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2020年5月16日 (土)

9月入学検討 「5歳児の義務教育化」どこへ

 新型コロナウイルスに伴う休校の長期化で急浮上した9月入学をめぐって、安倍晋三首相は14日の記者会見でも依然として「有力な選択肢の一つだ。前広(まえびろ)に検討していきたい」と述べていた。一方で日本PTA全国協議会(日P)や全国連合小学校長会(全連小)をはじめ、慎重な検討を求める意見も続出している。理由の一つに就学始期を5カ月遅らせることで、むしろグロバールスタンダートに逆行するのではないかというものがある。

 首相も含め、みんな何かを忘れていないか。実は本社も忘れていた。「平成の学制大改革」(2013年2月の施政方針演説)を掲げてスタートした第2次政権の下、教育再生実行会議が14年7月の第5次提言で 「5歳児の義務教育化」を提言していたことを。

 第5次提言の「大方針」を受けて具体化を検討した中央教育審議会は結局、義務教育学校の創設など小中一貫教育の制度化でお茶を濁す。というより実行会議の提言で実現可能性のあるものは当時、これしかなかった。安倍首相も、これをもって「学制改革」だと胸を張っていた。

 第5次提言には、幼児教育の「段階的無償化」も盛り込まれていた。これもしばらく誰もが忘れていたが、17年9月に安倍首相が総選挙の大義名分として唐突に持ち出してから一気に実現した。

 無償化の建前は「全ての子供に質の高い幼児教育を保障するため」(第5次提言)だったはずだ。しかし量的な待機児童対策に追われ、教育・保育の質は二の次になっている。昨今の新型コロナ対策でも保育所を開けるかどうかで、政策の迷走ぶりは否めない。

 それでも幼児教育の質を重視しているというのなら、9月入学とセットで義務教育の前倒しを検討するという発想が出てこなければおかしい。なぜ出てこないのか。無償化で質保証は既に実現できたと思い込んでいるか、はなから無理だと諦めているからだろう。もしくは、本当に忘れているのかもしれない。

 既に無償化されているのだから、授業料に関して義務教育化への障害はない。しかし施設・設備や教員・保育士の配置に関する追加的な投資はもとより、実質的には幼稚園・保育所・認定こども園に3元化された幼児教育の本格的な「幼保一元化」の課題が再び突き付けられることになる。

 おそらく9月入学論も、どこかで引っ込めることになるのだろう。文部科学省は15日の衆院文教科学委員会で、小学校から高校までの子どもを持つ家庭の追加負担総額が2.5兆円に上るとの試算を明らかにした。国と地方にも相当の財政支出が求められるだろうし、中小企業も含めた新卒人材の確保に与える影響も大きい。知事会や経団連が前向きだからといって、簡単に社会的合意が得られるとは思えない。「社会改革」(小池百合子・東京都知事)には痛みも伴うはずだが、負担の押し付け合いで迷走するだけではないか。

 マッチポンプのようで恐縮だが、9月入学を検討するというなら義務教育年齢も本気で検討してみろと言いたい。そんな度胸がコロナで弱った政権にあるとも思えないが、もし打ち出せば起死回生の支持率回復策になるのではないか――と余計な提案をしておく。どうせ、できっこない。

 

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