« 12年度概算〈1〉 定数改善に満額回答を | トップページ | 12年度概算〈2〉 今度こそ「高校版就学援助」を »

2011年10月15日 (土)

教育基本条例案 教委制度を問う場は「地方」ではない

 「大阪維新の会」が提案している教育基本条例案について、先の社説では派生的な問題点を指摘するにとどめた。しかし同会を率いる橋下徹大阪府知事の求めに応じて府教育委員が対案を作成する姿勢を示したとあっては、本社としても正面から論じなければなるまい。

 個々の条文の問題点について、挙げればきりはない。しかし条例案の「キモ」は橋下知事自身が強調しているように、教育委員会制度を根底から覆すことだ。「民意」を反映させるという御旗の下、「政治の関与」によって教委を名実共に知事の下位に置くことを目指している。

 現行の教委制度が妥当かどうかは、さまざまな議論があろう。教育委員の任命制にしても、公選制の修正という歴史的経緯があってのことである。地方の立場として制度に根本的な疑問を呈することは、むしろ積極的にあっていい。

 しかし一地方議会の条例によって「覆す」ことができるかどうかは、別である。教委制度は、あくまで国の法律によって定められたものだ。その制度を改める場は国会であって、地方議会ではない。

 条例案は地方教育行政法の規定を根拠として、条例を定めれば政治が教育行政に「関与」できることが「明らかに予定されている」と主張する。しかし教育法令の第一人者である元文部官僚の菱村幸彦氏が指摘するように、条例は「法令に反しない限りにおいて」(地方自治法第14条)制定できるものだ(時事通信『内外教育』9月30日付)。条例案のキモ自体、無効になる恐れがある。

 「維新の会」が多数を占める府議会では条例案が成立する可能性が高いから、対案によって少しでも問題点を解消したいという気持ちは分からなくもない。知事から任命され、政治的中立を保たなければならない教育委員や、府政の一端を担う事務局職員の立場も理解できる。しかし、それこそ橋下知事や「維新の会」の思うツボだ。条例案の修正に手を貸すことは、違法な条例の成立に加担することになる。

 妥当性や影響力を無視して最も過激な方針を示し、反応を見ながら押したり引いたりするのは橋下知事の常とう手段である。そのようなケンカ政治に、まともに付き合う必要はない。

 府民にも冷静な対応を呼び掛けたい。橋下知事は公立学校や教育行政に対する不信感をあおるだけあおって、府民への共感と支持を訴えている。しかしそれは、自らの不信を「民意」に置き換えているだけだ。橋下知事を当選させたのが「民意」であることは確かだが、知事に全て白紙委任したわけではなかろう。間違っても、橋下知事の好き嫌いで決めてはいけない。

 公教育への不信感をテコに改革を迫る橋下知事の手法は、小泉構造改革路線や安倍教育再生路線と同じだ。しかし小泉・安倍改革で、いったい公教育がどう良くなったというのか。明らかにマイナスの方が大きかった、と断じざるを得ない。そのようにして進められる橋下教育改革が教育現場にどう作用するかは、言うまでもない。

 国が定めた制度を変えようとするなら、国政に打って出るのが筋だろう。それなのに、「大阪都構想」があるからといって大阪市長に「降りる」というのは、何とも解せない。万事がそのような橋下手法のおかしさに、府民も気付くべきだろう。

 

にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へ

 ↑ランキングに参加しています。奇特な方はクリックしていただけると、本社が喜びます

|

« 12年度概算〈1〉 定数改善に満額回答を | トップページ | 12年度概算〈2〉 今度こそ「高校版就学援助」を »

社説」カテゴリの記事

コメント

 しょうです。
 ご無沙汰しています。
 ご指摘の点、全くそのとおりだと思います。
 拙ブログ記事「教育基本条例案への諸意見」にリンクさせていただきました。
 事後承諾で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

投稿: しょう | 2011年11月 1日 (火) 22時57分

しょうさん、こちらこそありがとうございます。
条例案の問題点は、さまざまな立場からさまざまな観点で論じられることが民主主義にとっても重要なように思います。大阪には土地カンがないので滅多なことは言えないのですが、喫緊の課題はグローバル化より貧困・格差の解消ではないか、とも推測します。その点でも今後のしょうさんのご発言に期待しております。私も改めて稿を起こすつもりです。

投稿: 本社 | 2011年11月 3日 (木) 09時15分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/506419/52994794

この記事へのトラックバック一覧です: 教育基本条例案 教委制度を問う場は「地方」ではない:

« 12年度概算〈1〉 定数改善に満額回答を | トップページ | 12年度概算〈2〉 今度こそ「高校版就学援助」を »