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2021年3月

2021年3月21日 (日)

養成・採用・研修諮問 すぐやれる改革が二つある

 萩生田光一文部科学相が、12日に初会合を開いた第11期中央教育審議会に「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」を諮問した。

 第9期の「働き方改革」、第10期の「初中教育包括」、そして第11期の「養成・採用・研修」と、泥縄式に諮問・答申されてきた感が否めない。困難は次々と先送りされ、教育現場への負担はますます肥大化するという矛盾をますます深めている印象さえある。とりわけ、何かと教育改革が迫られると「教員養成段階からしっかりと資質能力を身に付けさせなければならない」と言って教職課程を過密化させてきたのが実態だ。安全教育しかり、ICT(情報通信技術)教育しかりである。

 今回の諮問の大きな契機の一つに教員採用試験の倍率低下があるが、採用後はもとより養成段階も大変な教員養成学部・学科を優秀な受験生が選ぼうとするだろうか。教職の魅力をアピールするといっても今の教職が胸を張って魅力ある職場だとは、とても言えない。

 諮問は、「基本的なところまで遡(さかのぼ)って検討を行」うことを求めている。しかし、本当にそうするなら相当な困難を覚悟しなければならない。泥縄・先送りばかりの中教審=文部科学省に、それを期待するのは現段階で期待が薄い。

 そうした中で、すぐできて効果も大きい改革が二つある。一つは、教員免許更新制の即時廃止だ。

 諮問では萩生田文科相の意向を受けて「抜本的な見直し」を先行して結論を出すよう求めているが、手ぬるい。現場教員にとっては、明日廃止されても誰も困らないし支障もない。確かに国立教員養成学部などにとって免許更新講習という数少ない外部資金獲得の手段が失われることは経営的な打撃になるが、これも担当教員レベルには歓迎されよう。更新制導入を主導した安倍晋三前首相の影響力にも陰りがみられる中、今をおいて他はない。

 もう一つは、奨学金免除の復活だ。かつては教育職か研究職に10年就けば、日本育英会の奨学金は返還免除になった。日本学生支援機構への移行に伴って1998年に廃止となったが、研究職志望も含め学費負担は当時より深刻化している。おまけに当時のように、単位さえ積み上げて教育実習さえこなせば免許が取れる時代ではない。アルバイトもままならなず、採用後もブラック職場が待っている中で教職を志望せよと言っても無理な話だろう。せめて必死で教職を目指してもらえるようなインセンティブが不可欠だ。

 控えめに返還免除と言ったが、本来なら給付型奨学金を主張したいところだ。かつての師範学校は給費制だったため、士官学校と同様に優秀な貧乏学生が集まった。現在の日本も、戦前と同様の経済格差が広がっているとみた方がいいのかもしれない。

 諮問をめぐっては、外部人材の導入など批判的に検討しなければならない点が多々ある。特別部会が発足したら、順次論じよう。しかし養成・採用・研修の一体改革が、一筋縄で行かないことも確かだ。そうした中で、二つの改革は単独でも大きな効果を発揮しよう。特別部会委員に任じられた人には、ぜひ一考してもらいたい。

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2021年3月11日 (木)

震災10年の教訓 非常時対応も定数算定に

 東日本大震災から10年を、新型コロナウイルス感染症の終息さえ見えない中で迎えた。この10年間は、極めて象徴的な時期だったように思える。

 10年前のあの日、過去に阪神・淡路大震災を経験していたとはいえ、1000年に一度の出来事だという衝撃があった。しかしこの間、熊本地震、九州北部豪雨、大阪北部地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震など、局地的とはいえ日本列島どこにいても自然災害から逃れられないことが浮き彫りとなった。

 極めつけは、昨年初旬からのコロナ禍だ。日本どころか世界が災禍を突き付けられた。学校も例外ではない。

 「当たり前のように存在していた学校に通えない状況が続いた中で、子供たちや各家庭の日常において学校がどれだけ大きな存在であったのかということが、改めて浮き彫りになった」――。今年1月の中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」の、コロナ禍を踏まえた一節である。この10年間、 東日本の被災地をはじめ各地で痛感されたことでもあろう。

 答申は、さらに続ける。「学校は、学習機会と学力を保障するという役割のみならず、全人的な発達・成長を保障する役割や、人と安全・安心につながることができる居場所・セーフティネットとして身体的、精神的な健康を保障するという福祉的な役割をも担っていることが再認識された」。これも、10年前から分かっていたことだ。

