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2010年2月 9日 (火)

私立高の「無償化」 自治体の“支援競争”を歓迎する

 国の「高等学校等修学支援金」(私学版高校無償化措置)に上乗せする形で、低所得世帯を中心に私立高校の授業料を実質無償化しようとする自治体が相次いでいる。経済的な困窮で子どもの教育機会が危ぶまれる中、こうした動きを基本的には大歓迎したい。

 私学にも無償化措置を拡大することは既に昨年11月、大阪府の橋下徹知事が年収350万円以下の世帯を対象に、府内私立高校の平均授業料である55万円を限度に府が負担する方針を明らかにし、それを超える額についても各校が給付型奨学金を創設して実質全額を無償化するよう合意を取り付けていた。

 一方、京都府の山田啓二知事は1月末、都道府県のトップを切る形で2010年度当初予算案に「京都式高校生あんしん修学支援制度」と銘打った事業を計上。年収350万円未満世帯に対して平均授業料の64万円まで実質無償化するとともに、市町村民税が非課税となる母子・父子・障害者世帯等には学用品費や入学支度金を対象にした給付型奨学金を創設する。

 その直後、橋下大阪府知事は11年度から無償化の対象を年収680万円以下の世帯にまで拡大する方針を表明。ほかにも愛知県、広島県などが無償化措置を検討していることが明らかになっている。新年度当初予算案が出そろえば、おそらく相当数の自治体に上ろう。

 こうした支援策の競争なら、大いにやってほしい。とにかく今は、低所得世帯の高校生にとって教育機会が奪われるか否かの瀬戸際にあると言っても過言ではない。当初予算に間に合わなければ、年度途中からでも補正予算による積極的な対応が期待される。

 高校進学には授業料以外にも、さまざまな費用が掛かることは言うまでもない。しかし文部科学省が概算要求していた入学料と教科書費の給付型奨学金事業(高校版就学援助)は、年末の予算折衝でゼロ査定となった。京都府の措置はこれを一部カバーするものだし、広島県も全額免除の対象を施設整備費などを含めた「実質授業料相当分」に拡大するという。こうした点も、ぜひ競い合って充実してもらいたい。

 ところで、冒頭に「基本的には大歓迎」と書いた。あえて限定を付けたのは、公立と私立の支援策にはおのずと格差があってしかるべきだからだ。私学を選択するということは、その学校の建学の精神に賛同し、自由意思によって特色ある教育を選ぶ、ということが「基本」のはずである。義務教育である小・中学校でも、私学では授業料が徴収されている。高校でも私学の方が高額になることには、合理的理由がある。

 そうは言っても、各都道府県では公私間協定によって入学定員の比率が決められている例がほとんどであり、私学選択が必ずしも「自由意思」とは言えないところも少なくない。私学の比重がどれくらいかは地域によって事情が違うので、全国一律に論じられない。国の措置にどれだけ上乗せするかは、まさに地方の役割であり、責務である。

 気になるのは、橋下知事の“戦略”だ。公私の授業料格差を5万円程度に縮めることで、公立と私立を対等な形で競争させる狙いが込められている。ターゲットはむしろ公立にあり、競争によって志願者の減った高校は廃止を検討するなどのルールづくりも進める意向だという。発想が逆ではないか。

 重要なのは、いま誰に、どのような支援を行えば、教育機会を保障できるかを考えることである。そのためには私学もそうだが、公立高校に通う生徒に対する更なる支援策も忘れてはならない。ひいては、小・中学校や大学を含めた教育費の拡充が、将来に向けた“成長戦略”として展望されなければならないだろう。

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