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2011年10月 3日 (月)

12年度概算〈1〉 定数改善に満額回答を

 文部科学省は2012年度概算要求に、小学校2年生の35人以下学級など7000人の教職員定数増を盛り込んだ。東日本大震災への対応分1000人を含め、最小限とも言うべき控えめな要求だ。復旧・復興予算確保のための絞り込みが必要なのは重々承知しているが、最終的には野田内閣の政治主導で満額回答を求めたい。

 全国連合小学校長会の抽出調査によると、これまでも半数以上の学校では低学年でクラス替えを行っていない。これには学年1クラスという小規模校なども含まれているが、複数ある場合でも低学年では安定した学級集団で学習・生活指導が行われることが望ましいからだ。もし小2が40人学級に据え置かれれば、都市部も含めてクラス替えを余儀なくされる学校が続出しよう。たとえ今後、小3以上を見送ったとしても小2だけは何としても実現しなければならない。

 震災対応以外の加配増2000人も不可欠だ。というのも前年度、小1の35人以下学級を実現するために少人数加配1700人分を振り替えていたからだ。既に1クラス35人を下回っていた学校にとってはメリットがないばかりか加配教員が取り上げられてしまい、各地で悲鳴が上がっている。積算根拠は別として、この分の回復は何としても実現しなければ全国的な指導充実は望めない。

 文科省の検討会議では中学校1年生の35人学級化にも強い要望が出されたが、報告書では小2を最優先する観点から「できるだけ速やかに」と指摘するにとどめた。目下の財政事情に遠慮してのことだ。加配要求のうち800人を中学校の指導充実に充てているのは、せめてもの代替措置だろう。 

 概算要求の直前にまとめた検討会議の報告書は、実によくできている。少人数学級の効果について、多角的なデータを踏まえているからだ。財政当局との折衝でも、エビデンスベース(証拠に基づいた)の論議が期待できよう。

 定数増7000人のうち1000人分は「復旧・復興対策」枠、6000人分は「日本再生重点化措置」枠での要望だ。最終的には内閣の政治判断に委ねられる。昨年末に小1プロブレム解消の必要性を認めたのは、他ならぬ当時の野田佳彦財務相である。

 それにつけても惜しまれるのは、前年度に立てた定数改善計画案の甘さである。自民党政権時代と差別化するため威勢よく「新」と銘打ったものの、初年度からつまずいた。少人数加配の削減も、文科省内にさえ「財務省の方が正しかった」という声がある。既に県単独の活用で35人以下学級を実現しているのに、なぜその分を振り替えてはいけないのかという「理論武装」ができていなかったのだ。中学校の35人学級化を14年度からとしていることも、現下の「中1ギャップ」解消の必要性に対する認識が不十分だったと言わざるを得ない。

 新・定数改善計画には、マニフェスト(政権公約)を振りかざして高校無償化を実現した勢いそのままに「行け行けドンドン」で進めようとした政治主導の悪弊が表れてしまったとも言えよう。昨年、本社が危惧した通りである。改めてエビデンスがそろった今、年次計画だけでも修正する必要がある。検討会議には今後とも前向きな論議を期待したい。

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