高校無償化 「条件付き停止」もやむなし
東日本大震災のための復興財源論議が本格化してきた。自民党が子ども手当、農家個別所得補償、高校授業料無償化、高速道路無償化社会実験の「バラマキ4K」を撤回するよう求めているのに対し、民主党の岡田克哉幹事長も検討を否定しない意向を示した。このうち文教政策である高校無償化については、平素なら絶対堅持を主張するべき本社であっても、このような状況に至っては停止もやむを得ないと判断する。ただし、あくまで条件付きでのことだ。
高校無償化が、自民党が主張するような「バラマキ」だとは本社は考えない。以前も指摘したように、後期も含めた中等教育の無償化は国際標準だ。政権交代があろうとなかろうと、実現すべき課題であった。棚からぼた餅のような導入だったとはいえ、せっかくの成果を後退させるべきではない。
しかし、教育環境の整備にとっても被災地の復興が急務であることは論をまたない。文部科学省の17日現在のまとめでも学校施設の物的被害は3900件を超え、調査が続けばまだまだ増えそうな勢いだ。児童・生徒の心のケアも課題になってこよう。また、被災地以外でも耐震化を早急に進めなければならない。
そうはいっても、昨年末の予算編成でさえ苦慮するほどの財源難である。現在の民主党政権にこれ以上の予算組み換えができるとも、「埋蔵金」発掘ができるとも期待できない。被災地の痛みを思えば、負担は国民ひとしく分かち合う必要がある。
高校無償化は決して「不要不急」(岡田幹事長)だとは思わないが、教育面で負担を分かち合うと考えれば無理のないことではない。ただし、条件が二つある。
一つは、あくまで「停止」であることだ。無償化という原則は残しつつ、復興が一段落した段階で復活させることを前提にしなければならない。予算上ないし政治上の表現方法は難しいかもしれないが、知恵を絞って原則だけは譲らないでほしい。
もう一つは、被災世帯も含めた低所得者層に配慮することだ。できれば先に主張した通り、「高校版就学援助」も含めて検討してほしい。自民党も、政府予算案の対案で約2000億円の教育費軽減策が必要であるとしている。協議の余地はあろう。
蛇足ながら付け加えれば、無償化の論議は私学の「高等学校等就学支援金」も例外ではない。公立と共通した理念の下で検討すべきだ。そこは自民党にも、あえてクギを刺しておきたい。
重ねて言うが、原則は譲るべきではない。しかし、助け合いは必要だ。痛みを分け合うことは、小泉構造改革時代のような「痛みに耐え」ることではない。
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