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2013年7月23日 (火)

「21世紀型能力」に今から照準を

 国立教育政策研究所(国研)が「21世紀型能力」の育成を提案した――。こう聞いて、「また〇〇力か、もうたくさんだ」と思うだろうか。いや、むしろ80項目とも100項目とも言われるまでに増殖したナントカ力やナントカ教育を整理し、未来に向けて子どもと社会の可能性を広げるための提案だと捉えたい。

 21世紀型能力の試案は、6月末の文部科学省「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」に報告された。先週やっと国研や文科省のホームページ(HP)に報告書原文やプレゼンテーション資料がアップされたし、本社記事も配信されたので参照してほしい。

 国研の説明によると21世紀型能力は、経済協力開発機構(OECD)の「キーコンピテンシー(主要能力)」、インテルやマイクロソフトなどが主導する国際プロジェクトACT21Sの「21世紀型スキル」という二大潮流を受けて主要各国で進められている「コンピテンシーに基づく教育課程改革」への、日本独自の対応だという。

 21世紀を生き抜く力を持った日本人に求められる能力を「思考力」「基礎力」「実践力」の観点で再構成しており、とりわけ思考力をその中核に位置付けている。思考力は基礎力によって支えられ、その使い方は実践力によって方向付けられる、というわけだ。

 ただし、これまでの教科・領域を大幅に再編・統合することを求めるものではない。教科内容の豊富な学習経験を通してこそ、求められる資質・能力が育成されるのだという。

 提言で注意したいのは、人間関係を大切にしながら集団で協力して課題を解決する心性という「日本の強み」を生かすこと、そして、近年の教育政策や伝統を踏まえるということだ。時流に乗って全く新しいものを「輸入」するわけではない。

 もちろん試案というだけあって、これが完成形ではない。研究は、2013年度までの5カ年計画で行われている途上である。報告のあった文科省検討会でも、委員から内容に対する意見や異論が多数挙がった。本当に「日本型」になっているのか、そもそも世界的潮流を絶対視するばかりでいいのか、疑問視する向きもある。

 だからこそ今回の報告書を基に、研究者のみならず実践者をも巻き込んだ広範な議論による深まりを期待したい。関係者のオープンな熟議によってこそ、「上から降ってくる」のではないミドルアップダウン型のカリキュラム開発が成し遂げられよう。

 それは必ずしも学習指導要領の次期改訂に向けた準備作業にとどまらない。いまだ曖昧模糊とした「生きる力」ないしは「生き抜く力」を具体的にどう育成すればいいのかを考える上でも、大いに参考になろう。というより、その実践的模索の延長線上にこそ21世紀型能力の具体像が見えてこようし、教科至上主義からの脱却も図れるだろう。

 第一に考えなければいけないのは、これからの予測不能な社会に出ていく子どもたち一人一人が個性を発揮して最大限に活躍できるような力を付けさせることである。学校という限られた時期の議論や「世界トップレベルの学力」といったランキング的発想からは、一刻も早く脱却しなければならない。

【関連社説】
「21世紀型スキル」重視に備えを(2013.1.2)

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