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2020年9月

2020年9月12日 (土)

ICT環境整備 改めて自治体の責任を問う

 文部科学省が「GIGAスクール構想」の調達状況(8月末時点、速報値) を発表した。納品済みの「2%」を見出しに取った報道ぶりも目立ったが、やはりここは年度内に99.6%が納品予定という驚異的な数字に注目すべきだろう。

 肯定的に評価したいわけではない。長らく地方自治体が放置してきた責任を、やっと果たすのかという嘆息だ。

 GIGA構想では、19年度と20年度の補正予算で国公私立を合わせて計4610億円もの補助金が投入された。もちろん公立学校の場合、自治体側には「補助裏」を確保する必要が生じる。新型コロナウイルス感染症という未曾有の危機があったとはいえ、なぜ今になって各自治体の予算化が実現したのか。

 公立学校のICT(情報通信技術)環境整備をめぐっては、教育用コンピューター1台当たり3.6人を実現するため14~17年度に単年度1678億円(総額6712億円)もの地方交付税が措置されてきた。18~22年度は新学習指導要領の全面実施に合わせて、単年度127億円増の1805億円が措置される整備計画が進行中だ。しかし19年3月1日現在では1台当たり4.9台と、前年同期比0.5台減に改善したにすぎない。この調査時点日は小学校での全面実施直前というだけでなく、くしくも安倍晋三首相が要請した全国一斉臨時休校開始(3月2日から)の前日でもある。

  GIGA構想の補助金を受けるには、交付税で3クラスに1台分を配備することが前提となる。逆に言えばGIGA構想の後押しがなければ、いつまでたっても配備が遅れた可能性がある。

 ICT環境整備が地方交付税で措置されたのは、もちろん国の財政難や地方への財源移譲という背景もあるが、学校教育に必要な経費は一般財源化しても自治体が確保してくれるだろうという旧文部省以来の信頼感もあった。事実、その他の教材で自治体の予算不足から授業に支障をきたすほどの整備不足が生じたという話は聞かない。しかし、ことICTに関してはサボタージュが横行している。

 確かに一部教員が、ICT活用に消極的だという「事実」はあろう。ただSociety5.0を持ち出すまでもなく、新指導要領が求める情報活用能力の育成には授業でICT機器を「普段使い」することが不可欠だ。少なくとも使いたい時に1人1台環境を用意することは、自治体の義務のはずである。

 「どうせ導入しても、学校の隅でほこりをかぶるだけだろう」――いまだにそんな消極論が地方議会で語られていること自体、おかしなことだ。事実、電子黒板は今や普通に使われているではないか。問題は、使い勝手のよい機器やソフトの開発と、ICT機器を有効に活用する授業研究の時間や研修機会の確保である。学校現場のせいにするのは、自治体の責任放棄でしかない。

 令和のスタンダートと呼ぶかどうかは別としても、ICT機器のフル活用が今後の社会に不可欠であることは言うまでもない。もちろん教育ビッグデータを持ち出すまでもなく、授業の高度化に貢献する。むしろ現場が消極的だろうと何だろうと、予算を付けて活用を強いるぐらいの危機感を自治体側は持つべきだった。それを首長や議会の良識に任せていたために、全体的な遅れと自治体間格差が生じてしまった。犠牲になるのは、将来の社会を担う子どもたちだ。そんな実態が休校措置期間中に露呈してしまったとも言える。

 GIGA構想の前倒しが打ち出されてから、早くも更新時期の予算措置を求める自治体側の声が出ている。その前に、これまでの責任放棄を痛切に反省してもらいたい。いつまでも国依存の体質では、地方分権だの地方創生だのと言ってもむなしい。個々の首長が代替わりしたとはいえ、かつて地方3団体が義務教育費国庫負担制度の廃止を主張していたことも忘れてはなるまい。

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