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2010年4月 7日 (水)

新年度に思う 「過密教育」が心配だ

 全国の多くの学校で入学式や始業式が行われ、新年度が本格的にスタートした。本来ならば咲き誇る桜のように希望に満ち溢れているべき季節なのだが、先々のことを思うと、どうにも気が晴れない。

 2011年度から使用される小学校教科書の検定結果が先ごろ発表された。教科書は一面で、学校現場に対して学習指導要領の趣旨を極めて具体的に表現するものでもある。ページ数は全体で25%増になったという。理科は37%増にも上る。

 大手マスコミの報道ぶりは「脱ゆとり」「ゆとり決別」などと肯定的なトーンで一致し、記事中や社説で「詰め込み教育」回帰の懸念や、分厚い教科書を使いこなす教師の指導力の必要性を指摘するにとどめている。しかし現場にとっては、もっと深刻ではないのか。「過密教育」とでも呼ぶべき危機である。

 なぜ「過密」なのか。確かに新指導要領では削減された内容が一部復活するが、教科書のページ数ほど内容が増えるわけではない。それよりも増えるのは「活動」だ。「習得、活用、探究」「言語活動」「体験」をキーワードに、さまざまな形態の学習活動がこれまで以上に求められることになる。一方、増える標準授業時間数は週1時間だけである。もちろん指導要領は授業時数を想定して内容を構成しているはずであるが、本当に全国の教室で現実的に標準時数内に収まり切るのか。

 何より新教育課程に対応した授業をじっくり検討する余裕が、多くの教師にはない。現行下でさえ多忙化や長時間過密労働が指摘される昨今である。「子どもと向き合う時間の確保」というキャッチフレーズは教育界の内外に共通して受け入れられた感もあるが、じっくり向き合い、指導の成果を上げるためにも、十分な教材研究や児童・生徒理解が不可欠になる。その余裕もないまま、分厚い教科書に対応しなければならない。時間的、精神的の両方の「過密」さでだ。

 授業だけではない。指導要領が変われば当然、学習評価も変わる。文部科学省は中央教育審議会報告を受けて、指導要録の参考様式を含めた通知を今月中にも出す予定である。「活用」の評価ではこれまで以上に一人ひとりの状況を丁寧に見取ることが求められようし、通知の後に国立教育政策研究所から示される評価規準も、おそらく詳細なものになろう。

 思い返せば今につながる多忙化の発端は、1989年改訂の指導要領の下で関心・意欲・態度をはじめとする観点別評価が導入されたことだったように感じる。それが98~99年改訂時の、いわゆる「ゆとり教育」批判と学力向上への対応、そして評価規準に対応した評価基準の作成と、ほとんど判断停止に陥ったとさえ言っていいほど現場は忙殺された。それと並行して覆いかぶさってきたのが、厳格な勤務管理や教員評価制度、保護者・地域住民対応、果ては学校・教員バッシングである。精神的な過密さは、極まっていると言っていい。

 民主連立政権は、教職員定数の大幅な改善方針を打ち出している。確かに朗報ではある。一校当たりの教員数が増えれば、それだけ一人に掛かる校務分掌の負担は軽減されよう。しかし、たとえ学級定員が引き下げられようとも、クラスで授業を行うことには変わりない。その授業自体が、今まで以上に過密にならざるを得ないのである。

 加えて、現在は第2次ベビーブームに対応して採用された「ひしめく」世代の大量退職期に突入している。この10年で半分近くの教員が入れ替わる都道府県もあるほどだ。逆に、この間の少子化による採用抑制で、中堅層は薄い。ベテラン層は従来の経験がますます通用しない新教育課程への対応に手一杯だ。大量の新任教員たちは校内で十分な指導やサポートを受けられないまま、複雑化する子どもたちに相対しなければならない。これで本当に新教育課程の実が上がるのかも心配だが、そもそも学校現場が「持つ」のか、恐怖さえ覚える。

 心配のし過ぎかもしれない。もっと希望を語らなければ、現場はますます辛くなるだけかもしれない。しかし政権交代を果たしても一向に光明が見えてこない気がするのは、気のせいなのだろうか。

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