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2015年1月 3日 (土)

〔戦後100年へ②〕指導要領の「構造改革」に英知結集を

 来たるべき学習指導要領の全面改訂は、21世紀に求められる資質・能力を育成することを主眼としている。知識の量を問うことに偏重してきた学校教育の在り方に、大きな変革を迫るものだ。

 これまでの指導要領とそれに基づく指導が、教科・科目の学習内容中心だったことは否めない。いくら憲法・教育基本法等から敷衍(ふえん)し、総則で教科等横断的な視点を提示しても結局、学校現場では内容をどう教えるかに終始してきた。

 その教科にしても、基本的にはそれぞれの学問体系の準備教育のような内容で構成されてきた。バラバラの教科をそれぞれ子どもたちに学ばせれば社会で役に立つ資質・能力が自然と育成されるはずだという“幻想”の下、本当にその内容を教える意味があるのか問われることなしに、である。過去の改訂では、そうした学習内容を足したり引いたりしてきたにすぎない。

 「指導要領の構造改革」では、これまでの固定観念を抜本的に改めることが求められる。まず教科・領域等の枠組みにとらわれず、育成すべき資質・能力を同定し構造化する。それを総則に明記した上で各教科等に育成すべき資質・能力を割り振り、目標と内容を「一体」で見直す。学習評価への展望も含め、記述の仕方も大幅に変わるはずだ。

 おそらく多くの学校現場は、いわゆる「ゆとり教育批判」を受けた学力向上対策が求められて以降、日々の授業をこなすだけで精いっぱいなのが実情だろう。それ以降も厳しい時数管理の下で読解力だの活用力だの学力の3要素だの言語活動だの次々と“上から降ってくる”教育課題に、判断停止していないだろうか。

 しかし今回の教育課程課改革では、指導すべき事柄はしっかり指導しつつも、後はアクティブ・ラーニング(AL)と呼ばれる学習・指導方法を通して児童・生徒自らが将来の実践に結び付けられるような資質・能力を構成できるようにすることを目指さなければならない。教科書に書かれた内容をこなすといった発想は、もう通用しない。

 それには前提がある。 まずは学習内容の大幅削減だ。3割どころの騒ぎではない。反復練習させてでも徹底すべき知識・技能と、転移可能な汎用的資質・能力に峻別(しゅんべつ)しなければならない。

 その上で内容ではなく資質・能力を身に付けさせるために、どういうALを行えばいいかの授業研究・教材研究を徹底して深める必要がある。時間の確保は片手間程度ではとても足りない。現場が十二分に研究に打ち込める環境整備がなされなければ、求められる教育課程改革は成功するはずがない。

 教員の働き方、学校の組織・運営の在り方も抜本的な見直しが要請されよう。個々の教員には高度専門職として大学院レベルも含めた研修機会を保障しつつ大幅な裁量を認め、なおかつ校内の協働を進める態勢を整えなければならない。ちまちま夏休みの勤務管理など行っている場合ではない。

 クラスサイズや教職員定数にも、新たな基準が求められる。35人がいいか40人に戻すのか、何にどれくらい加配するのかといった発想さえ、一斉教授時代の遺物だ。ALのためにはどのような指導体制が必要で、そのための定数をどう算定するかの研究も、並行して進めなければならない。

 いずれを取っても困難な課題ばかりである。だからこそ学校現場や研究者をはじめ関係者の英知を結集して、未来志向で教育課程と指導の具体像を探らなければならない。何より21世紀を生き抜かねばならない子どもたちと日本社会にとって、改革は待ったなしだ。


【過去の社説】

「21世紀型スキル」重視に備えを(2013.1.2)
「21世紀型能力」に今から照準を(2013.7.23)
“21世紀型”指導要領に今から準備を(2014.4.7)


【本社配信記事】

次の学校で目指すのは「21世紀型能力」!? ‐渡辺敦司‐(ベネッセ教育情報サイト2013.7.19)
「21世紀型能力」を提案 国研が教育課程の在り方で研究報告書(内外教育2013年
8月2日付
「21世紀型能力」とは何か (学びの場.com2013.9.11)
「資質・能力」で指導要領を構造化 文科省の有識者検討会が論点整理(内外教育2014年4月15日付
次の指導要領で目指すのは≪教科を超えた力≫?‐渡辺敦司‐
(ベネッセ教育情報サイト2014.4.16)
学習指導要領の改訂 真のポイントは“能力観の転換”(THE PAGE 2014.11.27)
次の指導要領、「何を教えるか」から「何ができるようになるか」へ-渡辺敦司-
(ベネッセ教育情報サイト2014.12.10)
教えて!「アクティブ・ラーニングは広がるか」(キャリアガイダンス.net 2014.12.16)
「資質・能力」の確定が課題 特集・動きだした学習指導要領改訂②(内外教育2015年1月6日付

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