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2015年12月30日 (水)

高大接続改革 あえてスケジュールにこだわれ

 「高大接続改革」のうち大学入学者選抜改革の制度設計が、思うように進んでいない。文部科学省の高大接続システム改革会議は9月半ばにようやく中間まとめを公表したものの、ようやく年内に記述式問題イメージ例の「たたき台」を示すにとどまった。それも当面は国語と数学に絞り、さらに国語を優先させるという逃げまで打っている。

 改革のスケジュールをめぐっては、馳浩・文部科学相が「先送りも示唆」したとする一部報道を即座に否定したにもかかわらず、今も「新テストは実施スケジュールにこだわらず、より柔軟に考えた方がよい」といった主張が根強い。

 あえて本社は主張する。徹底してスケジュールにこだわれ、と。

 入学者選抜改革が思惑通り進んでいないことは確かだ。もともと技術的な見通しがあったわけではなく、さらにシステム会議が「抵抗勢力」であるテストの専門家を中心から外す格好で議論を進めたため、かえって後退を余儀なくされている。

 だからこそ改めて専門家を交えつつ、実現可能なテスト開発を今から本格化させればよい。に本社が「高大接続テスト」構想の復活を唱えたのも、そういう意味あいからだ。「高等学校基礎学力テスト」と「大学入学希望者学力評価テスト」(いずれも仮称)を一本化するまで「後退」しても構わない。

 それでも技術的な課題の解決には、なお困難を伴うだろう。しかし、あえて主張する。初めから完成形を求める必要はない。徐々に改良し、より精度の高いテストへと成長させればいいのだ。

 「それでは受験対策ができない」「不完全なテストを受させられた者が不利になる」――そうした反論が必ず出てこよう。しかし、冷静に考えたい。今までの「入試接続」では高学力層にも中・低学力層にもそれぞれ課題があるからこその、高大接続改革である。受験の「公平性」ばかり重視してきたからこそ、1点刻み・知識偏重の入試態勢を温存させてきたのではないか。

 三つのポリシーに対応した個々の大学に入る対策は今後も大いにあり得るべきだが、 これまでのような「受験」対策まで考慮に入れる必要はない。入試改革には必ず「猫の目」批判がつきまとうが、それは単に受験対策が追いつかないという批判にすぎない。そもそも「入試」自体が問い直されているということを、よくよく自覚すべきだ。

 もちろん思考力・判断力・表現力の育成には、知識・技能も不可欠である。そのことは中央教育審議会やシステム会議でも、さんざん確認されてきた。しかし実質的な大学全入時代を迎えて「合格点さえ取れればいい」という風潮がますます強まり、思考力等や主体性・多様性・協働性の障害になっているとしたら見過ごせない。

 小学生が大学を経て就職するころには仕事の多くがテクノロジーで代替され、半数以上が今はない職業に就く、というのは本当だろう。だからこそ21世紀型スキルが提唱され、経済協力開発機構(OECD)もキー・コンピテンシー(主要能力)の再定義を日本とともに研究し提案しようとしている。学習指導要領の改訂は、そうした文脈の中に位置付けられる。

 「拙速はいけない」とよく言われるが、中教審会長だった安西祐一郎・システム会議座長が指摘する通り「15年も放置」された状況を、このままにしていてはいけない。それよりも未来に必要となる資質・能力の育成を一刻も早く急がねば、不幸になるのは今の子どもたちだ。

【過去の社説】
高大接続テスト 先送りでも済まない「全入時代」の入学者選抜 (2010.11.25)
大学入試の抜本改革はセンター試験の廃止から(2011.1.16)
「終焉」した大学入試に対応が急務だ(2012.2.11)
大学改革実行プラン 「衝撃」は軽視できない(2012.6.8)
高大接続諮問 受験競争が無になる大改革だ(2012.9.2)
実行会議4次提言 半年遅らせただけの「大改革」論議(2013.11.2)
大学入試改革 「人物本位」は誤解を招く(2013.11.9)
大学入試改革 各方面で「覚悟」を(2013.11.21)
「発展レベル」テスト まずは必要性と緊急性の共通認識を(2014.6.21)
〔戦後100年へ③〕高大接続改革 「入試」から決別する時だ
(2015.1.4)
「基礎学テ」をセ試改編の「高大接続テスト」に(2015.7.3)

