少人数学級 実態に合わせ柔軟な「充実」を
政府の予算折衝が、年末に向けて佳境に入る。文教関係の焦点は、言うまでもなく少人数学級の導入だ。萩生田光一文部科学相は、30人学級を目指す意向を表明している。
もっとも、これを「30人学級の是非」という形で受け止めない方がいいかもしれない。最近の報道で、財務省は「一律」の見直しに慎重と伝えられている。おそらく算定基準をめぐって、激しい駆け引きが行われていることだろう。
確かに、標準法改正で30人学級を位置付けるまでの必要はないかもしれない。理想的には今般の新型コロナウイルス感染症のような非常事態には30人学級を運用できる定数を算定しておいて、実際の運用は総額裁量制の中で弾力的に扱うという方が現実的だ。
経済協力開発機構(OECD)が、クラスサイズを下げるより教員の質に投資することを勧めているのは事実だ。しかしそれも、日本をはじめとした東アジア諸国の好事例を踏まえてのことである。逆に言えば日本は大量退職・大量採用時代にあって若手教員の増加と採用倍率の低下にさらされており、教員の質の担保が今後の重要な課題になっている。
だからといって、教職員定員の改善をしなくていいことにはならない。「学校の働き方改革」が根本的な多忙化の解消につながらないことは、コロナ禍を考えれば明らかだ。そもそも1クラスに1人の教員で足りるという発想自体が、「令和の日本型教育」にそぐわない。
今回の概算要求は「事項要求」であり、詳細を決めるには内容的にも手続き的にも不十分だ。そのため暫定的にでも定数改善計画を策定する方向性だけでも打ち出せれば、御の字と言えよう。22年度にも想定される教員勤務実態調査を踏まえて、さらに見直すことも織り込む必要がある。
本来なら全クラスに複数担任制が導入できればいいが、まずは一定の若手教員を中堅やベテランとのチーム・ティーチング(TT)とする一部導入策が現実的ではないか。逆に指導力のある教員は、40人を受け持ってもいい。対面とオンラインのハイブリッドを掲げるなら、平素から複数教室をオンラインでつないで各教室に1人を張り付ける展開もあり得る。
既に多くの若手教員は教員養成課程で、新教育課程に向けた積極的な姿勢を身に付けていよう。後は、それを大事に育てる環境をつくることだ。間違っても一人でクラスの全責任を負わせ、早々に潰すことがこれ以上あってはならない。それが将来の日本の教育の質を左右する、と言っても過言ではない。
それだけに、来月の動向を注視する必要がある。30人がいいか悪いかといった単純な議論に陥らず、本質的な国民的議論を喚起する契機としたい。
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