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2014年2月 2日 (日)

指導要領解説 「解釈改訂」は禍根を残す

 文部科学省が中学校社会と高校地歴・公民の学習指導要領解説を一部改訂した。本体の指導要領に変更がないのに、解説だけ変えるという異例の事態である。

 「領土教育」の是非は別に論じよう。それ以上に問題にしたいのは手法である。今回の措置は政治的中立性に一定の意を用いてきた自民党長期政権による伝統的な文教行政からも一歩踏み外すばかりでなく、政権交代時代にあっては後々に禍根を残すことになろう。

 解説はあくまで文科省の著作物であるが、中央教育審議会の委員をはじめ研究者や教科団体関係者、教員らが専門的見地から分担して執筆しているものである。それも中教審の審議内容を踏まえ、改訂趣旨を学校現場に正しく伝えることを主眼としてきた。当初から政権に配慮した記述がなされることはあっても、途中から時の政権の意向で勝手に記述が改められることなど前代未聞だ。

 この時期に改訂に踏み切ったのは「教科書改革実行プラン」と同様、2016年度から使用される中学校教科書の検定・採択周期に間に合わせるためである。しかし解説に法的拘束力はないにもかかわらず、指導要領の「解釈改訂」によって教科書編集を縛り、検定にも圧力を掛けようとすることが許されていいのか。「すべての教科書で、新たな解説の内容に沿った記述をしていただきたい」(下村博文文部科学相、1月28日の会見)などと言うのは法令を無視した越権である。

 「自国の固有の領土を子どもたちに教えるのは、国家として当然のことだ」と下村文科相は断じた。当然かどうかはおいておくとしても、国家として何を教えるかを時の政権の判断に委ねていいのか。「自民党政権も含め、これまでが問題であった」と断じるのは、戦後文教行政丸ごとの否定でもある。とても「教育的観点」(同)による発想とは思えない。

 先の民主党政権ですら改正教育基本法や新学習指導要領を尊重する姿勢をいち早く表明して、行政の継続性・安定性を堅持した。それこそが保革対立の中でも政治的中立性を一定担保すべく培ってきた国の文教行政の手法だからである。

 今回の措置は領土教育にとどまらず、次に政権交代があった時、その政権の好き勝手に解説を書き換えられるようフリーハンドを与えることにもつながりかねない。そこまで熟慮してのことだったのか。それとも今後未来永劫、安倍政権の方針が継承されるとでも思っているのか。

 「政治的中立性が国で問題にならないのは、中教審の答申を無視すると政治生命を失うからだ」――。教育委員会制度改革を論議した中教審の教育制度分科会で、ある首長の委員はこう述べて改革案を支持した。しかし今起こっているのは、中教審を無視どころか関与させることなく政権の思うままに教育行政を進めようとする、まさに政治的中立性を侵す事態ではないか。

 ただでさえ中教審に不信感を抱いているという下村文科相である。今後も教育界からのボトムアップを無視した強引な行政運営が続くだろう。そうした運営を正しいと抗弁した時、後々しっぺ返しをくらいかねないことを自覚すべきだ。何より犠牲になるのは、時々の政権に振り回される教育現場と子どもたちである。

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