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2017年12月

2017年12月31日 (日)

【池上鐘音】失望続きの2017年

▼2017年は文部科学省の天下り問題をめぐり前川喜平事務次官の引責辞任で明けた。その後、加計学園問題の渦中に巻き込まれようとは当人も予期していなかったろうが、安倍1強体制の下で行政に忖度(そんたく)がまん延していることが白日の下にさらされた。面従腹背の愛すべき放言官僚が去っただけにとどまらず、後で振り返れば文教行政の変節点にならないかと心配だ▼その前川氏も大きく関わった新学習指導要領の義務教育諸学校分が告示され、解説書も発行された。前年末の中央教育審議会答申に沿ったものとはいえ、「ゆとり教育批判」の再燃を恐れるあまり学習内容の見直しを行わないまま「資質・能力の三つの柱」の枠を無理やり各教科等に当てはめ、かつ小学校英語の教科化をはじめ実質的に「量」も増やしたのでは、肝心の「質」が心配になる▼教育課程改革と車の両輪と位置付けられた高大接続改革も、目玉の大学入学者選抜の実施方針等が公表された。議論の迷走で肝心のテスト開発が遅れ、かつ理論的根拠の薄弱なことが露呈してきている。個別大学選抜でのコンピテンシー(資質・能力)評価も、どうなるか。何より「公平な入試」論の復活で「公正な選抜」理念が忘れられ、主体性・多様性・協働性のうち「多様性」がいまだに顧みられないのが残念だ▼両輪改革で、間違いなく教育現場の多忙化に拍車が掛かろう。中教審答申で議論が始まった「学校の働き方改革」は矢継ぎ早に緊急提言、中間まとめを出したが、まずは現場に努力を強いるものと言わざるを得ない▼その裏付けとなるべき来年度予算も官僚的には「改善」を勝ち取ったとしても現場にとっては「改革」に及ばないことは、先の社説で指摘した。「胡麻(ごま)の油と教員は絞れば絞るほど出るもの」だとでも思っているわけではないだろうが、結果的にそうなっている▼改革論議を聞いていて、何かと出てくるのが「教員志望の学生」だ。教員の質向上策としての教職課程改革のみならず、多忙化解消策のためのボランティア要員としてまで期待がかけられる。既にアルバイトの余裕すらなくなっているというのに▼そんな隙をついて忖度で文教行政を浸食しつつあるのが、北朝鮮のミサイル危機に乗じた「国民保護」対応だ。教職課程コアカリキュラムを皮切りに、第3期教育振興基本計画にも盛り込まれようとしている。憲法改正論議と相まって、本当に戦争の足音が学校に迫ってくるのではないかと心配になる▼年末が近づくにつれて失望感が増してくる中、来年こそはよい年にと思いたい。だだし現段階で、そんな展望を描ける状況にはない。教育こそが唯一の希望だと信じたいが、それを育む教員たちを案じるばかりだ。

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2017年12月29日 (金)

教師の働き方 「改革」には遠い

 中央教育審議会が報告した「学校の働き方改革」の特別部会中間まとめを受けて、文部科学省が緊急対策をまとめた。中教審総会の前には、2018年度予算案も閣議決定されている。少なくとも現状では、なお「改革」には程遠いと言わざるを得ない。

 もちろん中間まとめで、学習・生徒・進路指導など明らかに学校の業務以外に、これまで学校が引き受けてきた業務を14項目に整理し、学校が本来担うべき業務かどうかを「仕分け」(文科省)した意義は大きい。8月末の緊急提言で、教師の勤務時間の把握を求めたことに次ぐものだ。

 ただ、これも単に曖昧で済まされてきたことを、やっと明確化しただけにすぎない。しかも「基本的には学校以外が担うべき業務」と判定されたなら、明日にでも勤務から外されなければ道理が通らないはずだ。しかし登下校ひとつ取っても緊急提言が「連携を一層強化する体制を強化する」としているのは、何も言っていないに等しい。

 教師の本来業務はもとより、 「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」にしてもそうだ。負担軽減を言うなら、それ相応の予算措置が講じられてしかるべきだろう。ただ中教審の緊急提言を「受けた」文科省概算要求自体、義務教育費国庫負担金の総額をマイナス要求の範囲内に収めるなど不十分なものだった。しかも予算折衝では、小学校英語の加配要求が単年度2200人(9年間で6635人)から1000人(4年間で4000人)に圧縮された。中学校の生徒指導強化に至っては、500人(9年間で4100人)の要求に対して単年度50人という馬鹿みたいな数字だ。

