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2012年12月 8日 (土)

総選挙公約〈2〉維新 「教育ポピュリズム」が心配だ

  「日本維新の会」は石原慎太郎・前東京都知事らと、橋下徹・大阪市長が率いる「大阪維新の会」が、総選挙直前に合流してできた。「大同団結」を優先したため両者がどう整合性を図るのか、よく分からない。ただ、石原氏は世間で言われているほど東京都の教育改革を主導したわけではない。現時点では橋下教育改革路線と同義とみていいだろう。事実、公約の各論「維新八策」には「大阪府・市の教育関連条例をさらに発展、法制化」という文言すらある。

 「世界水準の教育復活へ」という維新八策の教育改革策に付けられたサブタイトルに、同調する人は多いのではないか。しかし、待ってほしい。「復活」という言葉には、以前は世界水準だったのに今や没落している、という認識が含まれている。安倍晋三自民党総裁の「教育再生」も同じ発想だ。本社がそれと異なる認識に立っていることは、本社説の読者ならご理解いただけよう。

  「教育行政機関主導から生徒・保護者主導へ」という文言にも、賛同する人は多いだろう。ただし、その意味するところは学校選択制にみられるように、生徒・保護者を「消費者」と見なし、ニーズに応じた教育サービスを提供すればいい、という市場原理の導入である。教育バウチャー(クーポン)の導入は、新自由主義的教育政策の典型例と言っていい。

 「基礎学力を底上げしグローバル人材を育成」するというのに反対する人は少なかろう。そのために「悪しき平等・画一主義から脱却し、理解ができない子どもには徹底的にサポートし、理解できる子どもはぐんぐん伸ばす」というのも文部科学省の既定路線と矛盾しないかのように思えるが、橋下氏の言動から類推すれば、個別指導と競争の徹底でこそ学力が伸ばせるという考えの表明に他ならない。そこには、小さな社会集団の中で子どもを成長させるという「学校」の発想が欠けている。

 「教員は幅広い学部出身者と社会人から実力重視で採用」するというのにも注意が必要だ。そこでいう「実力」とは何なのか。確かに知識・理解の学習指導面なら学校の教師以上に優秀な塾講師などもいようが、児童・青年の発達やカリキュラム編成に関する基本的な理解など専門性の素養に欠ける者を大量に採用しては、現職研修に多量のコストが掛かることは必定だ。もっとも、そんなことさえ想定していないのかもしれないが。

 もちろん「教員を雑務から解放し教育に専念させる」「障がい者教育の充実」「大学入試改革を通じた教育改革」など、それだけを取り出せば評価すべき方針も並んでいる。ただ、具体的な政策展開を大阪の前例から類推することは難しい。「格差を世代間で固定化させないために、世界最高水準の教育を限りなく無償で提供する」という枠組みにも大賛成だが、それが大阪で行われたように「生徒・保護者による公公間、公私間学校選択の保障」(基本方針)にとどまったのでは意味がない。

 最初に暴論を打ち出して後から譲歩する橋下流ケンカ術からすれば、弁護士出身者らしく交渉の余地もあるのだろう。ただ、もともとの発想が新自由主義・市場原理である以上、教育政策論議に難儀を余儀なくされることは大阪での推移を振り返れば明らかだ。

 それでも、維新の会および橋下氏に共感する人は多いだろう。絶対的な世論を味方に自らの主張を実現していくのが、橋下氏の流儀である。本社の論説対象である教育政策に限っても、教育面でのポピュリズム(大衆迎合主義)が一層進むことを懸念する。公教育のレイマンコントロール(素人による統制)は重要だが、教育現場の困難は決して素人考えで解決できるものではない。

 保護者・子どもの「自由」を掲げながら教育の「統制」ばかりが目立つようでは、現場の息苦しさが増すばかりか士気を下げ、効果も上がらないという悪循環につながりかねない。「クソ○○」などと激しい教育界批判を繰り返してきた橋下氏の言動や、東京都で「教育の破壊的改革」をやり残したという石原氏の姿勢を思えば、期待よりも不安ばかりが募る。

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コメント

こんにちは。不適切な発言であればご容赦を下さい。
選挙戦たけなわですね!!皆さんは今回の選挙どの様なご判断をなされてられますか。
私なりには今回の選挙、開国か鎖国かの国民投票(知ってなくとも)と思っています。
TPP参加=開国、TPP不参加=鎖国とも言えるのではないでしょうか。
民主自民とさわがれていますが、問題視する所この一点!開国か鎖国かの判断であるという事を是非考えて下さい!!
宜しくお願いを致します。頑張りましょう!!
有難う御座いました。

投稿: RALLY NEW WAVE | 2012年12月10日 (月) 22時27分

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