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2010年1月16日 (土)

学校週5日制 「完全」見直しの時期だ

 東京都教育委員会は、 公立小・中学校が土曜日に正規の授業を行うことを容認することを決め、留意事項を市区町村教委などに通知した。授業公開やゲストティーチャーを招いた授業など地域や家庭との連携を図るものに限ることから、あくまで「学校週5日制の趣旨」の範囲内であるとの立場を取っており、鈴木寛文部科学副大臣も記者会見で「5日制の議論とは別の話だ」との見方を示している。しかし今後、追従する教委が続出することは必至であり、休業土曜日の存在意義が揺らぐことは避けられない。ここは「完全」にこだわらず、地方の裁量に委ねるなど思い切った見直しに乗り出すべきだ。

 学校週5日制は、1992年9月から月1回、95年4月から月2回、2002年4月から毎月と、段階的に導入されてきた。当初は企業などでも週休二日制の普及が進んでおらず、根強い反対論があったからだ。それでも「子どもを家庭・地域に返す」方が、指導要領の目指す「自ら考え主体的に判断し行動できる資質や能力を身に付け」られるという“教育論”を盾に、10年かけて押し切った。

 5日制論議の発端が、教員の“労働問題”にあったことは否定できない。92年5月には、一般公務員の週40時間労働と完全週休二日制の実施が迫っていた。議論の始まった90年当時から導入が既定路線であったことは、一部関係者には周知の事実だった。

 もちろん89年告示の指導要領は5日制の実施を織り込んでいたと言われているし、98~99年告示の指導要領は完全5日制を前提にして学習内容の削減と授業時数の縮減を行った。それが、いわゆる「ゆとり教育」批判の集中砲火を浴びたことは、記憶に新しい。

 しかし本社は、いわゆる単純な知識学力の向上のために5日制の見直しを主張するものではない。学校以外の場所で「生きる力」をはぐくむことは、子どもの成長・発達にとって依然として重要な課題である。「学校化社会」の行き詰まりは明白であり、さまざまな学びの場が残されていることが必要だ。建前としての教育論とはいえ、その大切さを提起した意義までも否定されるべきではない。

 それでも都教委が指摘するように、平日の過密化による負担増大は教員のみならず子どもにとっても深刻さを増しており、これ以上放置できない状態にある。新指導要領の基になった08年1月の中央教育審議会答申も5日制を「維持することが適当」だとしながら、「総合的な学習の時間」での土曜日の活用を容認している。現実論としても土曜日に正規授業を行えるようにしなければ、学校現場は持たない。

 他方、「受け皿」である地域や家庭の教育力も、全体としては一向に高まる気配はない。指導要領の改訂論議の際、文科省内からも「これほど地域や家庭の教育力が低下することを想定していなかった」という反省が漏れたほどだ。世界的な不況が進行する中、ますます期待を掛けられなくなっていることも事実として認めなければならない。

 ただし学校や子ども、保護者、地域住民を取り巻く環境は、それこそ地域によって千差万別だ。教育課程の編成はまさに学校の権限であり、授業計画もそれと不可分であろう。90年代はまだ制度面でも意識面でも「中央集権」の時代であったから、国が全国一律の導入を求める方式を取らざるを得なかったことは仕方ない。しかし今は「地方分権」の時代であり、民主連立政権は「地域主権」を掲げてさえいる。授業日の設定も、まさに地方教委や学校現場の裁量に任されるべきであろう。

 鈴木副大臣は会見で、都教委の決定と、公立学校の土・日曜休業を定めた学校教育法施行規則とは「齟齬(そご)はない」との見方を示し、制度改正に踏み切るつもりのないことを表明している。しかし、都教委にならって土曜活用が全国に広がれば、学校・家庭・地域の連携という“建前”さえも空洞化しかねない。思い切って今のうちに同法を改正することも「地域主権」にかなうものではないか。

 現場感覚としても、教育課程、勤務の両面から「月2回の時がちょうど良かった」というのが大勢のようである。もちろん学力向上を理由にした子どもの学習の過重負担には注意しなければならないが、それも含めて子どもに一番近い学校の判断に任されるべきではないか。

 教員の負担軽減策も忘れてはいけない。ほとんどの教委では既に代休規程の改正などで土曜出勤問題をクリアしているようだが、5日制の段階的導入時代に行われているような長期休業日の「まとめ取り」方式の復活も検討されてよい。さらに一歩進めて、近年は管理が強化されてきた長期休業中の勤務も、教員に研修の自由を保障するために弾力化すべきだ。

 その上で、学校・家庭・地域の連携策や、社会に出ても通用する「生きる力」をはぐくむための具体的な方策について、もう一度仕切り直して検討すべきだろう。少なくとも物理的に子どもを家庭や地域に「返せ」ば問題が解決するような牧歌的な時代では、もうなくなっている。

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