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2016年4月

2016年4月 7日 (木)

【池上鐘音】「1日850円」の思い出

▼家賃を除いた1日当たりの生活費は850円――そんな東京私大教連の新入生調査結果を見て突然、27年前の光景がありありと蘇った。当時住んでいた鎌倉の駅前にあった中国料理屋の、酢豚定食のことである▼大学に入学した1984年、国立大学の授業料は年間21万6000円から25万2000円に引き上げられた。学費は親持ちで仕送りも貰っていたが、舎費100円・負担区分など含めても月2000円ほどという常識外れな学生寮に住みながら月末には必ず金欠に陥っていた▼そんな中で1食850円は、高嶺の花だった。650円もあれば、腹が苦しくなるほどの超大盛りを食べさせてくれるカレー屋に行った。もっとも食後には必ずといっていいほど喫茶店に通っていたが、それができたのも世がバブル景気に沸いていたためである▼先輩に紹介してもらった2食仮眠付き夜勤バイトのお陰で、2年間の留年資金さえ貯めることができた。850円の酢豚定食が気兼ねなく食べられるようになったのは、6年生になってからだった。それも恵まれたバブル時代の話である▼現在、国立大学の授業料(標準額)は53万5800円。10年以上据え置かれているとはいえ、かつての倍だ。日本学生支援機構の奨学金で賄うことはできるが、卒業時に240万円余りの「借金」を負うことになる。しかし、私学はそれ以上だ▼首都圏私立大学の教員養成系は、授業料等で年100万円ほど掛かる。同機構の奨学金だけでは足りない。それでも無利子でさえ、自宅外の場合4年間の貸与総額は300万円以上になる。今は年収300万円を超えるまで返還が猶予される所得連動型も選べるし、2017年度からはより柔軟な新制度に移行するが、「借りたものは返す」の原則に変わりはない。昔は教員になれば、返還は免除された▼1食850円どころか外食にも手を出せず、生活費はもとより学費まで自前で稼がなければならない今の学生には本当に申し訳ない思いがする。進学率など時代が違うとはいえ、高等教育にカネをかけない政府を許してきたのは、学生時代さんざん恩恵を受けてきた大人世代である。

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2016年4月 5日 (火)

高等教育戦略なき安倍政権に「給付奨学金」ができるか

 大学生の奨学金問題が、与野党攻防の論点として急浮上してきた。マスコミは安倍晋三首相が予算成立後の記者会見で給付型奨学金の創設方針を表明したと伝え、与党の提言に対しても検討したい意向を返したという。いかにも首相自身が前向きな印象を与えかねない報道ぶりだが、各紙の記事を比べ読みして生資料に当たり、少し検索して調べれば、誰にでも真相が分かる。

 首相が会見で言及したのは「まごころ奨学金」の話にすぎない。犯罪被害で保護者を失った子どもに向け、振り込め詐欺被害で返金できなかった残余金を原資として、大学生の場合は月8万円を貸与するなどとした預保納付金支援事業のことだ。それも現状は卒業後の返還に尻込みし、3年目の2015年度でも200~300人の想定に対して60人しか利用していない。これを給付型に変更することは、既定路線だった。しかも月5万円などに下げて、である。

 安倍首相が会見で言った「本当に厳しい状況にある子どもたち」に差し伸べる手とは、同奨学金のことを指す。これを除けば、後の奨学金政策は「有利子から無利子へ」の拡充と、より柔軟な所得連動返還型制度の創設という、これまた既定路線の話しか残らない。要するに、新しいことは何も言っていない。

 与党はどうか。自民党の教育再生実行本部第6次提言の中に「給付型奨学金の創設など」という文言が、確かにある。ただ、そもそも提言に掲げられたメニュー自体が概算要求の粗々の原案みたいなもので、財源の裏付けがなければ実行できないものばかりだ。

 とりわけ給付型の創設に関しては、安倍首相や菅義偉官房長官が「対象者をどう選定するかなどの課題がある」と口をそろえているのが、いかにも官僚的答弁として利いている。

 根本的な問題は、安倍政権が奨学金、もっと言えば高等教育進学を、学生個人の便益としか考えていないことだ。もちろん大学は義務教育ではないし、卒業後は高卒者より高い収入が期待できるから受益者はあくまで個人だ、と突っぱねることはできよう。果たして麻生太郎財務相は1月の参院決算委で「(給付型奨学金は)単なる財政支出だ」と言い放っている。しかし高等教育人材の増加が社会全体にとっても便益をもたらしていることは、教育経済学者がお好きなエビデンス(科学的根拠)で示されている。

 2人に1人を超えるまで大学進学率が上昇したのは、政府が誘導したからでも何でもなく、ひとえに家計負担に頼ってきたからだ。国内総生産(GDP)に占める高等教育費の政府支出割合が経済協力開発機構(OECD)平均に比べずっと低いことは、関心のある人には広く知られるようになった。それなのに安倍政権は教育再生を内閣の最重要課題だと言う割に、予算面でそれを表そうとは決してしない。 

 各国が厳しい財政状況にあっても浮沈を懸けて高等教育予算を増やそうと努力している中、日本ではその兆しすら見えない。成長戦略と称して目先の景気回復に役立ちそうな研究には投資しようとしても、21世紀に対応した高等教育人材が将来どのくらい必要で、それによって成長や発展がどのくらい見込めるかといった戦略を立てようという発想は、全くない。

 自民党の提言には「成長戦略に資する高等教育の実現」という一文がある。さすがだと思って中身を見たら、成長分野への専門職大学院の活用と、「専門的、実践的な職業人養成を行う新たな高等教育機関」の話に終始している。特に後者は、都道府県所管の専門学校に国庫補助をバラマこうという不純な動機が当初から見え隠れしていたものだ。

 18歳選挙権を目前にして「必要な政策は打っていますよ」というポーズを取ろうというのは、きわめて分かりやすい。しかし羊頭狗肉ないしは竜頭蛇尾の政策を並べたところで単なる選挙戦術でしかなく、本当に有効な施策とは言えない。もちろん、それは野党にも問われる。見せかけの公約に騙されないためにも、主権者教育が急務だ――と言ったら皮肉に過ぎようか。

 

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2016年4月 1日 (金)

【内側追抜】消費増税

    「和歌山で地震がありましたが、5年以上も続く東日本の余震と合わせると、累積で大震災級と言っていいのではないでしょうか。同様に、中国発の長引く不況も既にリーマンショック級。しかし10%引き上げを延期するとしたら、信を問うしかないですね」

      ――某首相

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