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2013年10月17日 (木)

「道徳の教科化」はコンピテンシー改革と一体で

 文部科学省の有識者会議「道徳教育の充実に関する懇談会」が17日に開かれ、「特別の教科 道徳(仮)」を創設することが提案された。11月から議論が本格化する報告文に反映されそうな気配である。教育課程の編成基準に抜本的な改革が求められている中、政権の意向とはいえ個別の教科・領域等だけを取り出した拙速な改訂論議は避けるべきだ。

 この日の主な議題は「教材・教科書の取扱い」「新たな枠組みによる教科化」の2本柱。前半で教科書や「心のノート」の扱いについて賛否両論が交わされたものの、座長の鳥居康彦・慶応義塾学事顧問(元中教審会長)が「考えてみると、どういう科目(教科)を作るかを先に議論した方がよかったかも」とつぶやきながら後半に移ると、銭谷真美・東京国立博物館長(元文部科学事務次官)、押谷由夫・昭和女子大学教授(元文科省教科調査官)の両副座長が相次いで発言し、事務局案を支持。流れを決定付けたとみてよかろう。

 本社はむしろ、中村哲・関西学院大学教授の発言に注目したい。中村教授は学校現場でも取り組めるよう、次期学習指導要領の改訂に向けてコア(核)になる統合カリキュラムのような形で「人間科」といった新領域を検討することを提案した。

 文科省の有識者検討会や国立教育政策研究所(国研)が次期改訂の準備作業として「コンピテンシーに基づく教育課程改革」の検討に踏み込んでいることは、以前取り上げた通りだ。ただし国研が道徳性(心)も含めてスキル全体を構造化しようとしているのに対して、検討会座長の安彦忠彦・神奈川大学特別招聘教授は学力(知)を働かせるものとして人格(道徳性)を外に置くよう主張するなど「21世紀型能力」をどう体系付けるかは今後の検討・研究を待たねばならない。

 いずれにせよ、知的基盤社会ないしグローバル社会に向けて大胆な改革は避けられない。まさに「カリキュラム論の新たなアイデア」(中村教授)が求められよう。そんな時に従来の教科・領域観の延長線上で言葉だけ「新たな枠組み」だの「特別な教科」だのと言うのは、現行指導要領の改訂論議の時ならいざ知らず、もう古い。

 中教審高校教育部会で高校教育のコアとして「市民性」を位置付けたことも、改めて注目されよう。下村博文文部科学相も以前「人間学」という言葉を使っていた。中村教授の言うように、「道徳」という言葉にこだわる必要はない。

 教育委員会制度も含めて戦後教育は総じて駄目だと思っている人々は、戦前の修身のイメージからなかなか抜け切れないのだろう。しかし懇談会でも一部委員を除いて戦後道徳教育をいかに充実・発展させるかに心を砕いている。だからこそ一歩進んで、教科・領域主義にとらわれることなく未来志向でカリキュラムの在り方を論ずべきだ。

 それはもちろん懇談会報告の後でも構わないのだが、政治判断で一部改訂に走る拙速は将来に禍根を残すばかりか、学校現場に更なる負担を招きかねない。検討されている通り当面は新「心のノート」の活用で道徳教育の充実を図れば、教科化を急がなくても対応はできる。

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