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2014年5月

2014年5月 5日 (月)

子どもの貧困対策に学校の力を

 こどもの日にちなんだ恒例の総務省推計で、総人口に占める15歳未満の割合が12.8%と過去最低を更新した。少子化対策が不可欠であることは言うまでもないが、しばらくは社会の活力を維持するためにも一人一人の能力を高めてもらうしかない。そんな折、深刻になりつつあるのが子どもの貧困だ。

 厚生労働省によると、17歳以下の子どもの相対的貧困率は15.7%。6~7人に1人、40人学級なら6人いる計算になる。一人親世帯(大人が一人)では下がっているとはいえ50.8%と依然2人に1人を占める。経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国中、全体で25位、一人親世帯では統計のある33カ国で最下位と、決して誇れる数値ではない。

 相対的貧困率は「相対」であって途上国とは比較にもならない…と抗弁もできよう。しかし日本では相対的貧困の基準となる「貧困線」は112万円まで下がっている。月9万円ほどの可処分所得で生活している世帯、とりわけ一人親のケースを想像すれば、子どもに十分手をかけよと求めるのも酷だ。たとえ改正教育基本法で「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」(10条)と規定したところで、虚しい。

 むしろ旧教基法にあった「(民主的で文化的な国家の建設、世界の平和と人類の福祉への貢献という)理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」(前文)を思い起こしたい。道中隆・関西国際大学教授の調査によると、生活保護受給者の4人に1人が子ども時代に生活保護世帯で育っていたという。「貧困の連鎖」を防ぐのに有効なのが、まさに教育の力だろう。

 象徴的な結果が、先ごろ発表された。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の2013年度「きめ細かい調査」の委託分析だ。保護者の収入が高いほど学力も高くなることは08年度の一部自治体を抽出した追加分析で明らかになっていたが、今回の調査では両親の学力を含めた社会経済的背景(SE)Sと学力の間に強い相関があることが全国規模で証明された。不利な環境を克服するには家庭での学習時間を増やすのが有効であるものの、全体としては勉強しない高SES層にはかなわない「限界」があることも分かった。

 それでも児童・生徒のSESを乗り越えて学力の底上げに成功している学校は確実に存在している――というのが委託分析調査の真骨頂である。今年度から教育委員会が全国学テの学校別結果を公表できるようにしたのも、結果を踏まえた個々の改善方策も含めて示すことをセットにしたものであって学校の尻をたたくためではない。「力のある学校」(志水宏吉大阪大学大学院教授)を増やすのが、行政の責務だ。

 しかし学力向上だけでは十分ではない。進学には更なる教育費負担がかかるのが現実であり、経済的支援はもとより児童・生徒の指導や保護者を励ます関わりが求められる。生活保護受給世帯の高校等進学率は89.9%と全体より10ポイント近く低いが、教育支援によって平均近くにまで引き上げた埼玉県の例もある。知識基盤社会の到来に伴う高等教育への需要を考えれば、その先の大学進学も含めてサポートすることが貧困の連鎖を防ぐためにも必要だ。

 ゴールデンウィークさなかの1日に開かれた内閣府「子どもの貧困対策に関する検討会」の第2回会合では、学校に対する期待が多く語られた。学力向上や進学支援といった教育機能はもとより、学齢期の子どもを全数把握して福祉部局などにもつなげる「貧困対策のプラットフォーム」(末富芳・日本大学准教授)としての役割だ。

 ある調査結果が思い起こされる。文部科学省が2012年度分の学校給食費の徴収状況を調べたところ依然として100人に1人の未納があったものの、5校に1校は就学援助制度の推奨が効果的だったと回答している。給食費未納といえば「月に4000~5000円も払えないのか」と家庭のモラルに帰す向きもあるが、真に困窮している世帯を把握し早期に対策を打てる可能性があることを示していると言えよう。

 問題は、そうした手厚い支援体制を学校が取れる条件整備をどう進めるかである。何より教員一人一人に授業づくりや個別指導の時間を十分確保した上で子どもの生活全体に目配りでき、外部機関とも連携できる余裕を生み出さなければならない。「子どもと向き合う時間の確保」などと称して小手先の捻出に終始したところで、何の解決にもなるまい。

 「人生前半の社会保障」(広井良典千葉大学教授)が今ほど求められる時はない。アベノミクスと称した新自由主義的経済政策へのまい進が更なる格差を拡大することが懸念される中では、なおさらだ。教育・福祉・雇用といった行政分野の垣根を越えて学校の機能を充実させるための大胆な発想が必要なのであって、カネも出さずに口だけは次々と出す「教育再生」では学校をますます機能不全にさせるだけである。

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