 それでも省庁の論理からすれば、厳しい財政事情の中でも「改善」を勝ち取れたという評価になるのだろう。林芳正・文部科学相は閣僚折衝後の会見で①20年度段階での学級数減を見込んだ②標準授業時数を大幅に上回って授業をしている学校は、「働き方改革」の観点から現在の授業時数の範囲内で実施することが可能――という点から必要数を見直したと説明した。

 看過できないのは②だ。1998~99年告示の学習指導要領が実施直前になって巻き起こった「ゆとり教育批判」に対処するため、指導要領が「最低基準」だと突然言い張って教育現場に学力向上対策を求めたのは、いったいどこの省庁だったか。その結果、現場は標準時数以上の「確保」に奔走して学力向上の「V字回復」を果たしたが、それが多忙化に拍車を掛けたことは疑いがない。

 それなのに中間まとめには、「これまで学校現場に様々な業務が付加されてきた反省を踏まえ、今後、文部科学省において学校へ新たな業務を付加するような制度改正等を行う際には、既存の業務との調整や義務付けの必要性の検証、必要な環境整備等を行う必要がある」という一文さえある。いったい反省や検証は、いつするのか。

 もちろん、文科省の苦しい立場は分かっている。政権や文教族の後押しもないまま、徒手空拳で挑まなければならない状況に置かれているからだ。しかし、だからといって教育現場に努力ばかりを押し付けるのでは、進む改革も進まない。

 むしろ旧来の同省の行政手法が現下の課題解決に機能不全を起こしていることが露呈した、とみるべきではないか。ならば率先して「付加」した分の削減を提案するぐらいの覚悟が必要になろう。国民の総反発を招いても、だ。

 指導要領の改訂にしても、「質も量も大切」だとして実質的には質の分を大幅に増大させ、それに必要な条件整備は「死ぬ気で頑張る」と言った結果がこれだ。省や官僚個人を責めているのではない。予算獲得の見通しは暗い、という冷徹な現状認識をすべきであり、官僚的答弁ではなく、できないものは正直にできないと説明すべきだと言いたいだけだ。

 これはひとえに文教行政だけの責任ではないだろう。精神論だけで勝とうとした太平洋戦争末期の状況から、日本人の体質はなかなか脱却できない。国民学校が、その先兵を果たした教訓を忘れていないか。それで中間まとめも言う「日本型学校教育」の維持も何もあったものではない。

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2017年12月12日 (火)

【内側追抜】某勉強会で

わたくしは最近、反省ノートをつけ始めました。これで改めて首相の座を目指したいと思います。

      ――某元防衛相

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2017年12月 2日 (土)

【池上鐘音】「忖度」の本質

▼今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」(自由国民社)年間大賞に、「インスタ映え」と並んで「忖度(そんたく)」が入った。当然だろう。選に漏れていたら、それこそ政権に忖度したかと疑問を抱かざるを得ない▼発端は籠池泰典・森友学園理事長(当時)が日本外国特派員協会で記者会見した際の発言だったが、事は「瑞穂の國記念小學院」、あるいは加計学園による岡山理科大学獣医学部の設置認可にとどまらない。政府全体に、安倍首相の意向を忖度する雰囲気がまん延していることだ▼加計学園問題で「総理の意向」文書を「なかったことにはできない」と証言した前川喜平・前文部科学事務次官は官邸ゴリ押しのもう一つの例として「明治日本の産業革命遺産」を挙げていたが、それだけではないだろう。本社説でもたびたび取り上げた「ミサイル教育」も、その一端でしかない▼霞が関通の間には、官僚が内閣の意向を忖度するのは当然だといった受け止めもよく聞かれた。それも昔から仕事のうちではなかったか、と。しかし問題の本質は前川氏が言うように、それによって「行政がゆがめられた」かどうかである▼その前川氏でさえ、在職時には表立って官邸に盾突くことはできなかった。「なぜ現役の時にやらなかったのか」という批判は関係者の間にも根強いが、とりわけ下村博文氏が文部科学相だった時にそんなことが不可能だったことは誰しも分かっていよう▼寺脇研氏との対談『これからの日本、これからの教育』(ちくま新書)では加計学園の設置認可を進め、文科省を批判してきたのが「規制緩和」論者であることを指摘している。財務課長時代の義務教育費国庫負担問題以来、規制緩和派の官僚に文字通り体を張って対峙してきたのが前川氏だ▼たとえ首相の直接的な指示がなかったとしても、官僚がその意向を忖度して適正なスキームを作って「国家権力の私物化」(同書)を正当化してしまう。そのことの方が恐ろしいし、民主主義の危機ではないのか。

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