更新講習の修了分を、そのまま上級免許取得のための単位として読み替えるのである。趣旨の面で整合性は図れないかもしれないが、緊急措置としては許されよう。

 近年、都道府県教委などは財政事情から、内地留学の定員枠を削減する傾向にある。2001年度から大学院修学休業制度が導入されてはいるが、休業期間中は当然無給のため今年度の休業者数は全国で200人余りにとどまっている。そもそも山積する校務を尻目に休業するのは、気が引けるものだ。

 一方で大学側は教職大学院の充実などで学校現場に密着した教育・研究に力を入れているから、運用次第では校内研究と連動させた実践研究が可能であり、教員個人にも現場にもメリットをもたらす。川端文科相就任時に渡された鳩山由紀夫首相の「指示書」では教員の「資質」だけでなく「数」も充実するとされているのだから、当然あるであろう教職員定数改善計画にはぜひ研修定数も盛り込んでほしい。

 ただし先にも述べたように、基礎資格を6年にすべきかどうかは別問題である。確かにフィンランドの例などを引き合いにして「教員免許を修士レベルに」と主張することは、耳に心地良い。しかし、首都圏などで教員不足が続く中では現実的でないし、学生側にとっても6年間の学費を掛けてなお採用される見通しが立たなければ悲惨だ。何より開放制原則にかかわる、やっかいな論議を再燃させかねない。

 そこで求められるのが、「養成・採用・研修の一体化」である。例えば1種免許状取得(学部レベル)段階で仮採用にして教職大学院と連動した養成=実践研修を行い、専修免許状取得のあかつきには即戦力として本採用にする、といったアイデアはどうだろう。あまりにも幼稚な発想かもしれないが、さまざまな可能性を探る価値はある。

 解散がなければ、4年間は民主首班政権が続く。その期間で十分、養成・採用・研修の総合的な検討ができよう。少なくとも更新制が導入された時のような拙速さと、現行制度を維持すれば10年以上にわたって続く弊害に比べれば、ずっと有意義かつ実効性あるものになることは疑いない。

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