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2011年5月

2011年5月21日 (土)

九大「女子枠」の撤回を惜しむ

 九州大学が、2012年度入試から実施を予定していた理学部数学科の女性枠を取りやめると発表した。 旧7帝大としての英断が、旧態依然の意識に屈したのは誠に残念だ。今回の措置を惜しむととともに、大学当局にはこれにひるむことなく今後の復活に向けて奮闘していただきたい。

 大学側の説明によると、「法の下の平等の観点から問題があるのではないかとのご意見」があったためだという。「男子差別だ」というだけでなく、「不公平だ」という意見も根強い。

 しかし同じ国立大でも、名古屋工業大学の機械工学科が以前から女子に限定した推薦入試を実施している。そもそも新制大学発足以来、お茶の水、奈良という国立女子大学が2校もあるではないか。「憲法違反の可能性がある」といったコメントも一部にあるが、全くの的外れだ。

 批判的になる気持ちは分からないでもない。九州は大学進学では地元志向が強い土地柄であり、その頂点に君臨する九大の動向はブロック下の大学にも大きな影響を与えよう。全入化が進む一方で国立志向はますます高まっており、男子にとって入学枠が狭められるのは納得できないかもしれない。

 ただ、入試をめぐっては大学審議会(現在は中央教育審議会に統合)が既に2000年11月の答申で「絶対的な公平性という考え方から脱却」することを求めている。医学部の地域枠も導入前には公平性の観点から慎重意見が根強かったが、今や反対論が聞かれることはほとんどない。

 全入時代の学力低下が問題とされ、国立大学も例外ではないが、そもそも18歳人口はピーク時の6割に減少している。入試によって学力を担保しようとするなら、入学定員も6割に削減しればいけないのが道理だ。それでもなお定員を維持しようとするなら、従来の入試の在り方を根本的に考え直さなければならない。中教審が折に触れて「入学者受入方針」(アドミッション・ポリシー=AP)に基づく選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を訴えているのも、そのためだ。

 その点、九大の場合はAPが極めて明確である。かねてから全学を挙げて女性研究者・教員の育成に力を入れており、そのために女子の入学者を増やしたいというのは研究大学として自然なことである。入学後のカリキュラム・ポリシー(CP)とセットで女性の特性を生かした研究者養成を行うなら学問的な発展にも寄与しようし、少なくともその試みは否定されるべきではない。

 今回の女性枠を批判する人は、いまだに激烈な受験競争時代の発想から抜け出ていないのではないか。そうした思考法のままでは、全入時代の高大接続問題を考えることは到底できない。

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