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2022年10月16日 (日)

「新」教育振興基本計画 そもそも策定に意味があるのか

 「シン・〇〇」は、庵野秀明氏がプロデュースする一連の映画だ。旧作の世界観に最大の敬意を表しつつ、現代的な解釈も加える秀作がそろっている。では「シン・振興計画」と言われて、いったい何を期待すればいいのだろう。

 13日に開催された中央教育審議会の教育振興基本計画部会で、部会長の渡邉光一郎・中教審会長は次期計画(2023年度から5年間)を「新教育振興基本計画」と命名したい考えを明らかにした。ウェルビーイング(個人的にも社会的にも人々が心身ともに幸福な状態)など第3期(18~22年度)にはない要素が含まれた計画を、学制150年という節目に打ち出す必要性があるのだという。

 2月の諮問を受けて同部会ではこれまで、ウェルビーイングはもとより「教育DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタルによる変革)」「誰一人取り残さない教育」「グローバル」などテーマごとにグループ分けしながら基本的な方向性を議論してきた。その後も教育・スポーツ界や自治体から選ばれた委員が、高邁(まい)な理念を述べ合っている。テーマには「教育振興基本計画の教育現場での実効性について」(6月2日、第3回)というものもあったが、そもそも3期15年間にわたる計画自体に実効性などあったのか。

 振興計画を策定することは、06年の改正教育基本法に盛り込まれたものだ。政府が策定して国会に報告、公表するとあり、地方にも計画を策定する努力義務を課している。戦後に憲法と一体で制定された旧教基法の改正に及び腰だった文部省・文部科学省が姿勢を転じたのは、科学技術基本計画(現在は科学技術・イノベーション基本計画)にならって教育予算を拡大したい狙いがあった。

 しかし、政府全体のお墨付きを得たい目論見は外れた。しかも第1期は各局課の課題を総花的に並べただけ、第2期は「自立・協働・創造」という理念は掲げたものの局課横断的に課題をまとめただけだった。第3期は政策目標と施策を総合的・体系的に示す「ロジックモデル」を導入したものの、それが何の役に立ったかは必ずしも実感できないだろう。

 計画の策定主体は「政府」となっているものの、当初から財務省をはじめ他省庁にはまったく影響を与えられていない。実質的には「文部科学省教育施策基本計画」を閣議で承認してもらっているにすぎない。いや、GIGAスクール構想や小学校35人学級化のように政治情勢によって計画に関係なく政策や予算が左右されるという意味では「文科省運動方針」程度ではないか。

 教育界を挙げて理念の共有を確認するさまは、さながら5年に1度の「お祭り」のようだ。しかし祭りの後は、結束感以外に何も残さない。むしろ財源の裏付けがない理念の肥大化が、教育現場の疲弊にさおさす結果しかもたらさなかったのではないか。

 むしろ関係省庁を巻き込んでという意味では、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の提起を受けた中教審初等中等教育分科会「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」の方が5年後・10年後の学校教育の在り方を展望することに期待が持てる。

 改正教育法には、家庭教育条項も盛り込まれた。これが旧統一教会や、それより大きな宗教関連団体の意向を反映させたものであったとしたら何のための改正だったのか。むなしさは募るばかりだ。

 

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