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2012年12月 5日 (水)

総選挙公約〈1〉自民 本当に「できること」なのか

 義務教育費国庫負担金の国100%負担、幼児教育の無償化、給食費の無償化、給付型奨学金の創設、私学における低所得者の授業料無償化、私学助成2分の1を目標に大幅拡充――。自民党の政権公約には、学校関係者にとっても保護者にとっても素晴らしい項目が並んでいる。

 結構なことだ。安倍晋三総裁も「できることしか書いていない」と繰り返し強調している。政権を取ったら、ぜひ実行してもらいたい。本当にできるのならば。

 教育などの政策の冒頭には「恒久的な財源を確保し、OECD諸国並み(5%)の公教育支出を目指します」とある。同様の文言は2009年の総選挙公約にもあった。

 野党党首でありながら、その発言力だけで株価も円相場も好転させられる安倍総裁のことである。3年前よりパワーアップした経済政策を実行するというのだから、財源確保にも自信があるのだろう。

 ところで、この中には財政出動が急務でありながら、抜け落ちているものがある。特別支援教育だ。もっとも児童・生徒数がいくら急増しても、それに対応して施設設備や教職員定数は自然増となるものだから、あえて書くまでもなかったのかもしれない。しかし安倍首相の在任時に「特殊教育」から移行した際には予算措置がほとんどなされなかったことを考えれば、「きめ細やかで適切な特別支援教育」という文言がむなしく響く。

 安倍総裁は、民主党政権に対してバラマキ批判を繰り返してきた。しかし幼児教育の無償化や私学助成の拡充など、支持団体向けのバラマキ宣言に思えてしまうのは勘繰り過ぎだろうか。

 それでも実現できるなら、バラマキも結構なことである。ただし政権交代前の自民党は、教職員定数改善計画の策定案さえ打ち出せなかった。本当に信じてよいのか。

 「平成の学制大改革」と称する6・3・3・4制の見直しにしても、相当な財政支出を伴おう。ここは「検討」で逃げているから予算措置は先送りでいいのだろうが、どうにも抽象論先行の疑念が拭えない。

 威勢のいい公約を並べ立て、財源がなければ「できませんでした」では、さんざん批判してきた民主党政権の轍(てつ)を踏むだけだ。学校現場にとって益にならない「できること」だけつまみ食いされては、たまらない。

 いじめ対策がその一例だろう。法律や条例を制定すれば無くなるものなら、こんなに簡単なことはない。「加害者にも、被害者にも、傍観者にもしない教育を実現します」というのは、いじめの発生自体を無くすということである。実態の深刻さに思いを致せば、選挙民向けの言葉にしても軽すぎやしないか。道徳教育の徹底で実効性があると本気で考えているなら、認識が甘いと言わざるを得ない。

 公約でも掲げる「教育再生」が現場の困難を打開するものにならないであろうことは、先の社説で示した通りである。安倍総裁は既に首相になったかのような意気込みだし、その下で既に文部科学相になったつもりの議員もいるようだが、かつての安倍内閣のようなところに政権を戻すのでは教育現場にとって不幸である。

    ◇

 主要政党の選挙公約をシリーズで論じていきます。

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コメント

 コメント欄ではお久しぶりです。
 ともすれば、マスコミの生み出す雰囲気に流されがちな(国民の)傾向を感じますが、上記記事のように公約を客観的に検討・分析することは本当に大切だと思います。

 応援して戻ります。

投稿: しょう | 2012年12月 6日 (木) 04時21分

しょうさん、いつもありがとうございます。
教育論を展開するに当たっては何より現場の地道な努力を支援することが肝要と心得ています(その点でもしょうさんのブログ活動に敬意をもって拝見し、応援させていただいております)。個人的な思想信条は抑えつつ(苦笑)、今後とも建設的な分析、提言を行っていく所存です。ご期待ください。

投稿: 本社論説 | 2012年12月 6日 (木) 09時38分

こんにちは。
出来ると言ってもするでは無い。もしも大きな中部地震が近く起きればどうするのか。311以前は自民はグローバル強化を前面に打ち出していたが311以降は口に出来ないほど強引でした。
セーフティーネットの充足が国家基盤であるのにグローバリぜーションとはゲーム性も無い。
売国といってさわいでいる人も或る意味正しい。

投稿: RALLY NEW WAVE | 2012年12月 7日 (金) 23時11分

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