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2019年7月 4日 (木)

安倍1強で教育は今後も良くならない

 参院選が公示された。改憲以外に争点らしい争点もなく、6年半の安倍政権に評価を下す選挙とも言える。若者の間には好調な就職状況も反映してか、自民党支持が強いという。しかし売り手市場なのは団塊世代の大量退職後に進んだ人手不足という人口動態的な現象でもあり、入社後はブラック職場や低賃金が待っているのでは浮かばれまい。

 ではこの6年半、教育は良くなったのか。今後の残り総裁任期で、教育は良くなるのか。いずれも否、と断じたい。

 ブラックといえばこの間、教員の過酷な勤務実態が明らかになり、わずかながら世間にも同情が広がったのは光明というべきかもしれない。しかし、考えてみよう。ちょうど第1次安倍政権に差し掛かる2006年の調査と比べて、10年後の16年には1日当たり小学校で平日43 分・土日49 分、中学校で各32 分・1時間49 分増加している。よもや民主党政権のせいで急増し、安倍政権で減少したなどとは言えるまい。

 悪化した理由は明らかだ。05年度の義務制第7次完成以来、新たな教職員定数改善計画は策定されていない。その間、学力向上対策に加えて特別支援教育や不登校、外国人児童生徒への対応など、よりきめ細かな対応が求められているからだ。確かに17年度から通級指導と日本語指導の加配定数を10年かけて基礎定数化する措置が進行しているが、これをもって「新たな改善計画」などと呼ぶのは看板に偽りがある。

 「世界トップレベルの学力と規範意識」というのが、安倍政権の教育再生スローガンの一つである。これ自体が何を言わんとしているのかさっぱり分からないが、トップレベルなるものを維持するために尻をたたく以外に何か「内閣の最重要課題」にふさわしい財政措置を伴う施策を打ってきたか。その有力な指標らしいPISA(経済協力開発機構=OECD=の「生徒の学習到達度調査」)の18年調査結果は年末にも発表されるだろうが、果たして今回も「上位グループ」と言い張れるかどうか密かに危ぶんでいる。

 政権に返り咲いた直後は下村博文・文部科学相の下、教育再生実行会議を使って猛スピードで改革を進めた。しかし例えばその第1弾であるいじめ対策で、いじめの重大事態が減少したか。確かに起こってしまった重大事態に対する第三者による事後の検証などは進んだが、新たな重大事態は後を絶たない。それはそうだろう。いじめ調査なども含めて現場の多忙化が加速し、平素からいじめを生まない環境づくりがおろそかになってしまっている。道徳の教科化によっていじめが抑制されたなどというエビデンス(客観的な証拠)も、もちろん聞いたことがない。

 確かに高等教育に関して無利子奨学金の拡大が進んだことや、給付奨学金と一部「無償化」が導入されたのは画期的なことだ。しかし奨学金に関して言えば下村氏の個人的な思いが結実した側面が強く、政権を投げ出すまで銀のさじをくわえて生きてきた首相には消費増税の口実以外に思い入れが感じられない。無償化措置にしても「真に必要な」者という限定が最初から付いていた。おまけに今後10年ぐらいは消費税率を上げる必要はないらしいから、中所得者層の学生にまで「暖かい風」が吹くことは全く期待できない。

 進んだことは何かといえば、モリ・カケ問題に代表される教育行政のゆがみだ。そうでなくても「学校の働き方改革」にみられる通り、財政措置を当てにしない範囲内での施策展開を余儀なくされている。先月27日に発足した中央教育審議会初等中等教育分科会「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」で小川正人臨時委員(前期中教審副会長・初中分科会長・「学校における働き方改革特別部会」部会長)が、現行の定数も「今ある業務量にふさわしい教職員数を算出しているわけではない」と指摘し、働き方改革で確定された本来業務を踏まえて業務量を客観的に把握した上で、それに見合った定数改善の方策を検討するよう提案したのは傾聴に値する。しかし、その意見が顧みられる見通しは暗いと言わざるを得ない。

 潮目を変えるには、安倍1強に歯止めをかけることからしか始まらない。何も今の野党に政権を取らせよなどと主張するつもりはないが、少なくとも与党内の勢力図が変わらない限りは希望すら持てない。

 もちろん現下の厳しい財政事情の中、どんな内閣であっても有効な打開策を見いだすのが難しいのは民主党政権を振り返れば明らかだ。しかし首相が何と言おうとも、悪夢とまでは言わないが今後いい夢を見られる可能性も少ないだろう。あくまで本社の守備範囲である、教育政策の話であるが。

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