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2022年7月

2022年7月27日 (水)

宗教団体支援者を文科相に就けない慣例を

 安倍晋三元首相の銃撃死事件を契機に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員との近しい関係が取り沙汰されている。一部報道では、統一協会の名称変更に下村博文・元文部科学相が関与した疑惑も持ち上がった。

 旧統一教会をめぐっては末松信介文科相が22日の会見で、パーティー券を購入してもらったことはあるものの関係団体を含め「特別なお付き合いはない」と答えている。

 何と言っても文部科学省は、教育行政のみならず宗務行政を所管している中央省庁である。自公政権の下では公明党から大臣を出さない慣例が定着しているが、これを宗教団体に支持されている者一般にまで拡張すべきだ。

 旧統一教会は論外としても、神道政治連盟(神政連)国会議員懇談会に名を連ねる議員は多い。先ごろ、同懇談会の会合に「同性愛は依存症」などとする冊子が配布されていたことも発覚した。学校現場でいわゆるLGBTQを含めた多様性・包摂性に配慮が求められている時に、百害あって一利ない。

 問題は自民党党文教族を中心に、そうした宗教団体の支持が拡大していることだ。

 かつて文教族といえば、与党自民党は私学団体、野党社会党・共産党は教職員組合を支持母体とするのが定番だった。与野党の枠を超えて私学助成増額と教職員定数改善には一致して努力する、というのが55年体制下での文教族の姿だった。

 しかし特に小選挙区制になって以降、支持基盤の弱い候補者・議員が宗教団体の力に頼る傾向が強まっているようだ。有力派閥の長が旧統一教会の票を案配していたとの報道もある。

 宗務行政に関しては説明するまでもないが、教育行政に関しても影響力が行使されては問題だ。改正教育基本法で家庭教育条項が盛り込まれたのも、単なる振興策の奨励だけでなく家庭の在り方に関する「伝統的価値」と称した押し付けを許しかねない恐れがある。事は社会保障も含めた問題だろうが、文教行政に特化する本社は言及しない。

 もちろん神政連の支持を受けながらSOGI(性的指向・性自認)の問題に取り組んだ馳浩・元文科相(現石川県知事)のような例もあるから、結局は議員個人の資質の問題と言えるかもしれない。しかし木っ端議員ほど声だけは大きいのが常だから、文科官僚の国会対策も含めて支障をきたしかねない。

 そもそも文科相は、文部科学行政に詳しくなくても大臣適齢期の初任ポストとして扱われてきたのが実態だ。大半は官僚の振り付けに従ってくれるからいいのだが、端々でイデオロギーをちらつかせられては文教行政をゆがめかねない。いや、その影響がじわじわと広がっているとみるべきだろう。これを機会に、少なくとも在任中は関係を断ち切るなど副大臣・政務官も含めて慣例を見直すべきではないか。

 

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2022年7月 9日 (土)

【池上鐘音】蝶々の因縁

▼NHK『映像の世紀 バタフライエフェクト』を毎週、興味深く視聴している。1995年に放送を開始した新シリーズで、一人ひとりのささやかな営みが連鎖して世界を動かしていく様子を世界中のアーカイブ(記録)映像で描くのだという▼回によっては、これを本当にバタフライ効果と言っていいのかと首をかしげることもある。しかし世の中の動きがすべて連関していて、見聞きしたものが大なり小なり意識ないしは無意識として残っていると考えれば納得できる▼仏教的には、重々無尽の縁起とでも訳せようか。ここで言う縁起は通俗的な験担ぎ・験直しのことではなく、原因(因)があって結果(縁)があるという論理学的な話である。あるいは複雑系と言い換えてもいい▼安倍晋三元首相が参院選の応援演説中、銃撃されて死去した。犯行現場の近鉄大和西大寺駅前は奈良競輪場の無料バスが発着し、犯人が住んだ最寄り駅には定宿がある個人的にもなじみの地だ。小学校も近いことに、戦慄がいや増す▼どんな政治家に対してであろうと、テロは決して許されない。何かと安倍政権を批判し続けてきた本社だが、報道の末端中の末端に携わる者として満腔の怒りを持って糾弾する▼現段階の供述によれば、政治的信条に対する恨みではないそうだ。安倍氏が「特定団体」とつながりがあると思い込んだというが、いかなる団体かは明らかにされていない▼今回の元首相襲撃を五・一五事件になぞらえる向きもあるが、犯人は元自衛官といっても任期3年だけであり青年将校とは比ぶべくもない。むしろ浅沼稲次郎社会党委員長を刺殺した山口二矢(おとや)に似ていようか▼真相は徐々に明らかになっていくのだろうが、現段階では格差・分断、フェイクニュースの香りがぷんぷんする。因果応報とは口が裂けても言わないが、新自由主義的なアベノミクスを進め国会審議を軽視してきた安倍政権とも無縁ではない▼安倍首相が目指してきたはずの「美しい国」が、バタフライ効果で今のような社会に帰結したとみるのは死者への冒涜(ぼうとく)だろうか。しかし国の借金が1000兆円を超えてもなお、防衛費拡充のための国債発行を安倍氏は主張していた。アベノミクスへの評価や憲法改正の是非を含め、有権者には冷静な投票行動が求められよう。追悼の意と「弔い合戦」は、まったく別の話である。

