新年度に思う〈下〉 新課程への意識、いま一度検証を
東日本大震災の被災地を除く全国各地で、入学式や始業式が相次いでいる。新年度は小学校で新教育課程が全面実施となり、中学校もあと1年に迫った。しかし、本当に大丈夫なのか。いま一度、検証が求められよう。
ベネッセ教育研究開発センターの「第5回学習指導基本調査」によると、教員が「多くするよう心掛けている」授業として、知識・技能を「習得する学習」」が小、中学校とも8割近くを占めたのに対して、「活用する学習」は4割台。「探究的な学習」になると1~2割台しかない。
言うまでもなく新学習指導要領では、「習得・活用・探究」の学習活動をバランス良く行うことが求められる。好意的に解釈すれば、学校現場は先のような数値のバランスで「確かな学力」が育つと思っているのかもしれない。しかし実際には、移行措置期間中の内容増への対応に追われて「活用」や「探究」への関心がおろそかになっていなかっただろうか。調査に携わった耳塚寛明お茶の水女子大学教授も、記者発表の席で「活用型や探究型の学習がやや軽視されているのではないか」との見方を示していた。
「言うまでもなく」と書いたが、正しい理解が本当に浸透しているかも怪しい。一般の報道等に惑わされて、新指導要領がいわゆる「ゆとり教育」を見直したものだと本気で思っていないだろうか。「ゆとり」か「脱ゆとり」かといった二項対立で捉えている限り、新指導要領の趣旨は絶対に理解できない。もっとも研究者ですら「脱ゆとりの新指導要領」などと平然として使っていることが少なくないから、教員ばかりを責めることはできないのだが。
調査によると、「探究的な学習」への不安が5割前後あるのに対して、「活用」への不安は2~3割にとどまっている。先に見たような“4割程度”の力の入れ具合で、活用力が十分育成できると思っているのだろうか。、確かに全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のB問題対策は各地で進んでいるし、PISA(経済協力開発機構=OECD=の「生徒の学習到達度調査」)の結果も回復傾向が見られた。しかし、安心していていいのか。そもそも全国学テにしてもPISAにしても、決して成績コンテストではない。あくまで実生活に「生きる」知識とすることが、最終目標だ。
さらに不安なデータもある。教科の内容増に伴って「全体的に授業の進度を速める」とした教員が、小学校で半数を超えている。特に経験5年目以下の初任者層では10ポイントも高い。ベテラン層の7~8割が「ポイントを絞って教える」としたのとは対照的である。今後「ひしめく50代」の大量退職に伴って、新採用教員は大量に増えていく。しかも、手にする教科書のページ数は3割増だ。頭から最後まで順を追って、しかもスピードアップして授業を行っていては、文部科学省さえ懸念しているように「落ちこぼれ」が増えることもあり得ないことではない。
こんな“細かい”ことにこだわっている場合ではないのかもしれない。被災地では、学校の再開にさえ大きな困難を抱えている。教科書にも文房具にも何不自由なく授業が行えること自体、文字通り有り難いことなのだろう。しかし新指導要領が「生きる力」の育成を目指すものならば、いま行おうとしている教育活動が本当に児童・生徒一人ひとりに「生き抜く力」の基礎を培うものとなり得るのか。東北はもとより日本全体の復興を思えば、改めてそのことを反省する必要があろう。
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