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2010年10月22日 (金)

コミュニティ・スクール(上) 政権交代後も残る成果を

 コミュニティ・スクールの再検討が、本格的に始まった。これは単に、数ある教育改革メニューの一つを見直すことにとどまらない。社会における学校の位置付け、もっと言えば市民社会の在り方さえ問うものである。教育界も腰を据えてこの論議に取り組む必要がある。

 18日に発足した「学校運営の改善等の在り方に関する調査研究協力者会議」はコミュニティ・スクール、学校評価、教職員の勤務負担軽減などをテーマとしており、まずは年内にも「新しい公共型学校」の考え方を整理するという。

 今回の論議が、鈴木寛・文部科学副大臣が主導するものであることは言うまでもない。コミュニティ・スクールはそもそも2000年の「教育改革国民会議」に委員の金子郁容・慶應大学大学院教授が提案し、報告に盛り込まれたものだが、その構想を練ったグループの一人が当時、慶大助教授だった鈴木副大臣である。

 だからといって副大臣となった鈴木氏が今、自分が携わった制度に固執し、その拡大を図ろうとしているだけだと狭く考えてはいけない。いや、そもそも鈴木副大臣らは、コミュニティ・スクールに壮大な意味付けをしていたのだ。

 少々難解だが、鈴木副大臣の説明を整理しよう。今や医療、介護、保育、福祉、教育などの社会的対人サービスは「オーダーメード」でなければ満足度を上げることができなくなり、「小さな政府」でも「大きな政府」でも対応はできない。そこで求められるのが「コミュニティー・ソリューション」(コミュニティーによる問題解決)であり、現場の当事者が「熟議」の手法で話し合い、その過程で役割を自覚し、解決していくことが求められる。それこそが「新しい公共」であり、コミュニティ・スクールはその典型である――。

 つまり、ここで問うているのは「ポスト近代社会」における市民社会そのものであり、それに対応した新しい政治の在り方である。それを提起し、実現しようとしているのが政権交代を果たした民主党だというわけである。

 しかし、そうした見直しを単なる政争ととらえてはなるまい。

 言うまでもなく現在の公教育と学校の教員は、さまざまな役割と期待を背負わされて疲弊している。閉そく感を打開するために何らかの措置を講じなければ、現場は持たないところまで来ている。その解決策の一つが「地域で支える学校」、すなわちコミュニティ・スクールであることは間違いない。

 そもそも明治以来、学校は地域に支えられて存在してきた。コミュニティ・スクールの理想像を追求することは、そうした古き良き地域像を現代なりに呼び戻すことにもつながる。鈴木副大臣も指摘するように、「学力トップクラス」の秋田県や福井県などでは学校と保護者・地域との信頼関係や連携が今も維持されている。地域社会の中に学校があり、学校がまた地域社会の核になる、という関係を、忘れてはなるまい。

 全小・中学校でコミュニティ・スクールを基盤とした一貫教育を行っている東京都三鷹市の貝ノ瀬滋教育長は、「コミュニティ・スクールからスクールコミュニティーへ」という展望を語っている。伝統的な地域社会が成り立ちにくい都市部であってもコミュニティーの創出は不可欠であるし、その可能性は学校にこそある。

 協力者会議にしても、来年度概算要求にある「『新しい公共』型学校創造事業」のための理屈づけのための場ととらえるべきではない。たとえ自民党政権になっても残るような、地域社会の中で存在する学校像を展望してもらいたい。

 そのためには教育界も、従来のように「地域や保護者に協力してもらう」という姿勢で論議していてはだめだ。地域から支えられるだけでなく、学校も地域を支えるイコールパートナーの自覚を持っていく必要があるだろう。

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