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2011年4月 1日 (金)

新年度に思う〈上〉 今こそ語ろう、「学校」の重要性

 先月起こった東日本大震災は、3週間が経過した今も全容が把握できないほどの甚大な被害をもたらした。阪神・淡路大震災や新潟県中越地震などと同様、多くの被災者がよりどころとしたのが学校施設だった。交通機関がストップした東京などでも、多くの学校が帰宅難民の休憩所となった。新年度を迎えるに当たり、地域に「学校」が存在することの重要性を、改めて保護者、住民とともに語り合いたい。

 ほとんどの人が高校まで進学する中、我々は長らく学校を空気のように捉えてきたのではないか。あるいは個人の通学体験から、百人百様の思いを抱いていよう。学園闘争や校内暴力・不登校・いじめなど不満がくするぶる一方で、それでも学校という存在に対する信頼感がかつては社会全体にあったように思う。

 潮目が変わったのは、21世紀に入る前後に沸き起こった学力低下論争だ。初めは大学生の学力問題だったものが、確たる証拠のないまま初等中等教育の問題にされてしまった。学校に対する潜在的な不満に火が付いてあっという間に燃え広がり、不信感や不満は今も大都市圏を中心にくすぶっている。子どもや孫を学校に通わせる人にとっては今やクレームの対象であり、学校に関わらない住民にとっては「迷惑施設」でさえある。

 そうした状況に拍車を掛けたのが、小泉政権下における構造改革・自由競争路線と、後を受けた安倍政権下の教育再生路線だったろう。規制緩和を進めたい観点から、不祥事などをきっかけに激しい公教育・学校バッシングが続いた。少子化が進んでいるのだから、無駄を省くために学校の統廃合を進めよ。教員を増やしても学力は上がっていないのだから、これ以上増やす必要はない――。こうした批判に学校現場はすっかり自信を無くし、多忙化とも相まって判断停止に陥っているようにさえ思える。

 しかし今回の震災では、一時600校を超える学校に被災者が避難した。震源地に近い宮城では県内小・中学校の4割が避難所となった。その立ち上げに尽力したのは、自らも被災した教職員だ。東北から関東にわたる広範囲な被災であったにもかかわらず対応できたのは、やはり一定の子どもがいるところ津々浦々に学校があったことが大きい。そもそも防災拠点の約6割が、学校施設だ。

 天災は全国どこでも無縁ではなく、明日は自分たちが被災者にならないとも限らない。だからこそ今回の震災に際して、これまで以上に全国の人たちが被災地と被災者に思いを寄せているのだろう。

 そうであるなら被災地支援の一方で、自分たちの足元も見つめ直したい。もし学校に避難せざるを得なくなった時、具体的にどうするか。避難所の設置責任者はあくまで自治体の防災担当者であって、教職員は支援・協力を行うに過ぎない。避難所としての利用はあくまで目的外使用であり、原則7日間以内というのが法令上の原則だ。長期化せざるを得ない場合も、避難住民による自治組織が実質的な運営を担うことが求められる。何より本来の目的である教育活動の再開のため、学校本来の機能を徐々に回復させなければならない。

 もちろん緊急時に、法令上の原則など通用しない。だからこそ、普段からの意思疎通が不可欠だろう。もし災害が起こったとき、教職員は、住民は、どう行動するか。どうやって避難所を運営し、明け渡していくか。過去の震災を教訓に学校側では防災計画やマニュアルを準備しているが、それも住民の協力なしには生かせない。

 学校の教育活動にとっても近年、「総合的な学習の時間」やキャリア教育を通して、地域との関係を深める必要性は高まってきた。新学習指導要領の下でも地域の協力なしには「習得・活用」・探究」の学習を深めることはできない。学校側にとっても、地域の側にとっても、お互いがなくてはならない存在なのだ。

 新年度は、学校と地域や保護者とのさまざまな会合が開かれる時期でもある。そうした機会を捉え、全国でお互いの関係を深める契機としたいものだ。

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