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2011年6月

2011年6月30日 (木)

デジタル読解力 今から向上への戦略検討を

 経済協力開発機構(OECD)が、2009年「生徒の学習到達度調査」(PISA)のうち「デジタル読解力」の結果を発表した。試行扱いで参加も19カ国・地域と少なかったためか、あまり大きな話題になっていないようである。これがもし米、英、フィンランなど主要国が参加していたら、さぞ「日本はトップではない」などと騒がれたことだろう。過剰に注目されていないことを幸いに、落ち着いてこの問題を考えたい。

 PISAの調査分野といっても「問題解決能力」(2003年調査)のように1回限りで終わったものもあるし、PISA自体を将来的に筆記型からコンピューター使用型に移行したい考えのようだから、今後もデジタル読解力だけを取り出した調査が続くとは限らない。しかし、それでも今回の出題から、OECDの問題意識を読み取ることができる。

 PISA上の読解力の定義は「書かれたテキストを理解し、利用し、熟考し、これに取り組む能力」というもので、「書かれたテキスト」の中にはデジタルテキストも含むという。当然デジタル読解力も読解力全般の中の一部であるが、ペーパーテストによる従来の「プリント読解力」に加えて機器操作などの技能が要求される。とりわけ「熟考・評価」の側面にみられるように、プリントテキスト以上に情報の出所や信頼性を吟味し判断しなければならなくなる。情報化が進展する国際社会では、そのような能力も含めての「読解力」が不可欠だというメッセージに他ならない。

 そう考えれば、順位も象徴的なものに見えてくる。断然トップの韓国は早くから情報化を国家戦略として位置付け、情報通信技術(ICT)の普及が著しい。翻って4位の日本では中学校や高校で情報教育が必修化されて久しいが、調査にもあるように各教科でコンピューターを使用する割合は1%だけで、OECD平均の26%に比べ低すぎる。電子メールやインターネット接続に熟達するのも個人の携帯電話頼み、というのが日本の子どもたちの現状だ。

 今後の知識基盤社会において、仕事上も個人の生活上もICTの比重はますます高まっていくことだろう。もちろん学校の指導場面では引き続きプリントテキストが基本となろうが、子どもたちが社会でICTを使いこなせるようにしなければならないことを考えれば、デジタルテキストの活用も計画的に教科等の授業に組み込んでおくことが求められよう。

 新学習指導要領でも、確かにそうした情報化への対応が盛り込まれている。ただし、どう指導計画を立て、実践するかは当然のことながら学校現場に任されている。裏を返せば現場が主体的に動かなければデジタル読解力の伸長も望めない、ということでもある。

 だからといって、現場の尻をたたくだけでは何にもならない。そもそもPISA自体が決して国際学力コンテストなどではなく、各国の教育政策立案に生かすことを目的にしている。現場が積極的に取り組めるような条件整備が伴わなければ、決して政策とは呼べないだろう。

 そのためには機器整備とともに、教員が各教科等で授業実践や教材研究に取り組める時間の保障が不可欠だ。文部科学省は今春まとめた「教育の情報化ビジョン」でICT活用による「学びのイノベーション」を打ち出したが、本気で実現したいのならそれに見合った条件整備を責任持って用意すべきだ。

 折しも次期教育振興基本計画の論議が始まっている。21世紀の授業像をどう描き、実現するのかの具体的な目標と戦略を策定することが、国には求められている。

【7/1最終更新】

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