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2021年4月10日 (土)

【池上鐘音(いけがみじゃんのね)】無邪気な旧文部

▼本社は先ごろウェブメディア「オトナンサー」に「教師の魅力訴える『#教師のバトン』 『100連勤』など過酷実態投稿で炎上した背景」を配信し、Yahoo!ニュースにも転載された。炎上の「背景」として、書かなかったこともある。その一つが、「#教師のバトン」公式note最後の写真に象徴されていよう▼そこでは文部科学省総合教育政策局 の「#教師のバトン」 プロジェクトメンバー10人が、指でプロジェクトロゴのハッシュタグを形作って写っている。それが炎上しようとは想像すらしなかったように、いかにも無邪気だ▼こうしたノリは同局の前々身に当たる生涯学習局(1988年に社会教育局を改編)以来のカルチャーに思えるが、元は旧文部官僚の2大系統である「初中畑(ばた)」(初等中等教育局系)に由来しよう。そこに高等畑(高等教育局系)の現局長が加わっているのも興味深い▼「教師は魅力ある職業である」というテーゼには、教育関係者なら誰でも同意するところだろう。本社ですらそうだ。教育行政を所管する文科省は、言うまでもない。問題は「もともと」魅力ある職業であることと、果たして「現在」が魅力ある職業になっているかは全然別物であるということだ▼配信記事にも書いたように「現在」の問題を先送りしにして「もともと」の魅力だけを発信しようとしたところに、炎上の最大の要因がある。それを無邪気に発信してしまうところは、まさに旧文部のカルチャーが成せる業だ▼青木栄一東北大学大学院准教授によると、省庁再編後の文科省では再編前の高等教育局が所掌していた分野にも旧科技庁系が進出しているという(『文部科学省の解剖』東信堂、『文部科学省』中公新書)。その玉突きで旧文部系にも、初中畑・高等畑の区分けが曖昧になった印象がある。単なる人事にとどまらない。行政手法も似通ってきた▼それも教育委員会や学校に対して行ってきた初中畑のコントロールが、あたかも高等教育機関や関係者にも通用すると信じて疑わないような雰囲気が感じられてならない。それが裏目に出た典型が、高大接続改革だったろう。もちろん「大学入試改革」にとどまらない▼文科省が教育現場の実態をまったく知らないはずはない。昔も今も教委出向は続いているし、省庁再編後は学校現場を経験したキャリアもいる。しかし配信記事のコメントにもある通り、深夜勤務が常態化している中央官僚には現場教員の過労死ラインなど切実に映らないのも事実だろう▼ただし小子が日参していた90年代の文部官僚には現場に対する畏怖にも似た敬意と、それに報いる十分な条件整備ができない後ろめたさがあった。それが今や官邸一強や他省庁の攻勢に抗し切れず、自身が理想とする文教行政を前提とすることさえできなくなっているように写る▼残ったのは教育の理想に対する信念と、カルチャーとしての無邪気さだけ。学校現場を顧みる余裕すら、なくなっている。 それが本当の「背景」だったのではないか。

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