« 2018年1月 | トップページ | 2018年3月 »

2018年2月

2018年2月28日 (水)

PISAグローバル・コンピテンス 「不参加」は解せない

 文部科学省が、2018年の「生徒の学習到達度調査」(PISA)で初めて実施される「グローバル・コンピテンス」調査への参加を見送る方針を決めたという。時事通信の16日配信記事によると、「多様な文化的背景や価値観を、一つの尺度で順位付けされる懸念があるため」というのが理由だ。

 まったく解せない。既に経済協力開発機構(OECD)は、国と生徒のランク付けに使用しないことを明らかにしている。もし順位を付けたとしても主要3分野と同様、各国が教育政策を検証するためであって国際学力コンテストでも何でもないことは文科省自身が認識しているはずではないか。

 PISA2015の協同問題解決能力(CPS)に続き革新分野として実施される同調査が開発途上であることも、OECD自身が認めている。グローバル・コンピテンスの4側面のうち「知識」「認知スキル」「社会スキルと態度」は測定するものの「価値観」は以降の課題として先送りするのが、いい例だ。

 しかし新学習指導要領は、「グローバルな視野で活躍するために必要な資質・能力の育成」(2016年12月の中央教育審議会答申)を掲げていたのではなかったか。外国語によるコミュニケーション能力の育成を徹底するため、大学入学共通テストに外部資格・検定試験を活用してまで4技能評価を導入しようとさえしている。たとえ完璧な調査でなくても、課題を発見し改善につなげるため一刻も早く参加すべきだと判断するのが筋だろう。

 文科省の思惑は容易に想像できる。都合の悪い結果が出て、PISA2003が学力低下批判を過熱化させたような事態を今から避けたいのだろう。それでいてエビデンス(客観的な証拠)に基づく教育政策を進めようとしているのだから、矛盾した姿勢だと言わねばならない。

 むしろ国内のみならず国外でも、他国や異文化・異民族に対する不寛容さが問題になっている。アンドレアス・シュライヒャーOECD教育・スキル局長が昨年12月、日本の記者向けにインターネット会見を行った際の配布資料にあった表題「インクルーシブかつ持続可能な世界に向けた若者たちの育成」が、いまグローバル・コンピテンスを問わなければいけない課題意識を象徴していよう。

 ましてや東京五輪・パラリンピックが2年後に控えている。安倍政権は、これを起爆剤として一気にグローバル化対応を図りたい考えだったはずではないか。そのために指導要領の改訂時期を早め、20年度から小学校英語を教科化することにまで突き進んだ。しかも授業時数が確保できないのに短時間学習の導入などという無理を押して、である。

 グローバル化対応の教育は、決して一部の国際エリート育成にとどまるものではない。シュライヒャー局長も、地域課題を解決するためにもグローバル・コンピテンスが不可欠だと強調していた。ますます新指導要領の趣旨にかなう話だろう。

 ぜひ文科省は方針を転換して参加を決めてほしい。結果が出たときにどう説明するか、その準備は今からなら十分できる。むしろ偏狭なヘイトスピーチ(憎悪に基づく発言)が広がる中、先導的に国内調査を行うぐらいの積極的姿勢が不可欠だろう。 是非とも忖度(そんたく)なしの判断が求められる。

にほんブログ村 教育ブログ 教育論・教育問題へ

 ↑ランキングに参加しています。奇特な方はクリックしていただけると、本社が喜びます

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年1月 | トップページ | 2018年3月 »