養成・採用・研修諮問 すぐやれる改革が二つある
萩生田光一文部科学相が、12日に初会合を開いた第11期中央教育審議会に「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」を諮問した。
第9期の「働き方改革」、第10期の「初中教育包括」、そして第11期の「養成・採用・研修」と、泥縄式に諮問・答申されてきた感が否めない。困難は次々と先送りされ、教育現場への負担はますます肥大化するという矛盾をますます深めている印象さえある。とりわけ、何かと教育改革が迫られると「教員養成段階からしっかりと資質能力を身に付けさせなければならない」と言って教職課程を過密化させてきたのが実態だ。安全教育しかり、ICT(情報通信技術)教育しかりである。
今回の諮問の大きな契機の一つに教員採用試験の倍率低下があるが、採用後はもとより養成段階も大変な教員養成学部・学科を優秀な受験生が選ぼうとするだろうか。教職の魅力をアピールするといっても今の教職が胸を張って魅力ある職場だとは、とても言えない。
諮問は、「基本的なところまで遡(さかのぼ)って検討を行」うことを求めている。しかし、本当にそうするなら相当な困難を覚悟しなければならない。泥縄・先送りばかりの中教審=文部科学省に、それを期待するのは現段階で期待が薄い。
そうした中で、すぐできて効果も大きい改革が二つある。一つは、教員免許更新制の即時廃止だ。
諮問では萩生田文科相の意向を受けて「抜本的な見直し」を先行して結論を出すよう求めているが、手ぬるい。現場教員にとっては、明日廃止されても誰も困らないし支障もない。確かに国立教員養成学部などにとって免許更新講習という数少ない外部資金獲得の手段が失われることは経営的な打撃になるが、これも担当教員レベルには歓迎されよう。更新制導入を主導した安倍晋三前首相の影響力にも陰りがみられる中、今をおいて他はない。
もう一つは、奨学金免除の復活だ。かつては教育職か研究職に10年就けば、日本育英会の奨学金は返還免除になった。日本学生支援機構への移行に伴って1998年に廃止となったが、研究職志望も含め学費負担は当時より深刻化している。おまけに当時のように、単位さえ積み上げて教育実習さえこなせば免許が取れる時代ではない。アルバイトもままならなず、採用後もブラック職場が待っている中で教職を志望せよと言っても無理な話だろう。せめて必死で教職を目指してもらえるようなインセンティブが不可欠だ。
控えめに返還免除と言ったが、本来なら給付型奨学金を主張したいところだ。かつての師範学校は給費制だったため、士官学校と同様に優秀な貧乏学生が集まった。現在の日本も、戦前と同様の経済格差が広がっているとみた方がいいのかもしれない。
諮問をめぐっては、外部人材の導入など批判的に検討しなければならない点が多々ある。特別部会が発足したら、順次論じよう。しかし養成・採用・研修の一体改革が、一筋縄で行かないことも確かだ。そうした中で、二つの改革は単独でも大きな効果を発揮しよう。特別部会委員に任じられた人には、ぜひ一考してもらいたい。
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