惜しまれるメンタルヘルス報告
惜しい。実に惜しまれる。文部科学省の「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」報告(中間まとめ)のことである。
報告では「教職員のメンタルヘルス不調の背景等」として、3ページにわたってまとめられている。いずれも箇条書きの簡単なもので、無味乾燥な印象すら感じられる。しかし実際の論議では委員の外部専門家から、教職という仕事の特殊性、そしてその近年の困難性に極めて共感的な立場からの指摘が相次いでいた。箇条書きの行間には、そうした同情があふれていると読むべきである。
複雑な要因が絡み合っている現状を一気に変えることは難しいが、少なくとも現場の教員が相当な困難を抱えていることはアピールできるのではないか――。当初の議論を聞きながら、そんな期待を持ったものだ。しかし結果的には、お役所的なまとめに収まってしまった。
人選の限界もあったろう。毎回、遅い時間の開催にもかかわらず中身の濃い議論が展開されたことには敬意を表するが、委員わずか8人のうち6人がスクールカウンセラーも含めた外部専門家で、教育関係者は2人だけ。的確な課題が指摘されながら、生の現場レベルにまで落とし込まれていかなかったため、報告が一般論、建前論に終始せざるを得なかった。
長引く景気低迷の世相を背景に、公務員、とりわけ教員に厳しい目が向けられている。いわゆる「ゆとり教育」批判以来の小泉構造改革と安倍教育再生路線が、そうした風潮にさおさし、定着させた。いくら多忙化を主張しても、「民間だって厳しいんだ」「それでも高い給料をもらっているんだろう」と反論されるだけである。
しかし「行間」にあふれているように、感情労働の代表的職種の一つである教職には、必然的にストレスの種が内在している。そのこと自体、あまり気付かれてこなかったのではないか。さらに問題は、学校を取り巻く環境の変化や現場の実態を考慮しない教育改革の積み重ねにより、どこでも、いつでもストレスが爆発しておかしくない状況が広がってしまっていることだ。
精神疾患による病気休職者の割合は10年で3倍に増加し、今や在職者の167人に1人だ。急増がちょうど「信頼される学校づくり」の改革が始まった頃からと符合するように見えるのは、気のせいだろうか。直近3年間の病気休職者数は横ばい傾向だが、現場を眺める感触からすれば今後、減少に向かうとはとても思えない。
そんな中で提言の意義は、強調してもし過ぎることはない。最大の眼目は、復職支援だ。逆に言えば、これまで復職プログラムがきちんと整備されていなかったこと自体、民間企業からすれば驚きだという。曖昧な復職支援をして再発した場合「裁判で負けますよ」という委員の発言を、真剣に受け止めるべきだ。
今後10年、年齢構成のひずみは依然続く。報告にある「良好な職場環境・雰囲気」の前提自体が崩れつつある。果たして「ラインによるケア」だけでカバーできるのか。休職者の代替教員の定数化や、校医とは別の産業医の整備も今後の課題だろう。
まだまだ深めるべきことは、たくさんある。総力を挙げて、教育界内外の大きな議論に発展させるべきだ。報告は、あくまでそのきっかけだと捉えたい。
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