「終焉」した大学入試に対応が急務だ
受験シーズンのさなかに、刺激的なタイトルの本が出た。『大学入試の終焉―高大接続テストによる再生』(北海道大学出版会)だ。
著者の佐々木隆生・北星学園大学教授(経済学)は、前任の北大時代に文部科学省の委託を受けた「高大接続テスト(仮称)」に関する調査研究委員会の研究代表を務めた。本書は同委員会の協議・研究を踏まえたもので、趣旨も基本的に同じなのだが、著者個人の見解であるだけに報告書より明快に論じられている。
実はタイトルや帯の「時代にあわない落第入試はもういらない!」に比べると、本文の表現は穏当だ。しかし穏当なだけに、具体的な事実に基づく論述が迫力を持つ。高校・大学のみならず全ての教育関係者は、タイトルなどに表現された危機感を持って本書を真摯(しんし)に読むべきだろう。
佐々木教授は「高大関係者が一致する高大接続テストの構想を打ち出した」(「はじめに」)と胸を張る。しかし報告書が出てから1年以上が経過しても、関係者に危機感が共有されているとはとても言えない。
高大接続テストの検討は大学入試センターに引き継がれたことになっているが、「逆に言えば本省ではやらない」との解説さえ文科官僚から漏れ伝わる。高校関係者の多くも報告書が提起した問題意識は受け止めながら、大学入試センター試験をはじめとした現行の大学入試に大きな変更がない範囲内でなら高大接続テストを許容する、というのが本音だ。委員会での論議とは裏腹に、いまだテスト創設の機運は盛り上がらない。
高大接続テストやセンター試験をはじめとした大学入試の改革については以前に論じたので繰り返さないが、今のような入試体制を続けていては「知識基盤社会」に対応することなどできないことは、重ねて強調しておきたい。
「あとがき」によると、本書は昨年7月末までに書かれている。「従来の試験・テストは…会場や監督員の手配をはじめ莫大なコストを要するという弱点を持っています」(第3章)という指摘は、今年1月に起こったセンター試験のトラブルを予兆させるものではなかったか。
「秋入学」のように東大が率先してセンター試験からの離脱を打ち出すくらいの英断をしなければ、世の中は動かないのだろうか。「『改革の意思決定が遅い』という現象を教育の分野では見たくないものです」(第4章)という佐々木教授の控えめな問い掛けを、関係者は深刻に受け止めなければならない。
【過去の社説】
・高大接続テスト 先送りでも済まない「全入時代」の入学者選抜
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