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2019年5月 1日 (水)

【池上鐘音】新元号の呪縛

▼田中秀征・元経済企画庁長官へのインタビュー集『平成史への証言―政治はなぜ劣化したか』(朝日新聞出版)を読んで、はっとさせられた。「二、三百年に一度の世界的変動」に際しながら、選挙制度改革にかまけて「冷戦の終わりに何をすべきかという認識が著しく欠けていた」「さらに深刻なのは、それから三〇年が経ってなお、日本の針路について、多くの国民が合意するような政治の方向性が明確になっていない」 という指摘だ▼田中氏は民主党政権を評して、反自民勢力の「受け皿政党」という戦略が一番の問題だったと喝破する。一方、自社さ政権で当時の社会党が方針転換したのと同様に自民党も「憲法尊重に転換するというようなことを明確に打ち出せればよかったと悔やまれてならない」と振り返っている▼もちろん、それは宮澤喜一・元首相の側近として「保守本流」を自任した田中氏の、保守二大政党を志向する立場からの回顧である。さらに言えば、自民党政綱に「現行憲法の自主的改正」を入れることを主導した傍流の旧日本民主党系とは対極にある▼きょう改元があった。前回に比べて生前退位というお祝いムードの中、詳細な制定過程についても報道で明らかにされたことが大きな特徴だろう。そこから浮かび上がったのは、政令で定められる元号には首相の意向が強く働く余地があるということだ。裏を返せば徳仁新天皇の在位中、安倍晋三首相の“好み”に呪縛され続けることになる▼元号が改まって国民にも明るい新時代を期待する声が高まっているようだが、田中氏の言う「宿題」は残されたままだ。「官僚が『国民主権』というものをいまだに理解していない」とも指摘しているが、国民自身も十分に理解していないとしたら事態はもっと深刻かもしれない▼退位の日まで憲法に基づく象徴天皇の在り方を徹底して追求した昭仁上皇とは対照的に、 安倍首相は岸信介氏の孫として改憲にひた走っている。第1次政権の時に比べれば表向き謙虚な姿勢を取ってはいるが、国会で野党を冷笑するような答弁も端々にみられる。有力な元号候補として十七条憲法を典拠とする「和貴」が一時浮上したというが、 令和が「冷和」にならないことを祈るばかりだ。

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