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2012年12月22日 (土)

民主党政権の教育政策 旧自公より前進した

 総選挙で圧勝した自民党の安倍晋三総裁は、総理就任に向けて早くも着々と準備を始めている。教育政策についてはまだ明確に見えてきていないが、17日の記者会見では「6年前に教育再生をスタートしたが、この3年間で後戻りした」と民主党政権を批判していた。しかし、安倍総裁に批判されるほど問題のある政策が続いていたのか。新政権の発足前に、あえて検証しておきたい。

 まず、その3年前から振り返ってみよう。自公政権下の2009年8月に提出された10年度概算要求では、教職員定数の改善5500人が盛り込まれていた。しかし特別支援教育分が約2000人を占めていたとはいえ、2500人と半数近くは主幹教諭の増に充てられていた。

 政権交代を果たした民主連立政権はすぐ概算要求を組み換え、主幹教諭分を約2000人削って理数教科の少人数指導充実に振り向けた。予算編成では定数増全体が4200人に圧縮されたものの、少人数指導分は要求通り実現した。主幹教諭分はゼロ査定となったが、どちらを優先するかに政権の違いが現れたといえよう。

 10年8月には8カ年の「新・教職員定数改善計画案」を打ち出し、11年度概算要求に初年度分として小学校1・2年生の35人学級化を盛り込んだ。実際に法定化できたのは小学校1年生分だけで、しかも従来の加配定数分を回すという小規模校には逆にマイナスとなる結果に終わった。12年度も加配措置で2年生の実質的な35人以下学級は実現したものの、法改正は見送られた。13年度概算要求では先の計画案を仕切り直した5カ年の「新たな教職員定数改善計画案」の策定を目指すが、教育改革の「第2フェーズ」で掲げていた教職員の数の充実が順当に行かなかったことは否定できない。

 しかし、かつての自公政権下では06年度予算で第8次定数改善計画が「幻」となって以来、概算要求さえできない状態が続いていた。それから比べれば、不十分ながら現場にとっては一歩前進だった。

 教員免許更新制が廃止されなかったことも、3年前に民主党を支援し投票した教職員にとっては不満だろう。教員免許の修士レベル化とセットで「10年後」の課題に先送りしたことは以前の社説で批判した通りだが、半面では民主党政権が行政の継続性を尊重した結果でもある。改正教育基本法・学校教育法や新学習指導要領に基づく指導行政に関しても、それが言える。

 今後の焦点になるのは高校授業料の無償化だが、民主党が総選挙前に検証したように高校中退者数の半減に寄与したことは疑いがない。野党自民党はこれを「バラマキ」と批判したが、無償化には妥当性があることも既に指摘した。

 何より文教関係予算を政権交代前より1割近く増額させたことは、高く評価されてよかろう。その中で初等中等教育はもとより高等教育も経常費を中心に増額し、奨学金の充実も図った。

 民主党の教育政策を「日教組の言いなり」と思い込んでいる人が少なくないが、実態は「スズカン」こと鈴木寛・元文部科学副大臣が自らの構想の下に主導したものである。以前の社説から一部には本社がスズカンを嫌っているという誤解もあるようだが、かつての配信記事でも触れたように氏の構想力には素直に敬服するし、実は高く評価している。少なくとも右ブレと官僚任せの自民党文教族より、よほど期待できる。

 問題はそれがスズカン氏一人の頭の中だけにとどまっていて、十分な説明も実現もしなかったことだ。もし次に民主党が政権を取り戻したあかつきには、ぜひ文科相となって説明責任と実行責任を果たしてもらいたい。その時まで民主党が存在し、スズカン氏が在籍していればの話だが。

 詰まるところ民主党政権の教育政策は、旧自公政権下の閉塞(へいそく)状況を打破し、学校現場のために前進させる契機をつくった役割だけは果たしたと評価できる。批判されるべきは、その不徹底ぶりである。

 安倍総裁は、既に外交面などで堅実な政権運営を行う姿勢をみせている。ぜひ教育政策でも、そうあってほしい。「6年前」に戻すだけでは、現場の困難をさらに深めるだけである。

【関連本社配信記事】

 教育時事 見方・読み方 「すずかん副大臣の“構想力”に注目」(ジアース教育新社『SYNAPSE』2010年11月号

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