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2013年1月 2日 (水)

「21世紀型スキル」重視に備えを

 昨年末から今年にかけての教育界の焦点は、表面的に見れば政権交代に伴う教育政策がどうなるかにある。しかしその陰で政権がどう変わろうとも避けられない課題があり、改革に向けた種も既に昨年中にまかれている。

 総選挙を直前に控えた先月半ば、文部科学省は「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」を発足させた、この長い名前で何を検討する会なのか、ぴんとくる人は少ないだろう。

 一般傍聴者にも公開される公式の会議とはいえ、いわゆる初等中等教育局長の私的諮問機関という位置付けである。しかも当初段階では何が打ち出されるか全く不透明だし、当然ニュースにもならない。この検討会の発足を極めて重要な動きだと思うのは、本社だけであろうか。

 文科省事務局が示した「主な検討の視点等」では、検討会設置の趣旨として「育成すべき資質・能力の構造を明らかにした上で、それを実現するための具体的な教育目標、指導内容などの教育課程と学習評価を一体的に捉え、その改善に向けての基礎的な資料等を得るため」と説明している。これでも、ぴんとくる人は多くないだろう。

 大胆に解釈しよう。検討会の発足は、学習指導要領の次期改訂に向けた準備作業の実質的なスタートである。そこでは幼稚園から大学・大学院までをも一貫した資質・能力育成の系統化が図られ、「教科主義」さえ克服するような目標・内容の示し方が打ち出されるかもしれない。そして、教科の枠を超えた「21世紀型スキル」の育成重視は、改訂を待たずに現行指導要領の下でも求められることになる――。 

 絵空事だと思われるだろうか。あるいは「また○○力が加わるのか」と拒否感さえ抱かれるだろうか。しかし、そうした固定観念こそ転換を求められていることに学校現場も自覚する必要があろう。

 21世紀型スキルは、決して新しく提言するものではない。少なくとも文科省は、そう説明しようとしている。すなわち改正学校教育法で盛り込まれた「学力の3要素」であり、現行指導要領にも反映されている。「学士力」や「社会人基礎力」とも軌を一にするものだ。何より経済協力開発機構(OECD)が提唱する「キー・コンピテンシー」(主要能力)に対応するものであり、「生きる力」はそれを先取りしたものだ、と。実際、自治体や学校レベルで「21世紀型スキルの育成」を打ち出すところも少なくない。

 昨年夏、国立教育政策研究所が注目すべき報告書をまとめていた。「社会の変化に対応する資質や能力を育成する教育課程―研究開発事例分析等からの示唆」だ。まだ研究途上であるが、今後求められる資質や能力を明らかにした上で、「21世紀型の教育課程の在り方」を探ろうとしている。

 カリキュラムの大胆な再構成への準備は、着々と進んでいる。そして、それを「教育目標、指導内容、学習評価を一体的に捉え」(「主な検討の視点等」)る形で示そうとしている。当然、学校現場には具体的な指導計画の策定と、実践レベルに落とし込むことが迫られることになる。

 こうした流れには、いわゆる「学力向上」の枠組みでは決して対応し切れない。教科主義に凝り固まった考えも、いよいよ捨てなければならなくなる。ましてや、いまだに「ゆとり」か「脱ゆとり」かで物事を見ていては理解することすらできないだろう。

 もう一つ注目しているのが、中央教育審議会の高大接続特別部会の動きである。昨年6月の「大学改革実行プラン」が提言した「意欲・能力・適性等の多面的的・総合的な評価」に対する回答が、今年中にも出されようとしている。よく「大学入試が変わらないと教育は変わらない」と言われるが、大学入試そのものが現実的に変わろうとしているのだ。

 外堀は着々と埋められつつある。そのことに対して、学校現場の側からも実践者の立場から積極的な提言が求められる。新しい時代の教育に向かって、専門性を向上させることも不可欠だ。そのための要求は、むしろ強力にしていくべきだろう。建設的な批判は重要だが、単なる拒否反応ばかりでは専門職としての矜持(きょうじ)が疑われよう。

 新年早々から、寝ぼけた初夢のような話で恐縮である。それでも表面的な事象の底流に何があるのかをしっかり見据えた上で、今年も論説を展開していきたい。

【関連本社配信記事】
・「将来の授業、社会で役立つ「スキル」重視に!?」(ベネッセ教育情報サイト・教育動向)

http://benesse.jp/blog/20120823/p3.html
※今後、配信記事アップ予定。

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コメント

こんにちは。宜しくお願いを致します!教育目的を見る限りではゆとり教育に突入する以前の専らな教育者の願望が漸く!実現に向かっていると安直にはそうですが、深層ではハイブリッドな「和」が幾らでも幅をきかせる事が出来る構図を脱せてないと云うか収まってしまう事なのかも知れません。何故政治が経済を急ぐのかは部分では教育理念の行き止まりを見ているからかも知れないですね!

投稿: RALLY NEW WAVE | 2013年1月12日 (土) 16時31分

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