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2010年9月30日 (木)

免許更新制 鈴木副大臣は責任ある迅速な対処を

 民主連立政権下における文教行政のキーパーソンが文部科学相ではなく鈴木寛副大臣であることは、周知の事実である。その鈴木副大臣の発言について、注目すべき報道が相次いだ。

 一つは、菅改造内閣での留任を受けた共同通信のインタビューである。それによると、教員免許更新制を廃止するための教育職員免許法改正案を来年の通常国会に提出することを断念したという。記事は「2012年3月に免許の更新時期を迎える約8万4千人が新たに、更新のための講習を受ける必要が出てきた」としている。ましてや11年3月に更新時期を迎える“第1号”の教員に対する厳格な法律適用は、既成事実とされている。

 もう一つは、先ごろ創刊された教員養成・研修専門誌『SYNAPSE』(ジアース教育新社)に掲載された、教育ジャーナリスト斎藤剛史氏による鈴木副大臣インタビューである。民主党代表選挙前の8月末に行われたものだが、そこでは現在検討している「4年間プラスアルファ」の教職大学院について「10年後の姿」だと言っている。

 待ってほしい。更新制の問題について鈴木副大臣は、かねてから養成・採用・研修を一体で改革する方針を強調してきた。現に中央教育審議会でも、そうした方向で検討を行っている。かつて本社は養成・採用・研修の一体化論議を支持する社説を掲げたし、中教審諮問に関して、鈴木副大臣の政策構想力を賞賛する記事さえ配信した。

 しかし、それはあくまで実行力が伴っての話である。養成制度改革が10年後の話であれば、専門免許状創設などの免許制度改革も10年後になってしまうではないか。つまり、更新制も10年続くということになる。 

 内閣改造直前の今月16日、文科省は「教員免許更新制について」と題する文書を公表し、関係機関に送付した。民主連立政権下で「法律改正が行われるまでの間は、現行制度が有効」だという趣旨の文書は、これが3度目である。しかし、これは実質的に退任前の鈴木副大臣が免許更新制の即時廃止に“白旗”を上げたことにほかならない。

 しかし菅改造内閣において、鈴木副大臣は留任した。更新制が近く廃止されるだろうと期待を持たせた責任を、どう取るのか。過去3回にわたって「現行制度が有効」だという見解を繰り返し示したことで、法令に基づいて行政を進める役所としては責任を果たしたかもしれない。問いたいのは、鈴木副大臣の「政治責任」である。

 もちろん鈴木副大臣は会見などで、更新制をすぐに廃止する方針だとは一切明言していない。あくまで「一体」改革を強調しただけである。ただし、4年制プラスアルファの養成改革自体を甘く見ていたふしがある。そう時間を掛けずに、教職大学院の充実は図れるだろうと。それに対して実施的に白旗を揚げたのが、先のインタビューだったろう。

 今からでも免許失効の危機にひんする対象者への救済措置を検討し、その実行に努力すべきだ。抜本改革は、その後でもいい。あえて法律の抜け穴を探すことも許されよう。厳格に法律を適用するほど、更新制に意味はない。というより、現場の指導に熱心で更新講習を受講する余裕もなかった教員の免許が失効するなどという事態が起こったら、その損失は計り知れない。

 かつて旧文部官僚から、「通産省が通った後はペンペン草も生えない」という評を聞いたことがある。新分野に手当たり次第手を出して、成長が期待できないと判断したらさっさと手を引いて次の分野に移るさまを、やゆしてのものだった。もちろんそこには著作権や情報化などで激しく対立したやっかみも、多分に含まれていた。しかし、どこまでも教育界に責任を持つという自負だけは強い「三流官庁」として、一分の理もあったろう。

 たとえ10年先であっても講習の成果が上級免許の取得につながるのなら、受講者の利益になるのだから問題ではない――というのは旧帝大法学部卒キャリア官僚の机上の論理としては通用しても、一般にはとても理解できまい。霞が関に限界を感じたはずの“脱藩組” が、当人も自覚しないままに染み付いた出身官庁の悪癖を表さないことを、願うばかりである。

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