【関連本社配信記事】
「高大接続テスト」はどうなったの?(ベネッセ教育情報サイト 2010.12.2)
「高大接続テスト」は「入試」ではない!?同 2010.12.16)
1点刻みの「入試」は不要に? 全入時代の大学入学(同 2010.12.22)
「21世紀型」大学入試が世界の潮流に!?(ベネッセ教育情報サイト 2012.1.16)
「学生に勉強させる」大学に 中教審が提言(同 2012.5.10)
いずれはセンター試験の存廃も課題に!?(同 2012.5.24)
入試に依存した高校教育は衰退する―「高大接続テスト」提唱者・佐々木隆生氏に聞く―(月刊高校教育2012年6月号
大学入試を大改革へ……「一発勝負」「1点刻み」なくなる!?(ベネッセ教育情報サイト 2012.7.5)
教えて!「中教審に高大接続の新部会」
(キャリアガイダンス.net 2012.8.29)
大学入試、わずか1年で「大改革」を提案?(ベネッセ教育情報サイト 2012.9.13)

センター試験はどうなる? 大学入試の「大改革」検討(同 2012.11.1)
2013年の大学入試「大改革」はどうなる‐渡辺敦司‐(同 2013.1.7)
高校版「全国学力テスト」を大学入試にも活用?-渡辺敦司-(同 2013.2.7)
教えて!「センター試験が廃止される?」(キャリアガイダンス.net 2013.6.18)
センター試験「廃止」は本当か‐渡辺敦司‐(ベネッセ教育情報サイト 2013.6.27)
入試以外でも変革を……必要な大学と高校の「教育」改革‐渡辺敦司‐(同 2013.10.6)
教えて!「大学入試は今後どうなる?(第4次提言を受けて)」?」(キャリアガイダンス.net 2013.11.19)
大学入試の「1点刻み」見直し、なぜ必要? ‐渡辺敦司‐(ベネッセ教育情報サイト 2013.12.11)
東大の推薦入試は「教育再生実行会議」の先取り? ‐渡辺敦司‐(同 2014.2.26)
教えて!「達成度テストって何?」(キャリアガイダンス.net 2014.3.19)
2021年度からの「発展レベル」テスト まだ姿は見えず‐渡辺敦司‐(ベネッセ教育情報サイト 2014.7.9)
「発展レベル」テスト、勉強の姿勢も変える必要‐渡辺敦司‐(同 2014.7.11)
大学入試改革は高校・大学の「教育」を変えるため‐渡辺敦司‐(同 2014.11.14)
教えて!「いつからどんな? 二つの新たな学力テスト」(キャリアガイダンス.net 2014.11.19)
大学入試が「公平」でなくなる!?-渡辺敦司-(ベネッセ教育情報サイト 2014.11.21)
なぜ国は入試改革を急ぐのか‐渡辺敦司‐(同 2014.12.5)
「新テスト」検討上の課題指摘 大学入試センターが「専門的見地」からシンポ(
内外教育2014.12.9)
大学教育の改革、入試改革より早く進む?-渡辺敦司-(ベネッセ教育情報サイト 2014.12.26)
中教審で何が議論され、何が議論されなかったのか(月刊高校教育2015.年2月号
2016年度には「新テスト」の作問イメージ 文科省が実行プラン‐渡辺敦司‐(ベネッセ教育情報サイト 2015.1.28)
京大の「特色入試」に見る国の「高大接続」改革-渡辺敦司-(同 2015.2.4)
教えて!「大学の『個別』入試はどうなる?」(キャリアガイダンス.net 2015.2.17)
大学入学の「新テスト」、夏までに方向性-渡辺敦司-(ベネッセ教育情報サイト 2015.4.1)
大学入試、既に変わりつつある? 「高大接続」先取り‐渡辺敦司‐(同 2015.5.27)
重要なのは「主体性」の育成 ●安西祐一郎氏が講演─教育EXPO(上)(内外教育 2015.6.23
新テストは「軽量化」が必要 ●高大接続改革セミナーで─教育EXPO(下)(同 2015.7.3
【特別インタビュー】二つの新テストのゆくえ/安西祐一郎(月刊高校教育2016年1月号

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