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2009年11月12日 (木)

政府事業仕分け やはり「面白い試みだが」

 政府の行政刷新会議の「事業仕分け」が始まった。本社は昨年、当時の政権与党だった自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム(PT)」が行った「政策棚卸し」に関して「面白い試みだが」と題して論じたが、今回、文部科学省事業に関する第3ワーキンググループ(WG)の初日の論議を聞いていて、おおむね同じ感想を持った。「試み」としては「面白い」と一定の評価をしつつ、やはり「が」と留保は付けておきたい。

 まず、手法としては高く評価できよう。手法の提唱者である民間非営利団体(NPO)「構想日本」によると、事業仕分けは予算項目ごとに「外部の視点で」「公開の場において」「担当職員と論議して」事業が必要かどうか、必要ならば官・民、国・地方(都道府県、市町村)のどこがやるかを判断していく作業である。国の予算編成過程と言えばこれまで、国民からは密室と言っていい状態で行われてきた。それが今や、その一端とはいえインターネット中継で全国からアクセスできるのである。過去の経緯や関係団体のしがらみから離れて「そもそも」からメスを入れられることも、大きなメリットだろう。

 それだけに、限界もある。論議を聞いていて痛感したのだが、やはり評価者の資質に左右される面は否めない。

 確かに、事業の効果についてエビデンス(証拠)ベースで厳しく追及する議員・外部の評価者の姿勢には目が覚める思いがしたし、独立行政法人の宿泊事業などに対する指摘にはうなずけるものが少なくなかった。常に天下り人数や委託効果がただされるのも快活でさえあった。半面、余りに成果を求める性急な態度がどうしても鼻についてしまった。もちろん、それが正論であればむしろ歓迎されるべきである。しかし、例えばモデル事業や調査研究費を批判する際に「(文科官僚は)実態を知らない。現場に行けば分かることだ」と訳知り顔で切り捨てるのは、いかがなものだったろうか。

 小学校英語をめぐっては、中・高校を通じた英語教育そのものの問題にまで脱線していた。もちろん全体から個別事業を見直す視点は必要でないとは言わないが、ここはあくまで限られた時間内に「事業」ベースで「仕分け」る場であったろう。学習指導要領の在り方にまで踏み込んだり、「英語より国語」のような問題を蒸し返したりするような大所高所の論議に陥ったのは妥当だったろうか。

 事業ベースの限界は、各モデル事業をめぐる論議にも当てはまる。昨年の自民党PTのように本来、モデル事業そのものを認めるか認めないかが、国と地方・学校との関係そのものの在り方にかかわって問われなければならなかった。教育実践に関して国が予算を使って誘導すべきなのか、許されるならどの範囲までなのか、という根本的な方針が確定していないままで個別事業を論じていても、焦点がぼけた印象がぬぐえなかったのは残念である。

 説明する文科省側にも課題があった。まるで国会答弁のような弁明に終始していたのだ。構想日本でも、事業仕分けは「説明者(担当職員)のプレゼンによっても評価が変わる可能性」があると指摘している。あれでは「外部」の有識者はもとより、インターネットの向こうで見守る国民を納得させることはできまい。もう少し上手な説明をすればいいものを、染みついた体質はなかなか抜け切れないものだな……などと変な同情をしてしまう。

  しかし、ある意味で論議や判断の拙速さ、乱暴さが、良くも悪くも事業仕分けのポイントなのだろう。予算編成過程に緊張感をもたらし、要求側・査定側の双方に国民目線で説明責任を迫ることも、重要な作用と言える。

 それだけに、下された判断や削減額が一人歩きしてしまうのが心配だ。仕分け結果はあくまで「参考資料」であり、最終的にどう扱うかは「首長、議会の責任」(構想日本)である。そして何より、予算審議は国会の役目である。

 今回の判断を予算編成の有力な材料としつつ、限界をも認識して絶対視することなく、そのほかの事情も総合的に勘案しながら、あくまで政権としての主体的な意思決定を行ってほしい。「マニフェスト至上主義」の弊害が気になる今だからこそ、あえて注意を喚起しておきたい。

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