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2012年10月

2012年10月 9日 (火)

惜しまれるメンタルヘルス報告

 惜しい。実に惜しまれる。文部科学省の「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」報告(中間まとめ)のことである。

 報告では「教職員のメンタルヘルス不調の背景等」として、3ページにわたってまとめられている。いずれも箇条書きの簡単なもので、無味乾燥な印象すら感じられる。しかし実際の論議では委員の外部専門家から、教職という仕事の特殊性、そしてその近年の困難性に極めて共感的な立場からの指摘が相次いでいた。箇条書きの行間には、そうした同情があふれていると読むべきである。

 複雑な要因が絡み合っている現状を一気に変えることは難しいが、少なくとも現場の教員が相当な困難を抱えていることはアピールできるのではないか――。当初の議論を聞きながら、そんな期待を持ったものだ。しかし結果的には、お役所的なまとめに収まってしまった。

 人選の限界もあったろう。毎回、遅い時間の開催にもかかわらず中身の濃い議論が展開されたことには敬意を表するが、委員わずか8人のうち6人がスクールカウンセラーも含めた外部専門家で、教育関係者は2人だけ。的確な課題が指摘されながら、生の現場レベルにまで落とし込まれていかなかったため、報告が一般論、建前論に終始せざるを得なかった。

 長引く景気低迷の世相を背景に、公務員、とりわけ教員に厳しい目が向けられている。いわゆる「ゆとり教育」批判以来の小泉構造改革と安倍教育再生路線が、そうした風潮にさおさし、定着させた。いくら多忙化を主張しても、「民間だって厳しいんだ」「それでも高い給料をもらっているんだろう」と反論されるだけである。

 しかし「行間」にあふれているように、感情労働の代表的職種の一つである教職には、必然的にストレスの種が内在している。そのこと自体、あまり気付かれてこなかったのではないか。さらに問題は、学校を取り巻く環境の変化や現場の実態を考慮しない教育改革の積み重ねにより、どこでも、いつでもストレスが爆発しておかしくない状況が広がってしまっていることだ。

 精神疾患による病気休職者の割合は10年で3倍に増加し、今や在職者の167人に1人だ。急増がちょうど「信頼される学校づくり」の改革が始まった頃からと符合するように見えるのは、気のせいだろうか。直近3年間の病気休職者数は横ばい傾向だが、現場を眺める感触からすれば今後、減少に向かうとはとても思えない。

 そんな中で提言の意義は、強調してもし過ぎることはない。最大の眼目は、復職支援だ。逆に言えば、これまで復職プログラムがきちんと整備されていなかったこと自体、民間企業からすれば驚きだという。曖昧な復職支援をして再発した場合「裁判で負けますよ」という委員の発言を、真剣に受け止めるべきだ。

 今後10年、年齢構成のひずみは依然続く。報告にある「良好な職場環境・雰囲気」の前提自体が崩れつつある。果たして「ラインによるケア」だけでカバーできるのか。休職者の代替教員の定数化や、校医とは別の産業医の整備も今後の課題だろう。

 まだまだ深めるべきことは、たくさんある。総力を挙げて、教育界内外の大きな議論に発展させるべきだ。報告は、あくまでそのきっかけだと捉えたい。 

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2012年10月 7日 (日)

【池上鐘音】「日本固有」の領土

▼北海道出身者にも、一部地域を除いてアイヌ文化は必ずしも親しいものではない。むしろ無知・無理解からくる差別・偏見が根強く残っていると言ってもよかろう。少なくとも「現代化」学習指導要領(1968~70改訂)で育ってきた者にとって学校での学習機会といえば小学校4年の時、開拓史などと同列で学んだだけだ▼そんな状態だから、東京・有楽町で開催された「アイヌ文化フェスティバル」(アイヌ文化振興・研究推進機構主催)の佐々木史郎・国立民族学博物館教授の講演には多くを教わった。もっとも北方世界全体の中ではアイヌが最も「南」に位置するということは、和人(日本人)の立場からはなかなか気付きにくい▼アイヌは居住地によって北海道アイヌ、樺太アイヌ、千島アイヌに分類され、北海道アイヌはエトロフ島を東の極限とするという。だから1875年の樺太・千島交換条約でウルップ島との間に国境線が引かれたのも理由のないことではない。しかし、その国境のせいで樺太アイヌは宗谷を経て札幌近郊の対雁(ついしかり=現江別市)に、千島アイヌは色丹島に強制移住させられ、慣れない環境に多くの犠牲者を出した▼北に南に、領土問題がかまびすしい。飛び交うのは「我が国固有」という主張だ。しかし以前にも書いたように、国がなければ国境もない。「国」が進出してくる前、人々は自由に移動できた。佐々木教授は「北方領土問題は国同士の問題だけでなく、先住民族アイヌの問題を忘れてはいけない」と述べて講演を締めくくった。

〔過去記事〕

http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post_cb5f.html

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2012年10月 5日 (金)

【社告】

 本日朝、某民放キー局(7月とは別の局)のニュース番組に本社論説委員のコメントが使われるとの噂があります。たまたまご覧になった方は、笑って無視していただければ幸いです。

 業界関係者の方へ。「見たよ」というご連絡は無用です。

【事後報告】テレビ朝日『やじうまテレビ!』「東大異変!!秋入学密着」VTR出演

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2012年10月 2日 (火)

【池上鐘音】父娘の特別法

▼教員免許取得希望者に社会福祉施設などでのボランティアを義務付ける「介護等体験特例法」が制定されて15年がたつが、いまだに「介護」体験に関する芳しくない話をよく聞く。「等」に当たる特別支援学校での体験は好評なのに▼肝心の教育実習でさえ、中教審答申が「実習公害」の是正を求める現状にある。教職とは直接関係のない体験に身を入れさせるには、相当な事前指導が必要だろう。しかし教職課程は手一杯で、だからこそ修士レベル化が必要だという提言も出ている▼何も介護等体験を廃止せよと言っているわけではない。教員養成カリキュラムの抜本的な改革が伴ってこそ、介護等体験も生きよう。中教審の部会論議では「学部段階は教職に対する『覚悟』だけ迫れば十分」という主張が最もリアリティーがあったように感じたが、残念ながら答申には反映されなかった▼介護等体験特例法は田中真紀子氏が父・角栄元首相の介護をした経験を踏まえて、議員立法で成立させたものだ。その真紀子氏が、文部科学相になった▼就任会見で田中文科相は、政治家としてのモットーに「現場第一主義」を挙げた。ぜひとも文教行政の現場を広く見渡して、政策決定を行ってもらいたい▼時には乱暴とも思えるような大胆な判断も必要だろう。教員人材確保法が典型ではないか。わずか3条と附則の、教員給与を一般公務員より優遇すると定めるだけの特別措置法だが、高等小学校出を自任していた当時の田中首相が、教師に対する尊敬の念から成立させたという▼官僚と対立した外相時代の反省を肝に銘じているという真紀子文科相のことである。大胆さと緻密さのバランスが取れた時、父のように教育史に名を残すことができよう。もっとも「近いうち解散」を抱える野田内閣の閣僚として、残された時間は少ないが。

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