 しかるに、学校をめぐる状況はどうなったか。文部科学省の2016年度教員勤務実態調査では、小学校で3割、中学校で6割の教員が過労死ラインを超えて働く「ブラック職場」化していることが裏付けられた。これは、必ずしも震災対応のせいではない。むしろ被災地以外では、震災を想定した避難訓練さえ薄れがちになっている。

 むしろ全国どこでも、災禍を想定した「余白」を織り込んでおくべきだろう。カリキュラムもそうだが、教職員定数はむしろ現状で足りなくなっていると認識すべきだ。

 21年度予算案で、やっと小学校の35人学級化が盛り込まれた。成果であることに間違いはないが、10年前ならいざ知らず、今となって実現しても遅すぎる。しかも中学校は先送りとなり、高校は展望すら描けていない。

 あす開かれる第11期初の中教審総会では、「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」が諮問されるという。その意義は否定しないが、これ以上の労働強化となっては困る。何より第10期中教審は「学校の働き方改革」答申(19年1月)の延長戦で初等中等教育の在り方を検討してきたはずなのに、コロナ禍と、棚ぼたのような形で実現した1人1台や35人学級がなかったら「日本型学校教育」を顧みることさえなかったろう。

 教員の資質能力向上を言うなら、自主研修を含めた研修機会の保障が不可欠だ。あらかじめ職務専念義務免除の時間を織り込むことで、非常時への備えにもなろう。さらなる大幅な定数改善が必要であることは、言うまでもない。人材確保策に関しては、諮問が出たら改めて論じよう。

 10年前の被災地では、自らも被災しながら公務員の一人として避難所となった学校で地域住民の対応に追われながら、子どもの安全確認と学校再開に奔走した教職員の姿を忘れてはならない。そもそもコロナ禍で、勤務時間だけでは測れない苦労を教職員は強いられている。それに見合った条件整備をすることは、教職員の心身の健康はもとより、学校教育の質に直結する。そうした意義を、この10年の教訓として改めて確認したい。


〈関連記事〉
・生徒の健康、福祉…震災10年で思う「学校」の価値、次世代をどう育てるか(Yahoo!ニュースオトナンサー
・3.11の東日本大震災10年とコロナ禍、「学校」の役割とは(ベネッセ教育情報サイト

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2021年3月 7日 (日)

【池上鐘音】某省庁の無節操体質

▼教育専門出版社が6日にオンラインで開催したトークイベントを、にやにやしながら視聴した。若手教育学者が集まって別の出版社から著した本が経済産業省の「未来の教室」事業を題材として批判的に検証したところ、当の担当課長が反応。それを個人的なやり取りにとどめず、立場を超えた「対話」の手始めにと企画したという▼意外に思ったのは、担当課長が大正自由教育やデューイを持ち出したことだった。ほう、案外教育のことを勉強しているのか。さすがは一流官庁のキャリアだな…と関心していたら、看過できない指摘が続いた。新学習指導要領と「未来の教室」を大正自由教育から数えて「4度目の正直」だと位置付けたのはともかく、3度目に当たる「ゆとり教育」を「『昭和の慣性』で頓挫」したと説明したことだ▼「ゆとり教育」批判は某学習塾の「円周率が3になる」の誤報キャンペーンが火付け役となったが、当時の通産省が援護射撃を加えていたことは一般に知られていない。活字になったものは先輩記者・教育ジャーナリスト矢内忠氏の力作「平成の学校教育30年史(3)『ゆとり教育』見直し③学力低下論には経産省の影も」(『内外教育』2018年4月10日付)ぐらいか▼00年から外郭団体を使って、経済界に1998~99年改訂指導要領批判をアピール。その後も独立行政法人経済産業研究所に 『分数ができない大学生』(東洋経済新報社、99年)の主要編著者をフェローに招くなどして相も変わらず「ゆとり教育」批判を展開していた▼そんな過去さえ顧みることなく「新しい」施策をさも独自に編み出したようにアピールして展開するのは、経産省の真骨頂だ。その主張が全然新しくないことは、学者の検証を待つまでもなく冷静な教育関係者ならすぐ直感が働くだろう▼そうした手合いをまともな「対話」相手にお説を拝聴していても正直、建設的だとは思えない。そう痛感したイベントだった。要するに学校現場が使いやすい教材を開発してくれれば、それだけでいい。後は、威を借りてきた政権が完全に倒壊するのを待つばかりである。

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