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2016年9月 9日 (金)

指導要領審議まとめ せめて裁量拡大と脱知識偏重を

 次期学習指導要領をめぐる中央教育審議会教育課程部会の「審議のまとめ」が、9日からパブリックコメント(意見公募手続)に掛けられた(10月7日まで)。

 1点刻みの評価は時勢に合わないが、あえて採点すれば、官僚の作文としては85点、経済協力開発機構(OECD)向けのリポートとしては70点、学校現場にとっては55点、本社の期待値に照らせば45点――というのが正直な感想だ。言いたいことはたくさんある。しかし既に配信記事で小出しにしているし、いずれ本格的に論じる機会もあろう。

 一つだけ指摘をしておきたい。最近、審議まとめを練り上げたはずの中教審部会委員からさえ、控え目ながら細部についての異論が公然と語られていることだ。詳細は既報および今後の配信記事を参照いただきたいが、まさに我が意を得たりという思いがしている。

 もちろん、教科横断・学校種別縦断で資質・能力の育成を打ち出した意義は極めて大きい。だからこそ本社は諮問以前から改訂に対する期待を一人騒ぎ立ててきたのだが、むしろ今は落胆の方が上回っている。

 パブコメで意見を述べたところで、寄木細工のように緻密に組み立てられた審議まとめは文言しか変えようがないだろう。しかもその寄木細工は、いびつな模様をしているか、無理やり模様をそろえたとしか思えない。

 今回は資質・能力シフトができたことで良しとするにしても、このままでは学校現場の首を絞めることは必定だ。文科省もそれが分かっているから条件整備も併せて論じてきたのだが、その思惑とは裏腹に必要な教職員定数の改善は消費増税の見送りで可能性すら吹き飛んでしまった。

 だから今は最低限、あえて2点だけ要望する。

 1点目は、学校の裁量を大幅に認めることである。単なる「カリキュラム・マネジメント」で済む話ではない。むしろ審議まとめが細部の矛盾やしわ寄せをすべてカリマネに負わせている問題点は、改訂の準備作業に携わった識者が指摘しているところだ。研究開発校や教育課程特例校などの制度を活用すれば済む話でもない。弾力的な運用を認めないと、内容すらこなし切れない可能性がある。

 2点目はそれとセットで、細かい知識の習得を問わないことである。その点で、教育課程企画特別部会の段階で本文にあった「概念的な知識」が途中で脚注に落とされたのは問題だ。委員の異議を受けて審議まとめの最終修文では「特に主要な概念に関するもの」などという表現で復活したように見えるが、かえって訳が分からない。ここは今後の審議で更に詰めるべきところだろう。

 関連して、大胆な提案をしたい。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、A問題を抽出調査にしてはどうか。悉皆(しっかい)調査はB問題だけにし、概念的知識が身についているかだけを問うのである。そうすれば内容項目を網羅的に習得させなければならないという強迫観念から、少しは解放されよう。

 学術研究の成果を踏まえたと言いながら、実際には事務局主導で都合のよいところだけつまみ食いし、行政の整合性と政治的な配慮をたっぷり加えた上で、決して綺麗とは言えない形の模様で次期指導要領は彩られてしまった。それでも10年間は、これで回していくしかないのだろう。だからこそ成果と限界をしっかり認識しつつ10年間の実証研究と10年後の検証に付すためにも、せめて裁量ぐらい認めてあげないと現場の疲弊は増すばかりか、破綻の可能性もなしとは言えない。


【過去の社説】

「21世紀型スキル」重視に備えを(2013.1.2)
「21世紀型能力」に今から照準を(2013.7.23)
“21世紀型”指導要領に今から準備を(2014.4.7)

〔戦後100年へ②〕指導要領の「構造改革」に英知結集を(2015.1.3)


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