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【本社より】コラムタイトルの不足を一部修正しました。

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2022年7月 5日 (火)

研修履歴システムのパブコメ 問われる自民の責任

 参院選たけなわの6月30日、文部科学省が「研修履歴を活用した対話に基づく 受講奨励に関するガイドライン(仮称)」案などのパブリックコメント(意見公募手続)を始めた(7月29日まで)。同省ホームページ(HP)では新着情報にも載せておらず、探さないと分からない。専門紙報道に接しない人は、見過ごしているのではないか。

 ガイドライン案は27日に開催された中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」や同部会基本問題小委員会、初等中等教育分科会教員養成部会の合同会議に提示され、部会長一任を取り付けた。相変わらず用意周到だ、というより選挙のどさくさを狙った感が拭えない。

 もちろん内容は昨年11月の特別部会「審議まとめ」のみならず今年5月の改正教育公務員特例法(教特法)附帯決議の線に沿っているから、一定の歯止めは掛かっている。選挙中のパブコメも、政治日程や政治的思惑に関係なく淡々と行政手続きをこなしているという説明はつこう。

 しかし「研修履歴に課題のある教師」への職務命令研修のみならず、審議まとめにはなかった「指導に課題のある教師」に対する研修も組み込んでいることが注目される。

 これについては、思い浮かぶことがある。14日に自民党文部科学委員会が末松信介文部科学相に手渡した「教師の指導力の確保・向上のための提言」だ。失効・休眠状態になっている教員免許の保持者に厳格な選考と必要な研修を課すとともに、指導力不足教員には分限免職や再研修などの厳格な対応を促すなど教員の質の確保を強く求める内容となっている。

 そもそも「発展的解消」が発端となった教員免許更新制は「教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すもの」であり、「不適格教員の排除」を目的としたものではない。要するに制度設計上、更新制と質の担保はそもそも関係なかったのだ。それを「発展的解消」策である研修履歴システムで、更新制の「代わり」となる質担保策を求めるのは筋違いだ。

 なぜ文科省事務局が、そんな筋違いな案を特別部会の免許更新制小委の段階から示し続けてきたのか。審議会だけ見ていても分からないが、最初から背後に文教族の意向があったとすれば合点がいく。

 55年体制下の与党文教族といえば私学を支持母体とするのが定番で、私学助成とともに公立教職員定数改善には野党とともに一致協力したものだった。しかし特に小選挙区制になって以降、宗教団体をバックとする右翼的で文教政策に関する基礎知識もない「族議員」が跋扈(ばっこ)している。教職員に対する敬意も何もあったものではない。2018年に前川喜平・元文部科学事務次官を招いた名古屋市立中学校の授業内容を市教委に報告するよう文科省を通して要請させた一件は、そのことも象徴していよう。

 そういう手合いが牛耳る文教政策の将来は、いったいどうなるのか。いや、今までも散々振り回されてきたと言わざるを得ない。これから未来志向の教育を目指さなければいけない時にアナクロで勉強不足の議員が影響力を持つことは、一利もないとまでは言わないが百害はある。

 少なくとも現場教員には、よくよく人物を見て投票することをお勧めする。そうしないと、ますます自分たちの首を絞めることになってしまおう。もっとも参院選の結果いかんにかかわらずガイドラインは淡々と策定されるのだろうが、「パブコメの意見を反映して」改悪が行われる可能性にも注視しなければならない。

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